微細藻類の産業利用と社会実装の可能性【先読み!研究開発トレンド】

2026/10/01

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このたびChematelsの編集チームに加わった技術系専門書出版社「シーエムシー出版」の編集担当者より、書籍出版のタイミングに合わせて、最先端の研究開発の中身を「先読み」できる記事をお届けします。今回は、CO2削減と持続可能な物質生産を両立する次世代バイオ素材として大きな注目を集める「微細藻類」についてご紹介したいと思います。

微細藻類の産業利用とは?

微細藻類の産業利用とは、微細藻類が持つ高い光合成能や多様な代謝機能を活用し、大気中のCO2や有機物から有用な物質を創成するバイオものづくりの一環です。古くから健康食品(クロレラ等)や水産養殖の初期餌料として利用されてきましたが、現在では地球規模の地球温暖化対策やサーキュラーエコノミー(循環型経済)の実現を果たす切り札として、化学・エネルギー・医療・環境など幅広い分野へとその応用範囲を広げています。

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図1:微細藻類の世界


「独立栄養」の理想と「従属栄養」の現実

微細藻類利用の最大の魅力は、太陽光とCO2のみで物質生産を行う「独立栄養培養」にあります。大気中のCO2を直接固定しながら資源を生み出すというコンセプトは非常にスマートであり、長年数多くの国家プロジェクトや研究開発の対象となってきました。しかし、産業利用の観点では、独立栄養培養は収量が低く(数g/L程度)、夜間に光合成ができない等の制約から、国内で採算が合うのは単価の高い高付加価値品(サプリメントや一部の化粧品原料など)に限られているのが実情です。

一方で、現在市場で流通している藻類成分の多くは、糖などを炭素源とする「従属栄養培養」によって生産されています。従属栄養培養は圧倒的に高い生産効率とバイオマス収量(100~200g/L)を誇りますが、無菌条件の維持や安価な炭素源の大量確保といったコスト面の課題が存在します。真の社会実装に向けては、これら両培養方式の特性を踏まえた現実的なプロセスの最適化と市場設計が求められています。

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図2:「独立栄養」の理想と「従属栄養」の現実


技術革新が切り拓く高効率生産とプロセス最適化

これまで「実証実験止まり」や「経済的見合いの不一致」によって挫折してきた微細藻類ビジネスですが、近年は生物学と工学(エンジニアリング)の融合、さらにはバイオDX(Bio-Digital Transformation)の導入によって劇的な進化を遂げています。

研究現場では、休眠期細胞の活用や有用株の単離・選抜による「微細藻類ライブラリ」の構築が進み、目的に応じた最適な株の創出・選定が可能になりました。また、生産プロセスにおいては、ガラス管型フォトバイオリアクター(PBR)や専用遠心分離機などの高効率な培養・回収設備が開発されています。さらに、ナノポアシーケンシングを用いたメタゲノム解析により、大規模培養における最大の敵であるコンタミネーション(雑菌汚染)のメカニズムを解明し、培養破綻を未然に防ぐ早期警戒システムの構築といった画期的なソリューションも登場しています。

食品・医薬品からバイオ燃料・環境浄化まで広がる社会実装

現在の微細藻類研究は、単なるバイオマスの大量生産にとどまらず、高付加価値な機能性成分の創出や環境課題の解決に向けた多角的なアプローチへと展開しています。

食品・サプリメント・医薬品:ユーグレナやスピルリナを用いた機能性食品の開発、DPP-4阻害ペプチドによる食後血糖値上昇の抑制、ヘマトコッカス等を原料とした血圧降下候補物質の探索、ナンノクロロプシスによる高純度EPAやオメガ3脂肪酸の分子育種・生産が進んでいます。

化粧品・化成品:マイコスポリン様アミノ酸(MAA)を活用した天然サンスクリーン剤の開発や、ミドリムシ由来多糖(パラミロン)を加工したバイオプラスチック・粘接着剤・ナノファイバーといった革新的な新素材が誕生しています。

バイオ燃料・環境・飼料:ゲノム編集技術やオミクス解析を駆使した持続可能な航空燃料(SAF)の開発、微細藻類ガルディエリアによる廃水からの貴金属回収、下水・排水浄化、水産種苗生産における餌料の高効率培養など、社会インフラを支える技術としての実装が進められています。


微細藻類の基礎と産業応用を解説した技術書

本書は、微細藻類の基礎科学から大量培養技術、最先端の産業応用、そしてビジネスモデルの構築に至るまでを包括的に網羅した専門書です。

ユーグレナ、クロレラ、スピルリナ、ナンノクロロプシスといった主要藻類の特徴やライブラリ構築、フォトバイオリアクター設計やメタゲノム解析による管理技術などの「モノづくり基盤」を丁寧に解説。さらに、高付加価値な医薬品・食品原料から、バイオプラスチック、SAF(バイオ燃料)、環境浄化、水産餌料までの豊富な応用事例とグローバルな市場動向を紹介しています。理想論だけにとどまらず、「いかにしてコストとスケールの壁を越え、ビジネスとして成り立たせるか」という実践的な視点と専門家の知見が凝縮されており、バイオものづくりやカーボンリサイクル関連事業に携わる研究者・技術者・事業開発担当者にとって必読の一冊です。

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『微細藻類の産業利用』は、2026年9月1日発行。詳しくは、こちらのご案内をチェックしてみてください。誌面サンプルもご登録の上、ご覧いただけます。

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井口 誠(いぐち まこと)

シーエムシー出版大阪支店。編集者。エレクトロニクス、新材料、医薬品、バイオテクノロジー、環境技術、エネルギーなど、産業界で注目されている旬なテーマを書籍化しています。

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