粘土鉱物からMOFまで! ナノシートが機能性材料の可能性を拡げる【先読み!研究開発トレンド】
2025/11/20Chematels編集チームの一員である「シーエムシー出版」の編集担当者より、書籍出版のタイミングに合わせて、最先端の研究開発の中身を「先読み」できる記事をお届けします。今回は、「ナノシート」から。ナノシートは組成や構造によってさまざまな機能を示すことが明らかになっていますが、この記事ではナノシートの作製を中心に紹介します。従来の製作法のほか、ボトムアップ型の手法も報告されており、作製対象の材料も用途も広がっています。
結晶の層間にゲストを挿入 ― インターカレーション
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図1:層状結晶の例。粘土鉱物のモンモリロナイト
(筆者撮影)
ナノシートの原材料の一つとなるのが層状結晶です。剥離してナノシートにする前の層状の結晶を指します。
層状結晶は、構成される原子が二次元的に配列した「シート」がファンデルワールス力のような比較的弱い結合によって重なった構造をしています。合成によって得られるものもあれば、粘土鉱物のように天然由来のものもあります(図1・2)。
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図2:層状結晶の例
層状結晶の材料としての機能を研究する上で、層の間に「ゲスト」を挿入するインターカレーションは重要な過程といえます(図3)。層間に挿入するゲストとしては、分子、イオン、高分子、金属クラスター、生体分子などが挙げられます。ゲストのもつ機能を層状結晶に取り入れたり、ナノシートの表面を修飾したりすることも可能です。
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図3:層状結晶へのインターカレーション
また、層状結晶の層間にかさ高いゲストを挿入することで層を剥離することができます。
これらのインターカレーションや表面修飾を活用することによって、大きな比表面積、伸縮可能なナノ空間、異方的な形状を生かした機能の発現に向けた研究が行われてきました。
剥離プロセスを経ないボトムアップ型も ― ナノシート作製
ナノシートは主に層状結晶を一つの層にまで剥離することで作製されます。層状結晶の剥離には先ほどのインターカレーションによる化学的な手法のほか、粘着テープや超音波を利用した物理的な手法もあります。このようなトップダウン型の手法によるナノシートの作製法はこれまで数多く報告されてきました。
一方で、剥離プロセスを経ずにナノシートを直接的に得る、いわゆるボトムアップ型の手法も報告されています(図4)。ワンステップでナノシートを合成でき、本来は層状構造を持たない無機化合物についてもナノシートを設計できることから、ナノシートの研究領域の拡大につながっています。また、ボトムアップ型の手法により、無機化合物にとどまらず有機金属構造体(MOF:Metal-Organic Framework)のナノシートや、有機分子ユニットを組み上げる超分子ナノシートを作製した例も報告されています。
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図4:トップダウン手法とボトムアップ手法
活用分野は化学合成から医療まで多岐
合成したナノシートを構成単位として、薄膜や多孔体、液晶など、さまざまな材料の作製が可能になりました。それに伴い、触媒、センシング、ドラッグデリバリー、エネルギー関連など多岐にわたる分野で、ナノシート由来の材料の機能に注目し、その活用法を拡大させるための研究が行われています(図5)。
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図5:ナノシートが活用される領域
新刊『層状化合物・ナノシートの合成と機能と応用』について紹介します。
ナノシートの合成では、トップダウン型、ボトムアップ型それぞれの手法について具体的な化合物を例に、この分野の第一線で活躍する研究者が解説しています。また、電場、磁場、光のような外場や分子間力の制御によってナノシートの分布や配向の制御、ナノシートの精密集積についても紹介しています。さらに、各分野でのナノシートの応用に向けた研究に関して幅広く掲載しています。
ナノシート・層状結晶の研究に携わる学生・研究者・企業の方だけでなく、これまで馴染みのなかったナノシートを製品開発に利用したい企業や、ナノシートを利用した異分野とのコラボレーションを企画する方にとっても研究動向を俯瞰できる内容となっております。

図6:『層状化合物・ナノシートの合成と機能と応用』2025年10月15日発行
『層状化合物・ナノシートの合成と機能と応用』は、2025年10月15日発行です。詳しくは、こちらの案内をチェックしてみてください。誌面サンプルもご登録の上、ご覧いただけます。
山中壱朗(やまなか かずあき)
シーエムシー出版大阪支店所属。月刊誌『機能材料』と新材料・新素材に関わる書籍の企画、編集を担当。『機能材料』では化学、エレクトロニクス、環境など様々な領域の関連材料・技術を紹介してきた。

