繊細なバラも、頑丈な駅舎も! 3Dプリンティングが産業に幅広く浸透中【先読み!研究開発トレンド】

2026/01/06

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Chematels編集チームの一員「シーエムシー出版」の編集担当より、書籍出版のタイミングに合わせて、最先端の研究開発の中身を「先読み」できる記事をお届けします。今回のテーマは、「3Dプリンティング」です。従来の加工法では困難とされるような複雑な形状の造形も可能で、樹脂や金属、セラミックスなど各種材料の事例が発表されています。試作から量産まで活用でき、幅広い分野で導入が進んでいる技術です。

材料と加工技術の進歩で複雑・高精度な形状を実現

3Dプリンターの技術は、材料の進歩と加工精度・速度などの向上により、これまで困難とされていた造形を可能にしています。

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図1:金属プリンタによる造形。アルミニウムのバラの造形における(上段)形状取得、(中段)3D造形、(下段)形状評価
⁠(画像提供:静岡県工業技術研究所 浜松工業技術支援センター)

図1は、金属3Dプリンターによって、バラの花と花瓶をアルミニウム材料で再現した過程を示しています。バラの生花をX線CT(Computed Tomography)にかけ、何層にも折り重なった花びらを内部までデジタルデータ化し、造形時の補強のためのサポート材も含めた造形データを作成。この造形データにもとづいて、複雑な形状の再現に成功しました。

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図2:シートやフィルムの造形。(左)ポリアミド(PA:Polyamide)系でのシート造形例。シート厚は100μm。サイズはA4と200mm×200mm(右)ポリエーテルエーテルケトン(PEEK:PolyEtherEtherKetone)系材料でのフィルム造形例。フィルム厚は20μm
⁠(画像提供:大塚化学)

また、図2に示すように100μm厚のシート、20μm厚のフィルムの造形例も報告されています。これらには、チタン酸カリウム繊維と高機能樹脂の複合材料から作製されたフィラメントが活用されており、造形時のそりを抑制できます。装置に注目すると、平面度を維持できる機構を有しており、フィラメントのノズルからの吐出量も安定しているため、加工精度の高さが求められる造形も可能になります。

応用は建設分野にも、工期短縮・省人化に期待

ここまで3Dプリンターの精度の高さを実感できる事例を見てきました。一方、3Dプリンターによる大型造形に注目すると、近年は建設分野で進展があります。

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図3:駅舎の建設。鉄筋コンクリート造の10平方メートル弱の平屋建て。高さ約2.6m、幅、6.3m、奥行2.1m。壁面には、3Dプリンターの積層痕を生かし、有田市の名産「みかん」「たちうお」をイメージしたデザインを施した
⁠(画像提供:セレンディクス)

セレンディクス(本社・兵庫県西宮市)は2025年3月、JR西日本グループと共同で、和歌山県にある初島駅に、建設用3Dプリンターを活用して造った駅舎を設置しました(図3)。出力後のパーツの組み上げをわずか2時間30分で完了させ、基礎の施工も含めて6時間で現場での作業を終えました。

3Dプリンターの導入により、複雑なデザインの施工も柔軟に対応でき、工期の短縮や、省人化、コストの削減といった効果が期待されます。これらの利点は、建設業界が抱える人手不足、職人の高齢化、資材価格の高騰のような課題を乗り越える上で有効といえます。

国内の3Dプリンティング技術の最先端を紹介した書籍を発売

新刊『未来を創る 3Dプリンティング―日本における材料・技術研究の最前線―』は、日本国内における先端的な技術開発および材料研究の最新動向とともに、多様な応用事例を紹介しています。「技術・装置開発」「材料開発」「活用に向けた取り組み」の3章で構成されています。

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図4:『未来を創る 3Dプリンティング―日本における材料・技術研究の最前線―』2025年11月27日発行

第1章「技術・装置開発」では、マルチマテリアル技術の進展や、ペレット式3Dプリンター、金属・セラミックスプリンターでの造形法、技術進歩を支える周辺技術を紹介しています。

第2章「材料開発」では、繊維配合樹脂複合材料、光造形用樹脂、金属粉末といった、3Dプリンティング向けの多様な材料開発の状況とその特徴を記述しています。

第3章「活用に向けた取り組み」では、高機能アクチュエータや微細加工、複雑な構造体といった造形の例に加え、ゲルプリンティングの食品・医療・教育分野での可能性、さらに、土木・建設分野への展開など、産業応用の最前線を報告しています。

『未来を創る 3Dプリンティング―日本における材料・技術研究の最前線―』は、2025年11月27日発行です。詳しくは、こちらの案内をチェックしてみてください。誌面サンプルもご登録の上、ご覧いただけます。

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山中壱朗(やまなか かずあき)

シーエムシー出版大阪支店所属。月刊誌『機能材料』と新材料・新素材に関わる書籍の企画、編集を担当。『機能材料』では化学、エレクトロニクス、環境など様々な領域の関連材料・技術を紹介してきた。


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