ガス吸着から触媒反応まで! MOFが脱炭素への道を拓く【先読み!研究開発トレンド】

2025/06/10
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このたびChematelsの編集チームに加わった技術系専門書出版社「シーエムシー出版」の編集担当者より、書籍出版のタイミングに合わせて、最先端の研究開発の中身を「先読み」できる記事をお届けします。第2回は、金属有機構造体(MOF:Metal-Organic Framework)がテーマの書籍から。MOFは細孔にさまざまな物質を吸着できるナノサイズの多孔質材料として注目されており、脱炭素社会の実現をはじめ多様な目的での利用が目指されています。この記事ではMOFの特徴や、出版した書籍の見どころを紹介します。

多孔質材料として注目のMOF、用途開拓の研究が盛んに

従来の多孔質材料である活性炭やゼオライトなどは、ナノサイズレベルの細孔空間を持ち、そこに選択的に分子を吸着する性質を持っています。この性質を応用することで、脱臭剤、調湿剤、乾燥剤といった応用技術が展開されてきました。

金属有機構造体(MOF:Metal-Organic Framework)は、金属イオンと有機配位子の組み合わせによって多様な細孔構造を持つ材料で(図1)、その規則的な細孔にさまざまな物質を吸着できるだけでなく、設計の自由度が極めて高いという特長があります。近年、このMOFの特長を活用しようと、ガスの吸着・分離・貯蔵に留まらず、触媒、化学センサー、磁性材料、ドラッグデリバリーシステム(DDS:Drug Delivery System)といった幅広い領域での用途展開に向け、盛んに研究が進められています。

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図1:MOFの細孔空間のイメージ図。金属イオンを青色の球体、有機配位子をベンゼン環、細孔空間を赤色の点線で表示し模式的に作成

吸着や触媒の能力で脱炭素社会への貢献が期待される

MOFの吸着能力を利用することで、脱炭素社会の実現に大きく近づくと期待されています。例えば、MOFは特定の条件下で二酸化炭素(CO2)を吸収・分離することができます。CO2を効率的に除去し、再利用・貯蔵することで、結果としてCO2排出量の削減と地球温暖化の抑制につながります。

また、MOFを触媒として使用することで、エネルギー効率の良い化学反応を促進することができます。こちらもまた、CO2の削減と再生可能エネルギーの利用を促進する可能性があります。さらに、MOFを用いた光触媒の開発も進められており、これは太陽エネルギーを活用して水素燃料を生成するシステムを開発する上で、重要なテクノロジーといえるでしょう。

まさに、MOFは脱炭素社会の実現に向けた革新的なソリューションを提供する材料として、今後の利用が大いに期待されているのです(図2)。

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図2:MOF活用によるCO2削減。脱炭素社会実現への貢献が期待される

研究テーマはガス吸着・分離からバイオ医薬品まで多様

近年、MOFの研究をめぐって、下記のようなテーマが注目されています。

1. ガスの吸着と分離
⁠CO2の吸着・分離や水素貯蔵、天然ガスの分離など、環境関連の課題に対する応用研究が進んでいます。

2. 触媒
⁠MOFを触媒として活用する研究報告が増加しており、有機合成やエネルギー変換などの分野で注目されています。

3. 光触媒
⁠光を活用した触媒反応においてMOFの導入が進んでいます。

4. バイオ医薬品
⁠DDSキャリアとして医薬品の貯蔵・放出に関する研究が行われており、バイオ医薬品への応用も期待されます。

最新のMOF研究についてまとめた解説書

新刊『金属有機構造体(MOF)研究の動向と用途展開』では、MOFの合成・設計に関する解説のほか、MOFを用いたガス吸着技術や触媒開発など、幅広い分野での実用化に向けた用途展開について、第一線で活躍中の研究者・技術者が解説しています。

本書のとりわけの読みどころをご紹介します。

今後、MOFの用途展開を進めていく上で、合成プロセスのコントロールや適切な材料設計が課題となるなか、本書では機械学習を用いた材料探索や、噴霧合成法を用いたMOFの連続合成法などについて解説しています。

また、CO2をはじめとしたガスの吸着・分離・貯蔵への応用に向けて重要になってくる、MOFの薄膜化や吸着機構の解明の成果についても詳述しています。

さらに、MOFの幅広い用途展開に向け、触媒、エネルギーデバイス、センサーデバイス、薬物輸送キャリア、ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物(PFAS:Per- and polyfluoroalkyl substances)吸着材といった、さまざまな機能性材料として利用するための研究事例も数多く紹介しています。

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図3:『金属有機構造体(MOF)研究の動向と用途展開』2025年4月25日発行

『金属有機構造体(MOF)研究の動向と用途展開』は、2025年4月25日発行。詳しくは、こちらのご案内をチェックしてみてください。

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※2025年10月9日編集部追記
本記事のテーマである「金属有機構造体(MOF)の開発」は、2025年ノーベル化学賞のテーマともなりました。同賞は、リチャード・ロブソン先生、オマー・ヤギー先生とともに、京都大学の北川進先生が受賞されています。
ノーベル賞受賞の源流となる、北川進先生による監修書籍「配位空間の化学」(リンク先URL:https://www.cmcbooks.co.jp/products/detail.php?product_id=8193)もあわせてご参考ください。

池田 識人(いけだ しきと)

シーエムシー出版編集部(東京)。同社出版の雑誌『月刊ファインケミカル』編集を経て、現在は主にレポートの企画・編集業務に従事。ファインケミカル、新材料・新素材、エレクトロニクス、エネルギーなどの分野において、産業界で注目の旬なテーマを書籍化している。

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