健康寿命の鍵! 食品機能性成分「吸収・代謝・作用」の分析技術が向上【先読み!研究開発トレンド】
2025/11/11Chematels編集チームの「シーエムシー出版」の編集担当者より、新刊書籍の出版タイミングに合わせて最先端の研究開発の中身を「先読み」できる記事をお届けします。今回は、食品機能性成分の体内での吸収・代謝・作用機序がテーマの書籍から。分析技術が向上するなど著しい研究開発の進展が見られます。食品の機能性をめぐる分野は発展を遂げています。
毎日の食事内容が健康寿命を左右する
食品機能性成分とは、普段の食事に含まれている、私たちの体の調子を整える特別な力を持った成分のことです。厚生労働省によると、日本の人びとの平均寿命と、介護などを必要とせず自立して生活できる期間を指す健康寿命の差は、2022年に男性で8.49年、女性で11.63年。高齢者が単に長生きするだけでなく、生活の質(QOL:Quality Of Life)の高さを維持することが課題となっています。そのため、日々の食事からどのような機能性をもつ食品を取り入れるかが極めて重要といえます。

図1:健康寿命に資する食品
超高齢化社会で需要が高まる特定保健用食品・機能性表示食品
超高齢社会の到来により、国民医療費や介護給付費が増大しつづけており、社会保障制度の持続可能性が大きな課題となっています。そうした中、長寿かつQOLの高い生活を維持・向上するため、生活習慣病や認知症の予防に役立つ新食品の開発が望まれています。
特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品には、高血圧、高血糖、脂質異常症といった生活習慣病の一次予防に役立つものが多くあります。これらを日常の食生活に賢く取り入れることで、心疾患、脳卒中、糖尿病などの重篤な疾病の発症リスクを低減させることが期待されています。また、記憶力、注意力、判断力といった認知機能の維持・サポートを目的とする機能性表示食品も開発・販売されています。
こうした多様な「加齢による悩み」に対応できる製品が登場し、機能性表示食品を中心にその数は増加中です(図2)。高齢者が自らの健康課題に合わせて、きめ細かくセルフケアを行うことが可能になっています。

図2:特定保健用食品と機能性表示食品の件数推移。数値は各年度末時点における許可・届出件数(累積数。失効・撤回を除く)
(出所:消費者庁2024年9月「機能性表示食品の今後について」をもとにChematels編集部が作成)
食品成分の分析技術の精度が向上
近年の精密分析機器による解析精度の向上により、これまで困難であった分析が可能になり、新知見が見出されてきています。
たとえば、従来は、特定の化合物を測定対象とする「ターゲット分析」が主流でしたが、分析対象をあらかじめ定義できない場合も多いため、近年、高分解能質量分析(HRMS:High Resolution Mass Spectrometer)と機械学習を組み合わせた「ノンターゲット分析」が導入されつつあります。ノンターゲット分析は、食品サンプル中の膨大な化学物質情報を網羅的に検出し、特定の物質を選択してその後化学構造を明らかにし、予期せぬ化学物質や未知の代謝物を検出する技術です。これにより、製造工程で意図せず生成された副産物や、これまで知られていなかった天然毒素など、従来は見過ごされていた潜在的なリスクを発見できるようになります。
確かな機能性と安全性を兼ね備えたトクホや機能性表示食品の開発に向け、こうした精密分析技術が、食品成分の吸収、代謝、作用機序の十分な理解を促し、科学的エビデンスの確立につながると期待されています。
食品機能性成分の最新研究動向をまとめた解説書を刊行
新刊『食品機能性成分の吸収・代謝・作用機序Ⅱ』では、食品機能性成分の探索・評価技術のほか、機能性成分を分類し、それぞれの成分が体内でどのように働き、代謝されるかを詳細に解説しています。「II」とあるように、7年ぶりとなる続編であり、前編から発展を遂げた内容となっています。
本書のとりわけの読みどころを紹介します。
第1編では、機能性成分を特定し、その効果や安全性を評価するための基盤技術と概念について紹介します。機能性表示食品制度の進展に伴い重要性が高まる、機能性関与成分の分析法開発の進展についても詳述します。
第2編では、機能性成分を分類し、それぞれの成分が体内でどのように働き、代謝されるかを詳細に解説します。成分は、化学構造や生物学的分類に基づき、「アミノ酸」「ペプチド・タンパク質」「糖質・食物繊維」「脂質」「ビタミン・ビタミン様物質」「植物二次代謝産物」「発酵菌」の7項目に分類しています。
当書籍は、食品成分が体内でどのように変換され、標的組織に運ばれ、最終的に機能性を発揮するのか、つまり機能性食品開発の根幹となる代謝・吸収・作用のしかたの知見を、広範な成分群にわたって提供する必携の一冊になっております。

図3:『食品機能性成分の吸収・代謝・作用機序Ⅱ』2025年10月16日発行
『食品機能性成分の吸収・代謝・作用機序Ⅱ』は、2025年10月16日発行。詳しくは、こちらのご案内をチェックしてみてください。
池田 識人(いけだ しきと)
シーエムシー出版編集部(東京)。同社出版の雑誌『月刊ファインケミカル』編集を経て、現在は主にレポートの企画・編集業務に従事。ファインケミカル、新材料・新素材、エレクトロニクス、エネルギーなどの分野において、産業界で注目の旬なテーマを書籍化している。

