「欲しい機能」から材料の構造を即予測!マテリアルズ・インフォマティクスは実践してこそ【先読み!研究開発トレンド】
2026/03/12Chematels編集チームの「シーエムシー出版」編集担当者より、新刊書籍の出版タイミングに合わせて最先端の研究開発の中身を「先読み」できる記事をお届けします。今回のテーマは「マテリアルズ・インフォマティクス(MI)」。実験科学、理論科学、材料科学に続く「第4の科学」として、材料開発のパラダイムシフトを牽引しています。理論の解説にとどまらず、実際にMIを活用して開発現場で成果を出すための実践的なノウハウも取り上げた本書の概要を、この記事で紹介します。
「順問題」から「逆問題」へ解析アプローチが転換
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図1:材料の構造などから機能を導き出そうとする灰色矢印方向の「順問題」的な解析から、欲しい機能などから材料を開発する色付矢印方向の「逆問題」的な解析へ。技術進歩が材料開発の現場を変えようとしている
これまでの材料開発は、材料の構造や組成を決めてから、その物性や機能を調べるという「順問題」的な解析アプローチが主流でした。これに対しマテリアルズ・インフォマティクス(MI:Materials Informatics)は、「研究者が望む機能・性能」を先に定義し、それを実現するための「構造・組成」を予測する「逆問題」的な解析アプローチを可能にします(図2)。これにより、近年は開発の方向性が「探索」から「予測」へと大きくシフトしています。
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図2:材料開発における順問題と逆問題
探索の劇的な領域拡大と高速化が可能に
MIにより、従来の手法では困難だった広大な探索領域からの材料発見が可能になります。こうしたMIの活用は、高分子材料、半導体、触媒、炭素材料をはじめ、構造が複雑な複合材料に至るまで、多岐の分野にわたっています(図3)。
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図3:各研究分野におけるMIの代表的な活用事例
シミュレーション技術にも革新もたらす
MIは材料探索だけでなく、計算科学シミュレーションにも革新をもたらしています。
その第一として、高精度と大規模化の両立が挙げられます。量子力学の原理に則って物質の性質や挙動を調べる第一原理計算の結果を学習させた「機械学習ポテンシャル」を用いることで、第一原理計算に匹敵する高い精度を保ちながら、従来よりも大規模かつ高速な計算が可能になりました。
第二に、研究スタイルの変化も見逃せません。シミュレーションは実験の後追いではなく、実験と並走、あるいは先行して課題解決を行うツールへと進歩しています。
どう開発するか…プロセス・インフォマティクスも普及
材料そのものの組成だけでなく、材料開発プロセスの最適化にもMIが応用されています。機械学習などを駆使して材料開発などの方法を最適化する技術を「プロセス・インフォマティクス」(PI:Process Informatics)といいます。ここでは、その事例の一端を紹介します。
- 実験条件の最適化:連続的なプロセスにおける個々の条件だけでなく、プロセス全体を最適化する試みが行われています。
- デジタルツインの実現:実験データと計算を融合させることで、開発・設計段階でのデジタルツイン、つまり仮想空間での再現手法の構築に貢献しています。
- 実験の自動化:ロボットアームを活用した実験自動化が進められています。また、能動学習により実験条件の効率的な探索が可能となり、少ない実験回数で最適解にたどり着けるようになってきています。
MIに関する最新の研究動向をまとめた解説書を刊行
新刊『マテリアルズ・インフォマティクスが拓く材料開発の新潮流』は、MIを活用して、従来の実験や理論では困難だった「欲しい機能から材料構造を予測する」逆問題の解析アプローチの詳細や、開発スピードを飛躍的に高めるための最新技術とノウハウを網羅した専門書です。
具体的には、次のような内容を体系的にまとめています。
MIの基礎と最新潮流を俯瞰します。機械学習分子動力学法やプロセス・インフォマティクスなど、計算科学や実験プロセスを革新する技術を解説しています。
実践的なノウハウと事例を提示します。データ解析の手法にとどまらず、半導体、高分子、触媒、複合材料といった材料の実際の設計でどのように成果を出すか、実験自動化やデジタル・トランスフォーメーション(DX:Digital transformation)とどう組み合わせるかという現場の知見を披露しています。
社会課題への応用にも言及しています。カーボンニュートラルや、日本政府が提唱している未来社会の姿を指すSociety 5.0の実現に向けた、日本の材料開発戦略としてのMIの活用法を提案しています。
当書籍は、これからMIを始めたい研究者から、既に活用しているが新たな方向性を模索している技術者まで、幅広く役立つ内容となっています。

図4:『マテリアルズ・インフォマティクスが拓く材料開発の新潮流』2025年12月25日発行
『マテリアルズ・インフォマティクスが拓く材料開発の新潮流』は、2025年12月25日発行。詳しくは、こちらのご案内をチェックしてみてください。
池田 識人(いけだ しきと)
シーエムシー出版編集部(東京)。同社出版の雑誌『月刊ファインケミカル』編集を経て、現在は主にレポートの企画・編集業務に従事。ファインケミカル、新材料・新素材、エレクトロニクス、エネルギーなどの分野において、産業界で注目の旬なテーマを書籍化している。

