ノーベル賞でも注目! AIのバイオ技術応用で創薬に革新【先読み!研究開発トレンド】

2025/06/26
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「先読み! 研究開発トレンド」では、Chematelsの編集チームに加わった技術系専門書出版社「シーエムシー出版」の編集担当者が、書籍出版のタイミングに合わせて、最先端の研究開発の中身を「先読み」できる記事をお届けしています。今回は、「人工知能(AI)×バイオテクノロジー」という融合分野についてです。AI技術が日々進歩を遂げるなか、バイオテクノロジーの分野においてAIを活用する取り組みが広がっています。今回はそのなかでも、医薬品開発におけるAIの活用を紹介したいと思います。創薬に重要ながら課題の多かったタンパク質の立体構造解析に革新が起きているのです。

医薬品開発「成功確率0.0044%」をAI活用で高める

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図1:生体内のタンパク質「ミオグロビン」の立体構造モデルのイメージ。人工知能(AI)の活用でタンパク質の立体構造解析に革新が起きている

創薬の分野では、一つの薬を開発するのに9~17年の開発期間と、数百億~数千億円規模の開発費用がかかるといわれています。実は、成功確率は年々低下しており、その要因として開発対象の複雑な疾患へのシフトや創薬シーズの枯渇などがいわれます。

研究対象となったほとんどの候補物質は途中の段階で開発が断念されているのが現状です。新薬候補化合物ともよばれるリード化合物の中から最終的に医薬品として製造・販売するための申請承認を取得できる確率は0.0044%しかないとされています(図2)。

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図2:医薬品開発の工程・所要期間と成功確率
⁠(出所:厚生労働省「医薬品産業ビジョン2021資料編」より作成)

この状況を打破すべく、多くの製薬企業や研究機関がいま、人工知能(AI:Artificial Intelligence)を活用した創薬手法を積極的に取り入れ始めているのです。

医薬品開発のカギを握るのはタンパク質の立体構造

医薬品の多くは、体内のタンパク質に作用して細胞や組織の働きを正常に戻そうとします。そこで新薬開発の上で重要となるのが、標的となるタンパク質の三次元構造です。特有の立体構造を持つタンパク質(図1)に対し、医薬品がその構造に合わせて作用することで機能を発揮するからです。

しかし、人間の全タンパク質のうち3割程度しか立体構造が分かっていません。新薬開発の標的であるタンパク質の立体構造が分からないことが、医薬品候補の探索が難しい要因の一つとなっています。

「アルファフォールド」によるタンパク質立体構造予測が注目の的に

この課題解決の糸口となったのが、グーグル・ディープマインド社が開発したAIモデル「アルファフォールド」(AlphaFold)です。アルファフォールドは、タンパク質のアミノ酸配列を「入力」とし、その三次元構造を「出力」とする、タンパク質の立体構造を予測するシステムです。これにより、従来は構造解析が困難だった膜タンパク質を含む多くの未解明なタンパク質の構造情報が、迅速かつ低コストで得られるようになりました。その結果、創薬の初期段階における標的タンパク質の解析が加速し、新規薬剤の設計が効率的に進められています。

2024年のノーベル化学賞は、同社による「アルファフォールド2」の研究開発に対して授与されたことからも、その技術の高さがうかがえます。

「AI×バイオテクノロジー」がもたらす未来を探る技術書を刊行

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図3:『AIとバイオの融合最前線』2025年5月28日発行

このたび刊行した書籍『AIとバイオの融合最前線』の読みどころを紹介します。

本記事でも紹介したAI活用による創薬について、低分子医薬からゲノム創薬、抗体医薬、核酸医薬、量子創薬までを網羅しています。既存医薬品から新たな薬効を見出し、ほかの疾患の治療に役立てることを指すドラッグリポジショニングの視点からも解説します。

また、AIの医療への活用の話題では、機械学習を用いた疾患診断、画像AIによる診断支援、がん診断などの最新動向を紹介しています。

そして、AIと微生物工学の融合の分野では、スマートセルの創製、AIを活用したバイオプロセスや培地設計などを解説。AIと酵素・タンパク質工学の融合では、AIを活用した酵素改変や、アルファフォールドによるタンパク質立体構造予測などの最新情報を詳解。AIとフードテックとの融合では、フード3DプリンターとAI味覚センサーについて紹介しています。

バイオテクノロジーへのAIの応用をテーマにした書籍は、2018年に『AI導入によるバイオテクノロジーの発展』として弊社より刊行され、多くの方々にご購読いただける人気書籍となりました。それから約7年。最新動向をまとめた本書『AIとバイオの融合最前線』は、製薬業界、医療業界、食品業界、化学業界などさまざまなバイオテクノロジー業界の方々へ向けて、お役に立てる情報満載の一冊となっています。

『AIとバイオの融合最前線』は、2025年5月28日発行です。詳しくは、こちらのご案内をチェックしてみてください。誌面サンプルもご登録の上、ご覧いただくことができます。

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井口 誠(いぐち まこと)

シーエムシー出版大阪支店。編集者。エレクトロニクス、新材料、医薬品、バイオテクノロジー、環境技術、エネルギーなど、産業界で注目されている旬なテーマを書籍化しています。

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