2030年度の混合率目標10%、現状の自給率0%、バイオエタノールの期待と課題【先読み!研究開発トレンド】
2026/01/29このたびChematelsの編集チームに加わった技術系専門書出版社「シーエムシー出版」の編集担当者より、書籍出版のタイミングに合わせて、最先端の研究開発の中身を「先読み」できる記事をお届けします。今回は、ガソリンへのバイオエタノール混合利用について、国内外の動向や開発動向を紹介します。主要国で混合利用が進む中、日本では2030年度までに最大10%混合の目標が掲げられており、自給率向上が大きな課題となっています。
ガソリンへのバイオエタノール混合、世界各国で進む

図1:バイオ燃料の一つ、バイオエタノール
世界の潮流として、化石燃料から持続可能燃料へのシフトが求められています。
例えば、化石燃料であるガソリンに持続可能燃料のバイオエタノールを混合することで、ガソリンの消費量を減らすことができます。こうした取り組みは、世界各国で活発に進められています。
自動車メーカーも、ガソリンとバイオエタノールとの比率が0~100%まで対応できるフレックス燃料車(FFV:Flexible Fuel Vehicle)の開発に力を入れています。ガソリンにバイオエタノールを10%混合した「E10」を導入している国は多く存在し、ブラジルや米国、カナダ、豪州などでは、ガソリン車はすべてE10対応車となっています。また、インドは2025年までに「E20」、ブラジルは2030年までに「E30」の実現を目指しています。
日本の目標は「2030年度までに最大10%混合」
日本も、近年のエネルギー価格の高騰やエネルギー需給の逼迫を受け、運輸部門における石油依存からの脱却を目指しています。その一環として、バイオエタノールなどのバイオ燃料をエネルギー源の多角化に向けた手立ての一つとして位置づけています。
2025年2月に閣議決定した「第7次エネルギー基本計画」では、2030年度までにガソリンにバイオエタノールを最大10%混合する目標が掲げられました。これは、バイオエタノール導入拡大のために進められていた官民協議の結果、2024年11月に策定された「ガソリンへのバイオエタノール導入拡大に向けた方針」に基づくものであり、その方針には次の目標が盛り込まれています。
- 2030年度までに、一部地域における直接混合も含めたバイオエタノールの導入拡大を通じて、「最大濃度10%の低炭素ガソリン」供給開始を目指す
- 2030年代のできるだけ早期に、乗用車の新車販売における「E20」対応車の比率を100%とすることを目指す
いよいよ日本においても、ガソリンへのバイオエタノールの混合利用が本格的に動き出そうとしています。
条約でバイオエタノールはカーボンニュートラルと位置づけ
エネルギーとして利用可能な生物資源であるバイオマスを原料として生産される燃料を、バイオ燃料といいます。バイオマスは植物、家畜糞尿、下水汚泥、廃食用油など多岐にわたります。
バイオエタノールは、サトウキビやトウモロコシ、木材などのバイオマスを発酵させて製造するエタノールのことであり、バイオ燃料の一種です。石油などから作られる合成エタノールと、物理化学的性状においてまったく違いはありません。

図2:バイオエタノールの原料と自動車燃料としての利用
(出所:環境省2007年3月16日公表「農林水産省ヒアリング追加説明資料」の図版を改編)
さて、バイオエタノールも燃やすとガソリンと同様に二酸化炭素(CO2)が発生しますが、植物が吸収したCO2の再放出と考えられるため、温室効果ガスとは見なされません。国連気候変動枠組み条約では、バイオエタノールは「カーボンニュートラル」として位置づけられており、その燃焼時に排出されるCO2は排出量として計上されません。
日本が目指す「2050年カーボンニュートラル」を実現するためにも、バイオエタノールは寄与度の高い燃料として大いに期待されています。
日本の大きな課題は自給率向上、「世代」ごとに研究開発が進む
日本のバイオエタノール自給率は極めて低く、米国とブラジルからの輸入に依存しているのが現状です。自給率を高めようと、さまざまな研究開発が進められています。

図3:主要各国のバイオエタノール自給率
(出所:資源エネルギー庁 2025年7月25日配信「バイオエタノールの導入拡大をめざして、課題解決のアクションプラン策定」の図版を改編)
現在、「第一世代」とよばれる、サトウキビやトウモロコシなどの糖質やでんぷん質原料からのバイオエタノール生産が主流ですが、これらの原料は食糧と競合するという課題があります。そのため、「第二世代」と位置づけられる食糧非競合型のセルロース系原料や、「第三世代」とされる藻類を使った次世代バイオエタノールの開発が進められています。ただし、現在主流の生産手法に比べてコストが高いという課題があり、その解決に向けた研究が進められています。

図4:各世代のバイオエタノールの利点と欠点
(出所:シーエムシー出版 2025年出版『バイオ液体燃料の最新動向』のうち秋田紘長氏執筆ページを元にChematels編集部作成)
バイオ液体燃料について多面的に解説した技術書を刊行
このたび発行した新刊『バイオ液体燃料の最新動向』のとりわけの読みどころを紹介します。
本書は、バイオ燃料の中でも液体燃料に特化して、その最新の技術動向を解説した書籍となっています。
第1章「バイオ液体燃料の持続的な生産・利用システムの構築に向けて」では、バイオ液体燃料の全体像を示すとともに、日本における生産・利用システムのあり方について解説しています。
第2章「バイオ燃料」では、バイオ燃料の種類、開発・利用動向について詳述しています。
第3章「バイオエタノール」では、バイオエタノールの概要、事業性、製造技術、世界の現状、ガソリン混合時の問題点と対策、植物原料からの製造技術などについて解説しています。
第4章「バイオディーゼル」では、ディーゼル機関の燃料となるバイオディーゼル燃料について、製造技術や性状評価について解説しています。
第5章「航空燃料」では、特に昨今話題の持続可能な航空燃料(SAF:Sustainable Aviation Fuel)の動向と製造技術、バイオジェット燃料について詳述しています。
第6章「その他燃料」では、バイオメタノール、バイオギ酸、バイオブタノールをめぐる現状や動向について解説しています。

図5:『バイオ液体燃料の最新動向』2025年12月17日発行
『バイオ液体燃料の最新動向』は、2025年12月17日発行。詳しくは、こちらの案内をチェックしてみてください。誌面サンプルもご登録の上、ご覧いただけます。
井口 誠(いぐち まこと)
シーエムシー出版大阪支店。編集者。エレクトロニクス、新材料、医薬品、バイオテクノロジー、環境技術、エネルギーなど、産業界で注目されている旬なテーマを書籍化しています。

