実用化目前!全固体電池の鍵を握る「材料開発」と「界面制御」の最前線【先読み!研究開発トレンド】
2026/09/08Chematels編集チームの「シーエムシー出版」編集担当者より、新刊書籍の出版タイミングに合わせて最先端の研究開発の中身を「先読み」できる記事をお届けします。今回は、全固体電池の「材料開発」と「界面制御」の最前線をまとめた書籍からです。持続可能な社会の実現に向け、材料開発から量産プロセスへの移行期にある同分野の現在地に迫ります。
地球規模の課題解決に向けた「全固体電池」への期待
2015年9月の国連サミットで『持続可能な開発目標(SDGs)』が採択されて以降、地球規模の課題解決に向けて様々な取り組みが進んできました。この課題解決においては、自動車の電動化、再生可能エネルギーの普及、水素社会の実現などが不可欠と唱えられています。
その中でも重要な技術の一つと位置付けられているのが「電池」です。電池は18世紀末のガルバニ電池に始まり、現在では高いエネルギー密度を有するリチウムイオン電池が実用化され、モバイル端末から電気自動車(EV)に至るまで、性能を左右するキー技術として発展し続けています。
しかし、既存のリチウムイオン電池は可燃性の有機電解液を使用するため、安全確保のための保護部材が不可欠で、エネルギー密度のさらなる向上に限界が見え始めています。そこで、電解質を固体に置き換えることで液漏れや発火リスクを根本から低減し、より安全で高性能な「全固体電池」が強い注目を集めています。保護部材の簡略化によるパックの小型化や急速充電も期待できるため、EVの航続距離延長など、モビリティ革命の鍵として世界中で研究開発が加速しています。

図1 全固体電池の基本構造
基礎研究から量産化へ:材料技術とプロセス技術の現在地
全固体電池の基礎技術は、「固体電解質の開発の歴史」でした。かつてはイオン伝導率の低さが最大の壁でしたが、現在では多くの先人たちの努力によって、固体電解質の最大の課題であったイオン伝導率は有機電解質に匹敵するレベルにまで到達しました。
電池の開発は、「材料技術」と「プロセス技術」の両輪で成り立ちます。現状、固体電解質をはじめとする基礎的な材料技術に関しては大きく進展しました。一方で、それらの基礎的な材料を量産化する技術開発や、全固体電池を量産化するためのプロセス技術開発に関しては課題が多く、産学官内で様々なアプローチがなされています。

図2 全固体電池に用いられる主な固体電解質の比較
とりわけ大きな技術的障壁が「界面」の制御です。固体の電極と電解質を密着させ、充放電に伴う体積変化に耐えうる良好な界面を維持し続けることは至難の業です。こうした課題を乗り越えるため、硫化物系、酸化物系、ハロゲン化物系など、多様な材料アプローチが取られています。
基礎研究レベルから量産化へのスケールアップをいかに迅速に実現するかが、今後の産業競争力を決定づけるといえるでしょう。
全固体電池の材料開発と界面制御の最前線を解説した技術専門書を刊行
全固体電池の技術が実用化・量産化に向けた重要なターニングポイントを迎える中、最新の研究成果を体系的にまとめた新刊『全固体電池の材料開発と界面制御の最前線』が2026年8月に刊行されました。
とりわけ本書の読みどころは、硫化物系、酸化物系といった多様な固体電解質の設計技術から、量産化を見据えた電極複合体作製プロセス、さらには最先端の表面解析・シミュレーション技術に至るまで、実用化の最大の鍵を握る「材料開発」と「界面制御」を一挙に解説している点です。基礎的なメカニズムの理解から社会実装に向けた課題解決のヒントまでが得られる実践的な内容となっています。
本書が全固体電池に関係する方々、特に研究開発者の方々の一助になれば幸いです。

図3 『全固体電池の材料開発と界面制御の最前線』2026年8月3日発行
池田 識人(いけだ しきと)
シーエムシー出版編集部(東京)。同社出版の雑誌『月刊ファインケミカル』編集を経て、現在は主にレポートの企画・編集業務に従事。ファインケミカル、新材料・新素材、エレクトロニクス、エネルギーなどの分野において、産業界で注目の旬なテーマを書籍化している。
