全固体、ナトリウムイオン、レドックスフロー…次世代二次電池の競争が激化【有望市場サクッとダイジェスト】
2025/10/09「有望市場サクッとダイジェスト」では、注目分野の市場の状況や動向を、Chematelsの編集チームの一員「シーエムシー出版」の担当者が、新刊のタイミングに合わせてダイジェストでお届けしています。今回のテーマは「次世代大型二次電池」。長らく液系リチウムイオン電池の覇権が続いてきましたが、全固体リチウムイオン電池、ナトリウムイオン電池、さらにレドックスフロー電池などの次世代候補が台頭しはじめ、市場は熱を帯びています。この記事では開発競争が激化する背景や、各種の次世代二次電池の概要、新刊の読みどころなどをお伝えします。
「限界」迎えつつある液系リチウムイオン電池に代わる二次電池の開発が加速

図1:大型二次電池の主要な用途の一つである電力貯蔵システム
電気自動車(EV:Electric Vehicle)の普及や再生可能エネルギーの導入拡大に伴い、エネルギーを効率的に貯蔵・利用する技術の需要が過去になく高まっています。自動車の電動化では、EVの大きな課題である航続距離を伸ばすため、より高性能かつ安全なバッテリーの必要性が絶えることがありません。また、天候に左右されるため発電量が不安定な太陽光や風力といった再生可能エネルギーで安定した電力供給を実現するため、大規模な蓄電システムが不可欠となっています。
エネルギーの貯蔵を取り巻く状況が大きく変化しているなか、高い性能があるとして広く普及してきた液系のリチウムイオン電池は「限界」を迎えつつあるといわれています。長らく資源の希少性や安全性、コストといった問題を抱えてつづけたままです。時代の進歩に伴い、リチウムイオン電池を超える高容量や高速充電性の蓄電システムが求められてもいます。
こうした状況の中で、新たな二次電池の研究開発が進められています。
新たな担い手と注目の全固体電池、一方でリチウム非依存型電池の開発も

図2:全固体リチウムイオン電池のイメージ
液系リチウムイオン二次電池の諸課題を克服し、さらに高い性能を追求するため、世界中の研究機関や企業が新たな二次電池技術の開発にしのぎを削っています。その代表例の一つといえるのが全固体リチウムイオン電池です。液体の電解質を固体に置き換えることで、安全性とエネルギー密度の向上を実現することができます。
また、リチウムに代わる安価で豊富な資源、例えばナトリウムや硫黄を用いた二次電池の開発も進んでいます。これらは、資源リスクの回避と低コスト化に貢献すると期待されています。
これらの新たな二次電池をめぐって、どれが新たな覇権を握るかや、どのような市場構成比になるかは、単に蓄電池の性能向上の度合を決定づけるだけにとどまりません。その二次電池の特性を生かせる市場分野が伸びたり、安全対策など課題面で重要となる技術が変わったりすることから、未来のエネルギー社会のあり方を左右する鍵になるともいえます。
投資に積極的な中米欧、企業はサプライチェーン戦略が重要に
各国政府は、カーボンニュートラル社会の実現に向けて、EVや再生可能エネルギーの導入を後押しする政策を打ち出しており、これが二次電池市場の拡大を力強く牽引しています。特に、中国や米国、欧州の主要国などは、自国の産業競争力を高めるため、サプライチェーンの構築や研究開発への投資を積極的に行っています。他方、日本の政策の少なさやメッセージ発信の遅さを指摘する声もあります。
企業間では、単なる製品の性能競争にとどまらず、原材料の調達からリサイクルに至るまで、サプライチェーン全体を最適化する戦略が重要になってきています。また、天候により発電量が左右され電力供給が不安定な再生可能エネルギーの電力供給の安定化に向け、定置用蓄電池の需要も高まっています。
このように、次世代二次電池をめぐって、技術的な側面だけでなく、政策や市場などの観点でも大きな変化を迎えているといえます。
注目の各種二次電池を網羅して紹介、エネルギー社会の未来を見通す
未来のエネルギー社会を見通すためには、次世代二次電池に関する包括的な知識が不可欠です。シーエムシー出版が刊行した書籍『次世代大型二次電池の技術と市場』は、まさにこのニーズに応える一冊となっています。
本書は大きく二部構成となっています。前半の「技術編」では、各種の二次電池について原理、材料開発状況、そして応用展開の可能性を網羅的に解説しています。
液系リチウムイオン電池は、「限界」を迎えつつあるといわれながら、いまなお二次電池の市場で高いシェアを保っています。今後は、勢いを増す海外勢に対し、日本はどのように巻き返しを図るべきか、また、海外で頻発するリチウムイオン電池由来のEV発火事故と日本勢リチウムイオン電池が誇る高い安全性について、名古屋大学の佐藤登氏が解説しています。
全固体電池は、既存の液系リチウムイオン電池を超える性能や安全性を実現するものとして期待されています。本書では、特に硫化物系全固体電池において重要な硫化物系固体電解質の高イオン電導化といった点を詳しく解説しています。
ナトリウムイオン電池は、ナトリウム金属酸化物を正極、炭素材などを負極とし、両極をナトリウムイオンが往来する電池です。希少資源であるリチウムやコバルトを使わないため、環境負荷が低く、安定供給が可能な電池として期待されていますが、エネルギー密度が低いことが課題となっています。本書では、金属有機構造体(MOF:MOF Metal Organic Framework)による電極材料の開発による高性能化への取り組みなどについて詳述しています。
さらに、大規模定置用途で脚光を浴びている二次電池として、レドックスフロー電池があります。長寿命で安全性に優れるといった特徴を持っています。本書では再生可能エネルギーの系統用蓄電池としての導入事例を交え、詳しく解説しています。
ほかに、ナトリウム硫黄電池、マグネシウム二次電池、フッ化物イオン電池、全固体カリウムイオン電池でも、それぞれ章を立てています。
後半の「市場編」では、グローバルな競争環境、各国の政策動向、主要企業の取り組みまで、ビジネスパーソンが知るべき情報も詳細に解説しています。研究者や開発者だけでなく、この分野の最新動向を把握したいと考えるすべての人々にとって、本書は未来を読み解くための羅針盤となるでしょう。

図3:『次世代大型二次電池の技術と市場』2025年8月29日発行
『次世代大型二次電池の技術と市場』は、2025年8月29日発行です。詳しくは、こちらのご案内をチェックしてみてください。
片岡 大(かたおか まさる)
シーエムシー出版。編集者。エレクトロニクス、新材料、医薬品、環境技術、エネルギーなど、産業界で注目されている旬なテーマの書籍化やセミナーの企画を担当しています。サステナブル社会に向けた技術開発の取り組みについて書籍化を行っており、水素・水処理・生分解性プラスチックなどの書籍を多数担当し、大きな反響を得ています。

