EV・6G・環境規制が促す難燃材料の革新―高難燃と低誘電・リサイクルの両立へ【有望市場サクッとダイジェスト】
2026/08/27「有望市場サクッとダイジェスト」では、Chematelsの編集チーム「シーエムシー出版」の編集担当者が、新刊の出版に合わせて注目分野の市場動向をお届けしています。今回のテーマは「難燃剤・難燃材料」です。EVシフトによるバッテリーの熱暴走対策や、6G通信・生成AIの普及に伴う半導体パッケージの放熱・耐熱対策を背景に需要が世界的に拡大する一方、PFAS規制をはじめとする環境規制の強化や原料高騰への対応も急務となっています。この記事では、拡大する難燃材料需要の背景と技術動向、今後の課題をお伝えします。
安全規格の厳格化に加え、EV・6G通信が牽引する高難燃化の潮流

図1:難燃材料は高機能・高難燃グレードへシフト
国内の難燃材料産業は総生産量こそ成熟期にありますが、高機能分野では変化が顕著です。軽量なポリオレフィン樹脂は広く使われますが、燃えやすいため難燃剤が不可欠です。近年、白物家電の電気安全規格(IEC/TC61)厳格化の議論など、高難燃化へのニーズが増しています。
さらに市場を強く牽引するのがモビリティ分野とエレクトロニクス分野です。EVの普及に伴い、リチウムイオンバッテリーの熱暴走リスクから、周辺部材には高度な難燃性能(UL94規格のV-0等)が要求されています。また、6G通信や生成AIの進化に伴う高周波通信ではデバイスの発熱が増加し、半導体パッケージのCCL(銅張積層板)において放熱設計や耐熱性(高ガラス転移点Tgの付与)、そして難燃性の付与が不可欠となっています。
環境規制(ノンハロ・PFASフリー)への適応とリサイクル対応が鍵

図2:主要国における難燃材料市場の概要
(出所:シーエムシー出版
2026年出版『難燃剤/難燃材料の開発と市場・規制動向2026』「市場・規制動向編」第1章を元に作成)
環境適合性と安全性を兼ね備えたノンハロゲン化への移行がこれまで進んできました。現在最も対応が急務なのが「PFAS(有機フッ素化合物)規制」です。PC等でドリップ(溶融滴下)防止に有効だったフッ素系難燃助剤の規制の可能性に対し、代替技術の確立が急務です。POPs条約や欧州REACH規制の強化、物質群(クラス)単位での管理など国際規制を踏まえた材料設計が重要です。
加えて、資源循環(リサイクル)対応も不可欠です。熱がかかると物性や難燃性が損なわれやすい樹脂の弱点を克服し、熱履歴を経ても性能を維持できるノンハロゲン系難燃剤の活用など、環境適合性とリサイクル性を両立する取り組みが加速しています。
データサイエンスを活用した難燃処方の高速化
こうした高度で複雑な処方設計を迅速に行う切り札の一つが「データサイエンス」です。
近年、ポリプロピレン複合材料の難燃処方設計において、膨大な燃焼試験挙動をデータセット化し、機械学習を用いて材料処方と燃焼挙動の関係を解析する手法が確立され、今後はポリプロピレン系の複合材料に限らずあらゆる材料処方に適用できる可能性があります。これにより、従来は試行錯誤していた処方設計を合理的に導き出すことができるようになります。
技術・市場・規制動向を網羅した『難燃剤/難燃材料の開発と市場・規制動向2026』を出版
新刊『難燃剤/難燃材料の開発と市場・規制動向2026』では、技術・市場・規制の最新動向を総合的に網羅しました。
「開発編」では、熱可塑性樹脂のノンハロ難燃配合処方例をはじめ、ノンハロゲン系難燃剤のリサイクル性(FP-2000シリーズ等)、木材のリン系難燃化技術、耐熱・難燃性を備えたパラ系アラミドエアロゲル繊維、次世代自動車向け難燃材料(難燃PBTのグレード展開等)、先端半導体向け低誘電材料の開発(ホスフォナートポリブタジエン等)、さらにはデータサイエンスを活用した難燃性解析など、第一線の専門家が最新動向を解説しています。
「市場・規制動向編」では、各種難燃剤・難燃材料の市場動向や用途別要求特性、国内主要メーカー25社の動向、そしてPOPs条約、欧州REACH、PFAS規制等の国内外の環境規制・規格動向を整理しています。
本書は、安全性規格への適合、複雑な設計技術の課題、環境規制への対応に立ち向かう、皆様の一助になれば幸いです。

図3:『難燃剤/難燃材料の開発と市場・規制動向2026』2026年7月1日発行
『難燃剤/難燃材料の開発と市場・規制動向2026』は、2026年7月1日発行です。詳しくは、こちらのご案内をチェックしてみてください
https://www.cmcbooks.co.jp/products/detail.php?product_id=116261&utm_source=chematels&utm_medium=S0903_article&utm_campaign=S0903_chemasaki
上本朋美(うえもと ともみ)
シーエムシー出版編集部所属(大阪)。雑誌『月刊 機能材料』の編集を経て、現在はレポートの企画・編集業務に従事しています。エレクトロニクス、新材料、エネルギー、医薬、化粧品など産業界で注目されているテーマの情報発信に努めます。
