化粧品・医薬部外品などで3次元培養ヒト皮膚モデルの注目集まる【有望市場サクッとダイジェスト】
2025/06/04「有望市場サクッとダイジェスト」では、Chematelsの編集チームに加わった技術系専門書出版社「シーエムシー出版」の編集担当者が、注目分野の市場動向について伝える新刊書籍の出版タイミングに合わせ、その分野のポイントをChematelsの記事としてお届けしています。今回は「3次元培養ヒト皮膚モデル」に光を当てます。3次元細胞培養法を駆使してヒトの皮膚と同様の機能をもたせるこの技術への注目が集まっている背景には、動物試験の規制強化があります。主に医療や化粧品の研究開発などでのニーズが見込まれています。
医薬外部品・化粧品などの実験で動物使用を禁止する潮流が起きている

図1:3次元培養ヒト皮膚モデルの例
(写真提供:ジャパン・ティッシュエンジニアリング)
3次元培養ヒト皮膚モデルは、人間の皮膚を再現した3次元の培養モデルです。皮膚の層や構造を模倣し、実際の皮膚と同様の機能をもつように設計されています。主に医療や化粧品の研究・開発に使用され、新しい治療法や製品の効果を評価するためのツールとして利用されています。
化粧品や美白剤や育毛剤などの医薬部外品は、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(薬機法)で、「医薬品」と区別する形で、「人体に対する作用が緩和なもの」とされています。
とはいえ、皮膚に直接塗布されるものは消費者にとって安全であることが必要です。このため薬事申請で必要とされる安全性試験には、皮膚刺激性、眼刺激性、皮膚感作性、光安全性などの各種試験があります。
かつて化粧品などの安全性を確保するための試験では、ウサギやモルモットやミニブタなどの動物が用いられてきました。しかし、欧州連合(EU:European Union)では動物愛護の観点から、動物を用いて試験を行った化粧品の域内での販売が禁止されています。2013年、「EU化粧品規則等の動物実験を禁止する法規制」が施行されたのです。化粧品などにおける動物実験を禁止とする流れは、他の国にも広がっています。
こうした背景から、動物実験の代わりとなる方法が欧米を中心に広まり、化粧品、医薬品、医療機器、化学品、農業、食品分野まで広がっているのです。
皮膚と同様の機能をもたせた3次元培養ヒト皮膚モデルに注目
「3次元培養ヒト皮膚モデル」という長い呼称には意味があります。この呼称は、まず「3次元培養技術」があり、その中の一つに「3次元培養ヒト細胞モデル」があり、さらにその中の一つに「3次元培養ヒト皮膚モデル」があることを指しています。

図2:3次元培養ヒト皮膚モデルの位置づけ
まず、「3次元培養技術」は、細胞を3次元で培養する技術です。以前は細胞間組織培養用プラスチック容器で細胞を2次元培養していましたが、3次元培養が可能となりました。3次元培養では、細胞と細胞外マトリックスの相互作用を反映させることができ、2次元培養よりも生体内に近似した細胞を用いて動物実験を行えるものと注目されてきました。
次に、「3次元培養ヒト細胞モデル」は、人間の組織や臓器を3次元的に再現した培養モデルでのことです。実際の組織や臓器の構造や機能をより正確に模倣することができます。簡単な組織や細胞の構造を再現する目的で20世紀後半に、3次元培養ヒト組織モデルの利用が始まっています。
そして、「3次元培養ヒト皮膚モデル」は、人間の皮膚を再現した3次元培養モデルのことを指します。このモデルは、皮膚の層や構造を模倣し、実際の皮膚と同様の機能をもつように設計されており、主に医療や化粧品の研究・開発に使用され、新しい治療法や製品の効果を評価するためのツールとして利用されています。

図3:3次元培養ヒト皮膚モデルなどの応用分野
評価編で各種試験法を、応用編で製品と市場の動向を詳述
2025年5月に発行する新刊『3次元培養ヒト皮膚モデルの評価と応用』のとりわけの読みどころを紹介します。

図4:『3次元培養ヒト皮膚モデルの評価と応用』2025年5月発行
3次元培養ヒト皮膚モデルなどの評価法を解説する評価編では、体外の実験室環境で細胞や組織を用いて行われる試験管内(in vitro)試験法の数々を詳細に解説しています。
これらの試験法は一般的に、ペプチド結合試験(DPRA:Direct Peptide Reactivity Assay)などの「細胞を用いない試験法」のほか、ヒト細胞株活性化試験(h‒CLAT:human Cell Line Activation Test)などの「単層培養細胞を用いる方法」、そして、「3次元培養ヒト皮膚モデルを用いる方法」の3種に大別されます。このうち、本書タイトルでもある、3次元培養ヒト皮膚モデルを用いる方法は、他の二つの方法に比べて生体に近いモデルを構築可能で、非水溶性物質も評価可能であることなどから近年注目されています。本書で詳細に解説しています。
また、応用動向を紹介する応用編では、表皮モデル、全層モデル、角膜モデル、口腔モデル、バイオプリンティングによる人工皮膚の製品動向を詳述しています。さらに医薬品、化粧品、食品、医療機器の市場動向を解説しています。
『3次元培養ヒト皮膚モデルの評価と応用』は、2025年5月発行予定です。詳しくは、こちらのご案内をチェックしてみてください。誌面サンプルもご登録の上、ご覧いただけます。
吉倉 広志(よしくら ひろし)
シーエムシー出版東京編集部。『内外化学品資料』および単行本を担当。雑誌からの書籍展開が多く、バイオテクノロジーや食品、石油化学、ファインケミカル分野の書籍化を数多く担当しています。タイトルは過去からお世話になった研究者・開発者の方々を中心に農薬、酵素、ポリウレタン、石化プラント、魚肉タンパク質などです。

