自動車・電子で需要拡大の接着剤…材料革新・環境対応と接着・接合技術の進歩で「次世代」へ【有望市場サクッとダイジェスト】
2026/04/23「有望市場サクッとダイジェスト」では、注目分野の市場の状況や動向を「シーエムシー出版」の編集担当者が、新刊の出版に合わせてダイジェストでお届けしています。今回のテーマは「接着剤」です。人工知能(AI:Artificial Intelligence)分野の隆盛によるAIチップ普及拡大や車載装置の電子化を背景に、接着剤の需要が世界的に伸びています。技術革新により用途は広がる一方、原料価格の変動やサプライチェーンの不安定さなど、供給面の課題も浮かび上がっています。この記事では、拡大する接着剤需要の背景と技術動向、今後の課題についてお伝えします。
主力用途の生産は減少傾向ながら、自動車・電子機器分野の需要は拡大

図1:接着剤は高機能・環境対応型へシフト
(画像はイメージ)
日本の接着剤産業は近年、木材分野の需要縮小、環境規制による溶剤系製品の減産、海外生産拠点への移管、国内市場の成熟化を背景に、生産量全体が緩やかに減少しています。日本接着工業会の統計によると、2024年の接着剤生産量は74万6953トンで前年から微減、最も生産量の多い合板用途は前年比5.1%減、次いで現場施工用途は同2%減と、接着剤の主力用途が前年割れとなりました。
一方で、生産量第4位の自動車用途は、同24.8%増となりました。自動車の製造において接着剤を使用する箇所が増加したことが理由として推測されます。同時に、車載装置などの電子化による電磁波防除を目的とした導電性接着剤、優れた接着性と特定の刺激で剥離できる易解体性接着剤、またAI分野ではAIチップの搭載場所に合わせた耐衝撃・耐熱・耐湿などの機能性接着剤の技術開発が進み、需要拡大を後押ししたとみられます。
高機能化と環境対応、省力化を実現する接着剤が国内生産維持の鍵
高機能・環境対応型の接着剤や、省力・簡便化を実現する接着剤へのシフトが国内生産維持の鍵となっています。硬化時に熱を使わないことで二酸化炭素排出量を削減し、カーボンニュートラルに貢献する製品の開発が活発であることが前者の背景にあります。また後者については、熟練職人の高齢化や人手不足を受けて工程数の削減や施工の簡便化が求められていることが事情としてあります。
世界情勢による原料リスク-代替原料探索、材料革新、接着・接合技術の進化で危機を乗り越える
接着剤の原料となる化学品の供給不安や規制強化への対応がメーカーなどにとっての課題となっています。化学品規制による原料の生産停止や自然災害による工場被害からの復旧の遅れ、地政学リスクによるサプライチェーンの混乱などが影響しています。国内市場に加え、世界市場の動向にも目を向ける必要があります。(図2)。
利用フリー画像

図2:主要国の接着剤市場の概要
(出所:シーエムシー出版 2026年出版『粘・接着剤/接合技術の開発と市場2026』「市場編」第1章「接着剤・粘着剤の市場概観」を元に作成)
また、2026年2月末以降の中東情勢の緊迫化は原料の供給不安を増幅させています。製品の安定供給を維持するため、各メーカーは代替原料の模索を進めています。
同時に、「接着剤に依存しない接合技術」がさらに注目を集めています。例えば、プラズマ処理による接合技術や、バイオミメティクスつまり生物模倣による接着技術といったものです。自動車の軽量化に伴い、金属や樹脂、複合材料などを組み合わせるマルチマテリアル化が進み、異種材料接合などの材料技術や接合装置が研究・実用化されています。
今後、代替原料探索、環境配慮品開発、性能向上を目指す接着・接合技術革新という多角的な取り組みが、次世代の接着ソリューションを支える重要な柱になると見込まれます。
粘・接着剤/接合技術の研究開発と市場をまとめた書籍を出版
新刊『粘・接着剤/接合技術の開発と市場2026』では、接着剤および接合技術の研究開発および実用化動向、そして市場動向を収載しています。
「技術・開発編」では、接着継手の強度および破壊条件・加速耐久性評価・寿命予測法、構造用接着接合技術の強度試験法・耐久性評価、ハイブリッド接合可能な接着材料、接着剤の精密塗布装置、接着力を向上させるプラズマ装置、粘着・粘着テープ設計技術、生分解性・バイオベース接着剤、環境対応型接着剤・添加剤といった、接着・接合の高機能化に向けた研究・製品開発の状況を第一線で活躍中の専門家が解説しています。
「市場編」では、接着剤の種類別の市場概観から、国内外の市場動向、接着・接合の用途別動向、環境課題、国内外のメーカーの動向を収載しました。
本書は、現代のモノづくりを支える接着・接合技術に携わる方々の課題解決に向けたヒント満載の一冊となっています。

図3:『粘・接着剤/接合技術の開発と市場2026』2026年2月27日発行
『粘・接着剤/接合技術の開発と市場2026』は、2026年2月27日発行です。詳しくは、こちらのご案内をチェックしてみてください。
上本朋美(うえもと ともみ)
シーエムシー出版編集部所属(大阪)。雑誌『月刊 機能材料』の編集を経て、現在はレポートの企画・編集業務に従事しています。エレクトロニクス、新材料、エネルギー、医薬、化粧品など産業界で注目されているテーマの情報発信に努めます。

