PFASでも注目!「水処理」の技術とビジネスが発展中【有望市場サクッとダイジェスト】

2025/05/20
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このたびChematelsの編集チームに加わった技術系専門書出版社「シーエムシー出版」の編集担当者が、注目分野の市場動向について伝える新刊書籍の出版タイミングに合わせ、その分野のポイントをChematelsの記事としてお届けしてまいります。初回は、気候変動による水質の悪化や、工業廃水による水質汚染、さらに近ごろ相次いでいる有害とされる有機フッ素化合物「PFAS」の検出でも大いに注目されている「水処理技術」にフォーカスします。各国における水質規制や水処理技術の動向などを紹介するとともに、書籍の読みどころを紹介します。

終わりの見えない水質汚染と水不足の課題

水質汚染は、世界で、そして日本でも続いている深刻な環境問題といえます。

海外、とくに発展途上国では下水処理施設が不足し、多くの人々が汚染された水を使用して健康被害を受けています。海洋汚染も深刻で、プラスチックごみが生態系に悪影響を与えています。さらに地球温暖化も、生態系の異変などを引き起こすことから水質悪化を助長し、水質管理の難しくしています。

一方、日本では近年、諸外国と同様、発がん性が指摘されている有機フッ素化合物(PFAS:Per- and Polyfluoroalkyl Substances)が国内各地の水道水や地下水から検出されています。

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図1:人びとの生活に欠かせない水道水

国内外での水質規制動向、PFAS対応が課題に

国内外の水質規制の動向を見ておくことは、環境保護や公衆衛生をめぐる今後の状況を見通すという点で重要です。

日本では1970年に水質汚濁防止法が施行され、工場排水などによる地下水汚染を防ぐための規制が行われました。その後、時代ごとの社会状況に応じて改正が重ねられています。また、1993年に施行された環境基本法で、水質汚濁による環境基準が定められました。一方で、暫定基準値を超えるPFASが検出される事例が2024年頃から続いており、省令の改正などで、自治体や水道事業者に対し、水質検査や基準を超えた場合の改善の厳格化が図られる見通しです。

一方、米国では、水質浄化法が水質汚染規制の基本法となっており、ほかに飲料水の水質を保証するための安全飲料水法などがあります。特にPFASに対する規制は厳しく、2023年には飲料水中のPFASに関する国家統一基準案が発表されました。また、2009年から水道水の暫定健康勧告値が設定され、バイデン政権下でさらなる規制強化が進められました。一方、トランプ大統領は第1次政権下時代を含めPFAS規制に消極的で、先行きは不透明です。

欧州では、2000年の欧州連合(EU:European Union)の「水枠組み指令」により淡水域の水質改善が求められてきました。また、2000年に発効された「飲料水指令」が2020年に改正され、付属書に飲料水中のPFASに関する基準値が含まれました。さらに、2023年には約1万種類のPFASを全面的に規制対象とする規制案が発表されました。

中国では水質汚染防止法の改正が行われ、工業排水の規制強化や水質監視ネットワークの拡充が進められています。河川長制や総量規制制度により、重点水汚染物質の排出規制が強化されています。

用水・排水とも水質の維持向上に水処理技術が不可欠

水処理技術は、生活用水や産業用水の確保と排水処理の両面で重要な役割を果たしています。

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図2:浄水場。水源から取り入れた水を生活用水などとして適した水質に浄化する

用水処理の対象には生活用水と工業用水があります。産業用水は特定の用途に応じた処理プロセスが必要です。

生活用水では、見た目の清浄さや健康維持が求められます。浄水場で処理され、水道法に基づいて清潔で安全な水が供給されます。生活用水の処理では、まず粗い砂をスクリーンで取り除く物理処理、次に泥などを凝集分離する薬品処理、そして最後に殺菌処理が行われます。水道法により、現在51項目の水質基準が定められています。

一方、工業用水は、機械の冷却や原料の希釈などさまざまな用途で使用され、ろ過池での物理処理が主に行われます。なお、生活用水が工業に利用されることもあります。

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図3:水循環センター。下水の各種処理を経て、最終的に排水を川などに放流する

排水処理の対象には生活排水と工業排水があり、異なる方法で処理されます。いずれも汚れた水を河川や海に放流できるレベルまで浄化する処理が求められます。

生活排水は下水処理場で物理化学的処理と生物学的処理を経て浄化され、最終的に塩素で殺菌されます。

一方、工業排水は、化学物質や金属などが含まれており、国や地方自治体が定める排水基準を満たすように各工場で適切な処理が施されます。

排水処理の方法のうち、物理化学的処理では、凝集反応や膜ろ過を利用して固体と液体を分離し、化学的に有機物を酸化します。また、生物学的処理では、活性汚泥法や生物膜法など、微生物を利用して有機物を分解します。さらに、微生物と膜処理を組み合わせた膜分離活性汚泥法(MBR:Membrane Bioreactor)や、スポンジ上部から滴下した排水を微生物により浄化する下向流懸垂型スポンジ(DHS:Down-flow Hanging Sponge)法など、効率的で省エネルギーな処理技術も研究されています。

最新の水処理技術を研究者が紹介、PFAS除去など新規ビジネスの解説も

新刊『水処理・水ビジネスの技術と市場2025』では、上下水道や海水淡水化技術などの水処理装置や水処理膜・水処理剤の技術や市場動向を詳しく解説しています。

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図4:『水処理・水ビジネスの技術と市場2025』2025年3月6日発行

世界的な水不足を解決するためのアプローチとして、膜技術による水の浄化技術の開発が進められています。ほかにも、工場排水の浄化や海水淡水化など目的に応じて多様な水処理膜が開発されています。本書では、これらの技術分野の第一線で活躍する産学官の研究者たちが執筆をしています。

また、国内外における水ビジネスの動向について、世界の主要プレイヤーの動向や今後市場が成長されると考えられるPFAS除去、半導体産業向け、データセンター用途などの新規水ビジネスについても解説しています。

『水処理・水ビジネスの技術と市場2025』は、2025年3月6日発行。詳しくは、こちらのご案内をチェックしてみてください。

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片岡 大(かたおか まさる)

シーエムシー出版。編集者。エレクトロニクス、新材料、医薬品、環境技術、エネルギーなど、産業界で注目されている旬なテーマの書籍化やセミナーの企画を担当しています。サステナブル社会に向けた技術開発の取り組みについて書籍化を行っており、水素・水処理・生分解性プラスチックなどの書籍を多数担当し、大きな反響を得ています。

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