逆境を追い風に! 電池市場に成長チャンスあり【有望市場サクッとダイジェスト】

2026/01/15

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注目分野の市場動向について解説する「シーエムシー出版」の書籍の出版タイミングに合わせて、編集担当者がChematels読者の皆さんに「先読み」できる記事をお届けしています。今回は、いまや私たちの日常生活に欠かすことのできない「電池」の分野から。2024年の世界の電池市場は、前年比8.4%増の約21兆4000億円と推定され、2040年には43兆7300億円への拡大が予測されています。一方で、欧米市場を中心とする電気自動車シフトの鈍化により、リチウムイオン二次電池の従来の需要予測が過大だったという見方が広がり、増強計画を見直す企業が出始めている現状もあります。この記事では、難局面を迎えているリチウムイオン二次電池の現状と今後の期待について紹介したいと思います。

EV急減速で需要変化、リチウム価格が急騰そして急落

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図1:電気自動車(イメージ)

2020年以降、電気自動車(EV:Electric Vehicle、図1)向けリチウムイオン二次電池(LiB:Lithium-ion Battery)の需要拡大を背景に、世界のリチウム生産量は急増していました。米国地質調査所(USGS:United States Geological Survey)によると、2020年以降、リチウム生産量は毎年概ね3割前後の伸びで推移し、2018年から2023年の5年間で生産量は約2倍となりました。これは、2017年以降に豪州で複数の鉱山が稼働開始したことが寄与したとされています。

このような需要変化は、リチウム価格にも大きく反映されています。2021年後半からのEVブームによりリチウム価格は上昇し、2022年12月には、炭酸リチウムおよび水酸化リチウムが史上最高値を記録しました。

しかしながら、2022年末に中国のEV購入補助金が終了したことでEV需要が減退し、2023年にはリチウム価格が急落に転じ、2023年7月以降は再度下落基調となりました(図2)。この価格低迷の根本要因は供給過剰にあります。リチウム生産量は増加しつづけましたが、需要の伸びが追いつかず、過剰在庫が発生したうえ、欧州で中国産EVへの補助金政策が縮小されたことも需要を鈍化させ、価格下落に拍車をかけたとみられます。

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図2:炭酸リチウム・酸化リチウムの輸入価格推移。酸化リチウムは水酸化リチウムを含む。単位はいずれも円/キログラム。Chematels市況情報「炭酸リチウム」「酸化リチウム」のデータより

こうした市況変動はリチウム生産企業の戦略にも影響を及ぼしており、2023年以降は業界再編の動きが活発であり、合併・買収が相次いでいます(図3)。

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図3:リチウム関連企業の再編動向の例
⁠(出所:エネルギー・金属鉱物資源機構資料および各社ニュースリリースを元に作成)

このようにリチウム市場は短期的な価格低迷が続きましたが、2025年7月に中国の蔵格鉱業がリチウム生産を停止したことから、価格は上昇に転じています。

EV販売は減速予想ながら拡大傾向、成長性に期待

また、世界のEV販売は減速する見込みですが、市場は拡大傾向であることに変わりはないとみられています。国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)によると、世界の新車販売におけるEV比率は、2024年に1700万台を超え20%増に達したとされ、安価なEVを供給する中国が牽引役となり、2030年には40%を超えると予想されています。

こうした動向を見据え、電池メーカーや材料メーカーは性能や生産性などさまざまな側面から改良を目指す取り組みを進めています。

国内プロジェクト始動、電池設備産業の構造変革を目指す

こうした市場環境の下、日本では電池サプライチェーン全体の競争力強化を目的とする取り組みが進展しています。一般社団法人の電池サプライチェーン協議会(BASC:Battery Association for Supply Chain)は、2025年11月時点で244社の参画企業と共に、経済産業省の「蓄電池産業戦略」と連動し、共通課題の解決に取り組んでいます。

その一環として、2025年12月、BASC加盟の設備関連企業9社が共同で「Swiftfab Energy Systems株式会社(仮称)」の設立に合意したこと発表しました。この共同事業体は、「Swiftfab」と呼ぶ産業横断型プロジェクトを推進し、蓄電池製造設備産業の構造変革を目指すとしています。

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図4:Swiftfabの概要
⁠(出所:電池サプライチェーン協議会(BASC)2025年12月18日発表「蓄電池製造設備産業の強化を目指す共同事業『Swiftfab』始動」を元に作成)

Swiftfabの特徴は、複数企業がそれぞれの強みを結集し、産業横断型の一貫製造プラットフォームを構築する点にあるといえます。従来の企業単位ではなく、Swiftfabでは建屋・設備・生産装置・システムを一体で設計・開発し、統合された製造ラインソリューションとして提供することを計画しています。このアプローチにより、短期間・低コストで高品質な製造拠点を構築できると期待されており、日本の蓄電池産業が国際競争力を高める新たな産業モデルとなる可能性もあります。

総じて、リチウム市場は短期的な価格低迷と企業収益圧迫という課題を抱えつつも、EVや蓄電池需要の長期的な成長、政策支援、新たな産業構造の構築により、将来的な安定的・成長的な展開が期待される局面にあるようです。

電池・電池材料の市場動向をコンパクトにまとめた書籍を出版

新刊『電池・電池材料の市場動向』では、激動の電池業界の近年の動向をまとめ、今後の動向を探るヒントになる一冊となっています。

本書のとりわけの読みどころをご紹介します。

EV市場の減速と再配分の動向について詳述しています。欧米でEVシフトが鈍化している状況や、車載LiBの需給・価格・投資計画の見直しが進行しているといった状況です。

「モノのインターネット(IoT:Internet of Things)×一次電池」の拡大について例示しています。スマートメーターや計測機器向けにアルカリ乾電池・塩化チオニルリチウム電池の需要が堅調であることなどを伝えています。

電力貯蔵システム(ESS:Energy Storage System)の底堅さ、また、再生可能エネルギー統合で系統・産業用途が拡大している状況や、LiB、レドックスフロー電池、ナトリウム・硫黄(NAS)電池の適材適所が明確化している状況などに触れています。

次世代電池・材料のトレンドをレポートしています。全固体電池やナトリウムイオン電池などの実装ロードマップが前進している状況や、正極・負極・電解質・セパレータのコスト・安全性・環境最適性が焦点となっている状況をレポートしています。

需給が揺れる局面ほど、全体像のアップデートが投資・開発の精度を高めます。本書はEVの減速トーンだけでなく、一次電池やESSの確度ある成長、次世代電池の実装ハードルまでを一望できる内容となっています。

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図5:『電池・電池材料の市場動向2026』2025年11月28日発行

『電池・電池材料の市場動向2026』は、2025年11月28日発行です。詳しくは、こちらのご案内をチェックしてみてください。

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上本朋美(うえもと ともみ)

シーエムシー出版編集部所属(大阪)。雑誌『月刊 機能材料』の編集を経て、現在はレポートの企画・編集業務に従事しています。エレクトロニクス、新材料、エネルギー、医薬、化粧品など産業界で注目されているテーマの情報発信に努めます。

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