再生可能エネルギーの限界を打ち破る「CCUS・DAC」技術の現在地と社会実装への道筋【先読み!研究開発トレンド】
2026/09/01Chematels編集チームの「シーエムシー出版」編集担当者より、新刊書籍の出版タイミングに合わせて最先端の研究開発の中身を「先読み」できる記事をお届けします。今回は「CCUS(CO2の回収・利用・貯留)」がテーマの書籍です。日本政府が掲げる「2050年カーボンニュートラル」に向け、官民一体となったGX(グリーントランスフォーメーション)の動きは、単なる環境対策を超えて世界の産業構造を根本から左右する最優先課題となっています。
再エネだけでは埋まらない「炭素のギャップ」。ハード・トゥ・アベート分野が抱える構造的課題
脱炭素化に向け、太陽光や風力といった再生可能エネルギーの導入や、モビリティの電動化が急速に進んでいます。しかし、産業界の現実を見渡すと、電力のグリーン化だけではCO2排出を削減しきれない領域が存在します。これが「炭素のギャップ」と呼ばれる問題です。
特に深刻なのが、鉄鋼、化学、セメントといった基礎素材産業や、長距離輸送を担う航空・船舶などの分野です。これらは「ハード・トゥ・アベート(Hard-to-Abate:排出削減困難)」領域と呼ばれます。製造工程においてCO2が発生したり、プロセスの維持に高密度の熱エネルギーを必要としたりするため、エネルギー源を再エネに置き換えるだけでは排出をゼロにすることが構造的に困難となります。

図1 CCUS(二酸化炭素回収・利用・貯留)の仕組み
どうしても排出が避けられないハード・トゥ・アベート領域において、排ガスなどから直接CO2を捕集するCCUS技術は、事業の継続と環境対応を両立するための現実的な解決策となります。GX時代における企業の国際競争力を左右する意味でも、その実装は急務となっています。
炭素は「排除すべき敵」から「循環資源」へ。CCUSとDACが促すパラダイムシフト
CCUSをめぐる技術トレンドは、近年大きな変革期を迎えています。従来の取り組みは、大規模な発生源から捕集したCO2を地中深くへ埋め立てる「CCS(回収・貯留)」が主流でした。しかし現在では、回収したCO2を能動的に活用する「CCU(回収・利用)」や、大気中に浮遊する希薄なCO2を直接捉える「DAC」の開発が世界中で加速しています。

図2 CO₂回収・分離技術の比較
こうした技術の進歩は、従来の「CO2は抑制し排除すべき対象(敵)」という固定観念を崩し、「有効に循環させるべき炭素資源」として再定義する大きなパラダイムシフトをもたらしています。
一方で、これらの革新技術を社会に定着させるためには、乗り越えるべき実用化の壁も存在します。特に、希薄なCO2を効率よく分離・回収するために必要な膨大なエネルギーコストの削減は大きな課題です。加えて、高効率な物質変換プロセスの開発や、回収炭素を経済合理性のある「資源」として流通させるバリューチェーンの構築など、解決すべきテーマは広範囲にわたります。
CCUSおよびDACに関する最新動向を解説した技術専門書を刊行
本書では、CO2の分離・回収を支える最新の要素技術から、燃料・化学品・建材への転換・資源化プロセス、さらにはシステムの効率化まで、広範な技術体系を網羅的に俯瞰できます。要素技術の研究開発者はもちろん、事業化を目指すエンジニアや企画部門の担当者にとっても、現場で直面する技術的・コスト的課題を突破するための強力なガイダンスとなる内容です。
環境規制の厳格化とGX投資の拡大に伴い、CCUS・DAC分野における技術動向の把握は、企業の持続的な成長戦略において欠かせない要素となっています。自社のコア技術をいかにCO2循環エコシステムへと展開すべきか、あるいは新たなビジネスモデルをどう描くべきか。今後の技術戦略や研究開発の方向性を探るための実践的なリファレンスとして、ぜひ本書をご活用ください。

図3 『二酸化炭素の分離・回収と資源化・転換―技術資料集―』2026年3月31日発行
池田 識人(いけだ しきと)
シーエムシー出版編集部(東京)。同社出版の雑誌『月刊ファインケミカル』編集を経て、現在は主にレポートの企画・編集業務に従事。ファインケミカル、新材料・新素材、エレクトロニクス、エネルギーなどの分野において、産業界で注目の旬なテーマを書籍化している。
