輸出入とも23年以降高騰、背景に原料イルメナイト高値―酸化チタン【市況PV上位の化学品をチェック! 第7回】
2024/12/03目次
本連載で扱う項目
- 第1回 全体概要
- 第2回 けい素(シリコン)→ 市況
- 第3回 リン酸 → 市況
- 第4回 メタノール・エタノール → 市況・市況
- 第5回 カーボンブラック → 市況
- 第6回 炭酸リチウム → 市況
- 第7回 酸化チタン → 市況
- 第8回 尿素 → 市況
Chematels市況情報の化学品カテゴリーで、2023年のページビュー第7位となったのが酸化チタン(TiO2)です。酸化チタンは、地球上に広く分布するチタン鉱石からつくられる無機化合物です。白色度に優れ、下地を覆い隠す力や高い発色力、均一分散性などを持つため、100年以上前から工業的に作られ、白色顔料として広く使用されています。日常生活に欠かせない材料として身のまわりのさまざまな用途に広がりつづけています。
国内でも生産、主な用途は塗料やインキ・顔料
酸化チタンは全世界で年間約700万トン以上、生産・消費されています。日本国内での生産量は年間約16万トン、出荷量は約11万トンで、消費量は輸入品を含め年間約16万トンとなっています。これまで取り上げてきたページビュー上位6位までの化学品と異なり、酸化チタンについては国内生産が大半を占めています。
酸化チタンの国内の用途は、塗料とインキ・顔料で70%以上を占めます(図1)。顔料用途としては、住宅や自動車の塗料、食品包装材のインキ、冷蔵庫・洗濯機などのプラスチック類やカプセル・錠剤などの医薬品、チョコレート・ガムなどの食品の着色剤、ナイロン・ポリエステルなどの化学繊維の艶消し剤など、幅広い分野で使用されています。

図1:酸化チタンの国内メーカー用途別出荷実績
(出所:日本酸化チタン工業会集計データを参考に編集部作成)
2021年以降、価格が原料ともども高騰
酸化チタンについては国内生産が大半を占めるため、輸入価格が国内市況とリンクするわけではありませんが、輸入価格は2021年後半以降、乱高下しながらも以前に比べ、一段高い水準を示しています(図2)。

図2:酸化チタンの輸入CIF価格の推移。単位は円/キログラム。Chematels市況情報のデータより。CIF(Cost Insurance and Freight)は運賃保険料込み条件のこと
国内メーカー各社も2021年以降、国内・海外向けの両方で数次にわたり価格を値上げしています。背景には、酸化チタンの主原料であるチタン鉱石の価格高騰や、ロシアのウクライナ侵攻を契機とする石炭など原燃料価格の上昇があります。

図3:酸化チタンの輸出価格の推移。月次・円ベース。2020年を100とした場合
(出所:日本銀行「企業物価指数」を基にGD Freak!作成。一部改編)
たしかに、財務省貿易統計におけるチタン鉱石(チタン鉱イルメナイト)の輸入価格は、2019年後半に大幅な高値を付け、以降も高値を保っています。原燃料価格の上昇が定常化していることから、今後とも、酸化チタンの高価格は続くものと予想されます。

図4:チタン鉱イルメナイトの輸入価格の推移
(出所:財務省貿易統計を参考に筆者作成)
光触媒やIT機器・電気自動車向けの用途でも注目
酸化チタンで忘れてならないのは、光触媒用途としての活用です。
1967年、紫外光照射下の酸化チタンと白金電極間で水が分解され、酸素と水素が発生する現象が発見され、1972年に科学誌『ネイチャー』で発表されました。発見者の名をとって「本田・藤嶋効果」と呼ばれるようになるとともに、酸化チタンによる光触媒研究が世界的に始まりました。用途としては、太陽エネルギーによる水や有機物などの分解で、紫外線などを吸収して有機物を分解する力を利用し、脱臭・抗菌・防汚などの効果がある商品が開発されています。
また、スマートフォンなどのIT機器の積層コンデンサを構成する物質に高純度酸化チタンや、酸化チタン製造時の中間製品である高純度四塩化チタンなどが使われています。さらに、電気自動車(EV:Electric Vehicle)の高性能バッテリーの主流であるリチウムイオンバッテリーでも、チタン酸リチウム電極など酸化チタンやその関連技術を用いた部材が材料の中核となっています。
古くから知られている酸化チタンですが、今後も、発展の可能性の高い基礎素材として、注目していくことが重要と思います。
次回はいよいよ最終回。ページビュー第8位の尿素を取り上げる予定です。
猪股 勲(Isao Inomata)/ SCE・Net
東京大学工業化学修士課程修了。三菱ケミカル(株)で、石油化学関連の技術開発・事業開発、企画業務に従事。その後、日本バイオプラスチック協会に奉職。石油化学全般、バイオプラスチック、プラスチック廃棄物管理、気候変動などの環境問題に広く精通。2015年よりSCE・Net所属。ITIコンサルタント事務所チーフコンサルタント。
