燃料グリーン化、車の次は船?―メタノール・エタノール【市況PV上位の化学品をチェック! 第4回】

2024/10/16
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目次

Chematels市況情報の化学品カテゴリーで、2023年のページビュー第3位がメタノール。第6位がエタノールでした。どちらも有機化学品向けに広く使われています。メタノールはアルコールランプの燃料用として、また酒の成分として酒精とも呼ばれるエタノールは、新型コロナウイルス感染症対策の手指消毒用などでもおなじみと思います。今回は、少し視点を変えて、今後、二次エネルギーとして動向が注目される「バイオ」や「グリーン」のつく製品を中心に概説します。市場規模の大きさからエタノール、メタノールの順でお話しします。

アルコール発酵などで製造するエタノール

エタノールは、エチルアルコールとも呼ばれます。工業的な合成法には、アルコール発酵させる方法と、エチレンを原料として合成する方法があります。

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図1:エタノールの輸入CIF価格の推移。単位は円/リットル。Chematels市況情報のデータより。CIF(Cost Insurance and Freight)は運賃保険料込み条件のこと

バイオエタノールをガソリンに混合、バイオBTBEとして利用することも

気候変動が世界的課題となった現在、トウモロコシやサトウキビの発酵により作られるバイオエタノールが、温室効果ガス排出削減に有効な再生可能エネルギーとして利用されています。用途の代表例の一つが、ガソリンエンジン車の補完燃料としてガソリンに混合されて使うというものです。

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図2:バイオエタノールの製造法

バイオエタノール生産が世界第1位の米国では、ガソリンにバイオエタノールが10%混合された「E10」が広く使われており、近年では混合率を15%に増加した「E15」も販売されています。

生産量第2位のブラジルでは、最も早くからエタノール混合ガソリンが使用されてきました。市販されているガソリンに必ず20〜25%のバイオエタノールが混合されています。このため、ガソリン100%から100%バイオエタノールまで使用可能なフレックス燃料車が普及しており、新規販売車両の80%以上を占めるといわれています。

一方、欧州や日本では、バイオエタノールのガソリン混合使用が自動車部品に悪影響を及ぼすことや流通過程で水が混入することへの懸念から、バイオエタノールにイソブチレンを反応させたバイオ・エチルターシャリーブチルエーテル(Bio-ETBE:Bio Ethyl tertiary-butyl ether)が利用されています。ETBEはエタノールをそのまま使う場合に比べて、金属腐食を抑えることができます。日本では7%ほど混合されたものがバイオガソリンとして、継続的に使われています。ちなみに、日本に輸入されているエタノールは年間40万トン弱で、そのほとんどがブラジルからのものです。

歴史的に見ると、世界初の量産自動車であるT型フォードは当初、燃料としてガソリンの他にエタノールも使える仕様でした。また、有名な自動車レースのインディカー・シリーズでは1965年以降、ガソリンよりクラッシュ衝撃が小さく、水での消火が容易なメタノールが使用され、その後2006年にはメタノールとエタノールの混合燃料が、さらに2007年からはエタノールが使用されています。

天然ガス原料から製造するメタノール

メタノールは、工業的には、現在ほとんどが天然ガス原料から作られています。天然ガスの主成分であるメタンを触媒の存在下で水蒸気または酸素と反応させ、一酸化炭素(CO)と水素(H2)を主成分とする合成ガスとします。これを別の触媒を用いて高圧反応させることでメタノールが作られます。

メタノールの世界需要は、2023年で推定9200万トンほどです。うち73%が、合板、接着剤、塗料、樹脂、噴射剤、繊維、医薬などの工業用で、27%がガソリン混合・添加剤、船舶燃料、水素などの燃料用途です。日本は全量を輸入しており、その量は2022年で174万トンといわれています。

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図3:メタノールの輸入CIF価格の推移。単位は円/リットル。Chematels市況情報のデータより。CIF(Cost Insurance and Freight)は運賃保険料込み条件のこと

メタノールを原料の一つとし、ETBEと似た性状や構造を持たせたメチルターシャリーブチルエーテル(MTBE:Methyl tertiary-butyl ether)が、1990年代からノッキング抑制効果があるとして、米国で広く使われていました。ところが、ガソリンタンクからの漏れによる地下水汚染と、それによる地域住民への健康被害から、多くの州で使用禁止となっています。

グリーンメタノールにバイオマス由来とH2・CO2由来の2種類あり

最近、脱炭素の観点から、化石燃料を使わずに製造されるグリーンメタノールと呼ばれる環境配慮燃料への関心が高まっています。グリーンメタノールは、温室効果ガスを排出しない、または排出が少ないものから合成したメタノールのことですが、二つのタイプがあります。

  1. バイオメタノール
    ⁠バイオプラスチック廃棄物、一般廃棄物、木材チップなどのバイオマスをガス化し、メタノールの原料(CO、CO2、 H2)として合成したメタノール
  2. eメタノール
    ⁠再生可能エネルギー由来で作られたH2と回収されたCO2を原料とする、COとH2の合成ガスから製造されたメタノール

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図4:グリーンメタノールの製造法

気候変動問題の解決策としてのCO2の回収・再利用技術の確立が望まれている中、グリーンメタノールの製造は回収CO2を活用する策の一つになります。こうしたことから国内外で多くのプロジェクトが推進されており、日本でも経済産業省を中心に取り組み推進への議論が進んでいます。海運業界でもグリーンメタノールの活用に向けたプロジェクトが進められていますが、自動車業界でのメタノールの使用実績があるだけに、この動きもうなずけます。

グリーンメタノールの大きな課題は、経済的合理性と環境配慮をどう両立させていくかですが、技術的イノベーションの進展に期待したいところです。今後も普及に向けた動向が注目されます。

次回は、ページビュー第4位の「カーボンブラック」を取り上げる予定です。

【参考文献】

1.経済産業省資源エネルギー庁「e-メタノールの導入可能性について」
https://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/e_fuel/shoyoka_wg/pdf/003_06_00.pdf

猪股 勲(Isao Inomata)/ SCE・Net

東京大学工業化学修士課程修了。三菱ケミカル(株)で、石油化学関連の技術開発・事業開発、企画業務に従事。その後、日本バイオプラスチック協会に奉職。石油化学全般、バイオプラスチック、プラスチック廃棄物管理、気候変動などの環境問題に広く精通。2015年よりSCE・Net所属。ITIコンサルタント事務所チーフコンサルタント。

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