存在感強める中国、採掘に日本企業も参入―炭酸リチウム【市況PV上位の化学品をチェック! 第6回】

2024/11/19
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目次

Chematels市況情報の化学品カテゴリーで、2023年のページビュー第5位となったのが炭酸リチウムです。炭酸リチウムは、電気自動車や多くの電子機器の充電式電池として今後の需要拡大が見込まれるリチウムイオン電池用の素材です。その動向は世界的に注目されています。

温室効果ガス削減にも経済安全保障にも重要

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図1:EVに搭載されたリチウムイオン電池への充電

炭酸リチウムはリチウムの無機化合物であり、リチウムイオン電池の原料となります。炭酸リチウム市場の拡大は、ハイブリッド車や電気自動車(EV:Electric Vehicle)、高電力消費のポータブル電子機器、さらにはエネルギー貯蔵システムの分野で確実視されています。

特に気候変動に対する懸念の増加により、この市場への注目度が高まっています。パリ協定における2030年温室効果ガス (GHG:Greenhouse Gas) 排出量の削減目標の中では、EVによる炭素排出量削減が、その40%以上の比率を占めています。

また、日本で2024年5月に施行された経済安全保障推進法において指定された11種の特定重要物資の中で、「蓄電池」と「金属鉱産物」(ニッケル、クロム、コバルト、リチウム)が明記されている点も、炭酸リチウムのこうした状況を反映しています。

南米はじめ各国に埋蔵するも、中国が精錬を実質的にほぼ独占

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図2:リチウムをめぐる世界各国シェア。精錬では、チリでの作業に中国企業が関連していると考えられ、実質的に約9割を中国が占めているとみられる
⁠(出所:(埋蔵)米国地質調査所「Mineral Commodity Summaries 2024」/(精錬後)国際エネルギー機関「Global Critical Minerals Outlook 2024」を参考に編集部作成)

高エネルギー密度、長寿命、長期間充電保持などの特性から、リチウムイオン電池の需要は拡大しており、その主要原料であるリチウム需要が今後も拡大していくのは確実です。しかし、世界のリチウム埋蔵量は、ボリビア、アルゼンチン、米国、チリ、オーストラリア、中国で世界全体の約8割を占めており集中しています(図3上)。

うち、オーストラリアのリチウム鉱石はその大半が中国に輸出されて精錬され、中国製のリチウムイオン電池に広く使われています。また、チリなどでの製錬事業に中国系企業が関連しています。中国は世界的に高い競争力と強い地位を維持しており、リチウムの精錬の9割を中国が担っているといわれています(図3下)。リチウム鉱石の製錬工程は高エネルギー消費を伴う労働集約型であるため、従来、環境規制の緩さと低労働力コストから主に中国がその現場となってきました。

2022年に輸入価格が急騰、23年中ごろに急落

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図3:炭酸リチウムの輸入CIF価格の推移。単位は円/キログラム。Chematels市況情報のデータより。CIF(Cost Insurance and Freight)は運賃保険料込み条件のこと

Chematelsの市況情報データで見られる通り、炭酸リチウムの輸入価格は2022年に急騰した後、2023年中ごろからは急落し、大きな変動を見せました。

2022年の急騰は、主要生産国である中国の環境政策転換による分離精製コストの上昇とEV市場の急拡大による供給不安の懸念が高まったためです。その後しばらく高値が続いたのは、新型コロナウイルス感染症の拡大や、ロシアのウクライナ侵攻などの政治・社会状況下での経済的安全保障への各国の関心の高まりが原因にあったと思われます。

2023年中ごろからの急落は、南米やオーストラリアを中心としたリチウム資源確保のための増産計画と、中国でのEV販売数の伸び率鈍化などにより、供給不安の懸念要因が縮小したことが影響していると思われます。

価格下落の状況の中でも増産計画の拡大は続いており、今後、40%強の生産能力拡大も予測されています。世界2位の産出国チリで、大手メーカーがリチウム販売量を大きく増やすなど、2024年以降の余剰生産状況を指摘する報告も出されています。

長期的には、リチウム需要の拡大は揺るぎないと見られており、世界各国でリチウムの資源確保の動きは活発です。日本でも、豊田通商がアルゼンチンのオラロス塩湖でのリチウム資源採掘計画や、当地での炭酸リチウムならびに国内での水酸化リチウムの生産を進めています。ほか、三井物産がブラジルのリチウム鉱山を開発する米国企業に出資したり、また三菱商事がカナダでのリチウム鉱山開発に同国企業を合併した上で参加したりと、資源の安定確保に向けて取り組んでいることも注目されます。

リチウムイオン電池のリサイクル化に注目

最後に、リチウム資源の問題で注目しておきたい課題として、リチウムイオン電池のリサイクルがあります。

リチウムイオン電池の使用される主要な用途であるEV分野を中心に、効率的なリサイクルシステムが構築できれば、リチウム資源確保の課題は大きく改善される可能性があります。経済産業省や環境省などが2021年4月に掲げた「マテリアル革新力強化戦略」においても、リチウムイオン電池のリサイクル体制構築の検討推進が進められており、その進展に期待したいところです。

次回は、ページビュー第7位の酸化チタンについて取り上げる予定です。

猪股 勲(Isao Inomata)/ SCE・Net

東京大学工業化学修士課程修了。三菱ケミカル(株)で、石油化学関連の技術開発・事業開発、企画業務に従事。その後、日本バイオプラスチック協会に奉職。石油化学全般、バイオプラスチック、プラスチック廃棄物管理、気候変動などの環境問題に広く精通。2015年よりSCE・Net所属。ITIコンサルタント事務所チーフコンサルタント。

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