純度により半導体から接着剤まで用途多様―けい素(シリコン)【市況PV上位の化学品をチェック! 第2回】
2024/09/10目次
本連載で扱う項目
- 第1回 全体概要
- 第2回 けい素(シリコン)→ 市況
- 第3回 リン酸 → 市況
- 第4回 メタノール・エタノール → 市況・市況
- 第5回 カーボンブラック → 市況
- 第6回 炭酸リチウム → 市況
- 第7回 酸化チタン → 市況
- 第8回 尿素 → 市況
シリーズ「市況PV上位の化学品をチェック!」をお届けしています。今回からは、Chematels市況情報の化学品カテゴリーでページビュー(PV)の多かった品目ごとに、その化学品の概要や市況の背景などを解説していきます。2023年のページビュー第1位だったのが、「けい素(シリコン)」です。半導体や太陽電池パネルの材料としてよく知られますが、じつのところ大半はこれら以外の用途で使われています。
「9」の数で表される純度により分類される
「けい素」ともよばれる「シリコン」は、地球地殻における質量の存在比で酸素に次ぐ2番目の豊富な元素です。地球地殻のほぼ30%はシリコンに起因するといわれています。
製法については、石英などのシリカ鉱石と冶金用石炭などを粉砕し、水中電気アーク炉で1900℃以上で還元製錬することにより、純度99%超のシリコンが製造されます。
世界では300万トンほど生産されていますが、製法が大がかりでエネルギーコストが高いことから、日本では1982年以降、製錬メーカーが完全撤退しました。現在は、後述する比較的純度の低い金属シリコンを全量輸入しており、そのうち70%以上が中国からです。
2023年のシリコンの輸入量は、17万トン。内訳は、99.99%(4N)以上の高純度単結晶シリコン*1が1400トン、高純度多結晶シリコン*2は1万4000トン、4N未満のその他(金属グレードシリコン)*3が15万8000トンです。
ちなみに2000年の各種シリコン輸入量をそれぞれ100%とすると、2023年は高純度単結晶シリコンが116%、高純度多結晶シリコンが286%、4N未満のその他(金属グレードシリコン)が81%となります。全体では2000年比85%です。
Chematelsの市況情報にある「けい素(シリコン)」の輸入価格データは金属グレードシリコンの輸入統計から行われていますが、これら3種類の輸入通関データを見ると、この20年間で、国内シリコンウエハーの需要増や太陽光発電分野からの引き合い拡大があった一方、国内アルミ合金市場は縮小気味といった市場の状況がうかがえます。

図1:シリコン(ケイ素)の輸入CIF価格の推移。Chematels市況情報のデータより。CIF(Cost Insurance and Freight)は運賃保険料込み条件のこと
(出所:財務省貿易統計の統計品別表)
半導体、太陽電池、金属…グレードにより異なる製造法
製品として流通するシリコンとしては、純度の高い順に、次の三つに分かれます。
・1. 半導体グレードシリコン(SEG-Si:SEmiconductor-Grade Silocon)
・2. 多結晶シリコン(poly-Si/mc-Si:polycrystalline Silicon/multicrystalline Silicon)
・3. 金属グレードシリコン(MG-Si:Metallurgical-Grade Silicon)
半導体グレードシリコン(SEG-Si)は、半導体素子用の超高純度シリコン(純度11N以上)を原料に、さらにフローティングゾーン(FZ:Floating Zone)法や、チョクラルスキー(Cz:Czochralski)法などの単結晶成長法による析出工程を経ることで製造されます。基本的に、転移と呼ばれる結晶欠陥のない単結晶シリコンとなります。インゴットとよばれる金属塊として作られたものを切断し、半導体素子向けのウエハ形状にします。

図2:シリコンのインゴットとウエハ
多結晶シリコン(poly-Si/mc-Si)は、金属シリコンと塩酸を高温で反応させたトリクロロシラン(SiHCl3)を蒸留生成して不純物を除き、高温で水素と反応・熱分解させることで高純度(7N以上)の多結晶シリコンを得るシーメンス法で作られていました。ただし、太陽光発電に使われる太陽電池グレード用は主に、石英るつぼの中で原料のシリコンを融解し、結晶を成長させるキャスト法で製造されています。
金属グレードシリコン(MG-Si)は純度レベルが約98~99%で、主にアルミニウム鋳造の合金化剤に使用されます。アルミニウム-シリコン合金は軽量で高強度であり、エンジンブロックやタイヤリムなどの自動車部品に使われています。さらに金属グレードシリコンのほぼ半分は、増粘剤および乾燥剤向けのヒュームドシリカ、カップリング剤向けのシラン、およびシーラント剤、接着剤、潤滑剤向けのシリコーンの各種原料として使用されています。
自動車用途などで需要拡大、国際戦略物資としても注目
シリコンの需要は世界で290万トン近くあり、今後も年率5%を超える伸びが見込まれています。
市場拡大の主要因はアルミニウム-シリコン合金の需要増加にあります。特に自動車用途での需要は高く、電気自動車をはじめとする世界的な自動車生産台数の増加の中で、軽量・高強度の合金を用いた燃費向上が目指されています。
また、シリコーンや、ウレタンフォーム、シーラント、接着剤、潤滑剤、食品添加物、コーティング、化粧品などの化学工業分野の用途でも確実な需要増が見込まれています。
他に、再生可能エネルギーの普及に伴い、シリコン系太陽電池向けのシリコンの需要増加も確実に見込まれています。専用の太陽電池グレードシリコン(SOG-Si:SOlar-Grade Silicon)のコスト削減に向けた取り組みも活発です。
また、量的寄与度は低いながら、半導体グレードシリコン(SEG-Si)の今後の動向も、半導体が国際戦略物資であるだけに、注視しつづけることが肝心です。
Chematelsの市況情報の中でもシリコンへの注目度が高いのは、こうした多面的な視点から関心を引く重要な品目だからなのでしょう。「けい素(シリコン)」の市況情報はこちらです。
次回は、ページビュー第2位の「リン酸」を取り上げる予定です。
【注釈】
*1:99.99%(4N)以上の高純度単結晶シリコン
「商品の名称及び分類についての統一システム(Harmonized Commodity Description and Coding System)に関する国際条約」に基づいて定められた「HSコード」が割り当てられており、99.99%(4N)以上の高純度単結晶シリコンのHSコードは280461100。
*2:高純度多結晶シリコン
HSコードは280461200。
*3:4N未満のその他(金属グレードシリコン)
HSコードは280469000。
猪股 勲(Isao Inomata)/ SCE・Net
東京大学工業化学修士課程修了。三菱ケミカル(株)で、石油化学関連の技術開発・事業開発、企画業務に従事。その後、日本バイオプラスチック協会に奉職。石油化学全般、バイオプラスチック、プラスチック廃棄物管理、気候変動などの環境問題に広く精通。2015年よりSCE・Net所属。ITIコンサルタント事務所チーフコンサルタント。
