タイヤやゴム、顔料にも構造で用途対応―カーボンブラック【市況PV上位の化学品をチェック! 第5回】
2024/10/31目次
本連載で扱う項目
- 第1回 全体概要
- 第2回 けい素(シリコン)→ 市況
- 第3回 リン酸 → 市況
- 第4回 メタノール・エタノール → 市況・市況
- 第5回 カーボンブラック → 市況
- 第6回 炭酸リチウム → 市況
- 第7回 酸化チタン → 市況
- 第8回 尿素 → 市況
Chematels市況情報の化学品カテゴリーで、2023年のページビュー第5位がカーボンブラックでした。カーボンブラックは、工業的な品質管理のもとで製造される直径3nm〜500nm程度の無定形の炭素微粒子です。昔から墨の原料として伝統的製法で作られるすすも、カーボンブラックの一種です。
表面性状を変えることで性質が変化

図1:カーボンブラック
カーボンブラックの粒子の表面にはいろいろな官能基が残っており、粒の大きさ、ストラクチャーと呼ばれる粒子のつながり方、表面性状を変えることで大きく性質が変わります。これらにより、黒色度や塗料との親和性を変化させたり、導電性を持たせたりすることが可能です。
一般的な作り方は、コークス製造時に副生するクレオソート油、石油精製などで副生する重質芳香族系油などを不完全燃焼させるか、アセチレンなどの炭化水素を熱分解して得ます。
ファーネスブラックをはじめ、製法による分類あり
カーボンブラックは製法により特徴が大きく変わります。製法の名で特定されることも多いので紹介しておきます。
「ファーネスブラック」は、油やガスを高温ガス中で不完全燃焼させて製造するカーボンブラックです。「ファーネス」は、この不完全燃焼を行う反応炉を指します。粒子径やストラクチャーを制御しやすい点が特長です。大量生産に向いており、通常カーボンブラックとして流通している大部分はこのファーネスブラックです。
「チャンネルブラック」は、天然ガスを燃焼させ、チャンネル鋼に析出させたものを掻き集めて製造する、非常に微粒なカーボンブラックです。「ガスブラック」とも呼ばれます。
「アセチレンブラック」は、アセチレンガスを熱分解して作るカーボンブラックです。導電性が高く、不純物の少ない点も特長で、電気・電子関連製品の材料に使われます。
「サーマルブラック」は、蓄熱した炉の中でガスの燃焼と分解を繰り返して製造する粗粒子のカーボンブラックです。
用途の約7割は自動車タイヤ向け
カーボンブラックは、粒子表面の性質を制御することにより、ゴムとなじむ性質を持たせられることから、ゴム製品の補強材として使われます。この用途で全体の90%を超えています。なかでも車のタイヤの用途は多く、カーボンブラックの需要全体の70%近くを占めています。

図2:日本のカーボンブラック用途別需要(2023年)
(出所:カーボンブラック協会「2024年(R6)カーボンブラック需要見直し」を元に編集部作成)
タイヤ以外の用途は、ベルト、ゴムシート、緩衝材・防舷材、機械部品などのゴム製品の補強材、電線被覆材、導電性付与剤、磁気記録媒体添加剤、化粧品添加材、塗料、印刷インキ、墨汁、着色顔料、静電コピー機のトナー、食品着色料など広範囲です。
顔料としては、黒い色を利用した黒色顔料として使われ、「カラー用カーボン」と総称されます。使用量としては少ないものの、その優れた特性からさまざまな用途に使われる貴重な副資材です。カラーインデックス名は「Pigment Black 7」で、塗料や印刷インキなどに使われる他、導電性や、紫外線吸収機能などを持たせることで、電子・電気材料向けの用途もあります。
輸入は国内需要全体の17%、価格高騰が続く

図3:カーボンブラックの輸入CIF価格の推移。単位は円/kg。Chematels市況情報のデータより。CIF(Cost Insurance and Freight)は運賃保険料込み条件のこと
日本のカーボンブラック工業会が2024年8月に発表した「2024年(R6)カーボンブラック需要年央見直し」によると、2023年の総需要は、67万トン弱で、そのうち約17%の11万トンが海外から輸入されています。2000年以降、タイ、韓国、中国の3カ国が輸入量の8割以上を占めています。
市況としては、2021年の後半以降、価格水準が上がっていることに注意が必要です。
次回は、ページビュー第5位の「炭酸リチウム」を取り上げる予定です。
猪股 勲(Isao Inomata)/ SCE・Net
東京大学工業化学修士課程修了。三菱ケミカル(株)で、石油化学関連の技術開発・事業開発、企画業務に従事。その後、日本バイオプラスチック協会に奉職。石油化学全般、バイオプラスチック、プラスチック廃棄物管理、気候変動などの環境問題に広く精通。2015年よりSCE・Net所属。ITIコンサルタント事務所チーフコンサルタント。
