道路や駐車場に太陽光パネル! カーボンニュートラルに貢献 東亜道路工業【気になる「あの企業ニュース」を追いかけろ! 第5回】

2022/12/06
【気になる「あの企業ニュース」を追いかけろ!】第5回 道路や駐車場に太陽光パネル! カーボンニュートラルに貢献 東亜道路工業

デスク:寒くなって暖房を使い始めましたが、電気代やガス代がかさみそうで心配です。

編集長:次々に値上げしているしね。

デスク:エネルギーの心配事は尽きませんね。いまも発電の多くを化石燃料に依存している日本では特に、エネルギーがいつまで安定に使えるのか不安になってきます。

編集長:確かに。太陽光発電とか再生可能エネルギーをもっと普及させなければいけないかもね。

デスク:そうはいっても狭い日本では海外みたいに大規模な発電ができるメガソーラーをそうたくさんはつくれないでしょうし…。

編集長:そういえば以前、道路を有効活用できる次世代の太陽光発電システムについて伝える記事を見掛けたなあ。えっと、これこれ。道路などの路面に太陽光パネルを張り付けて発電するWattway(ワットウェイ)というシステムだ。東亜道路工業がフランスのコラス (Colas)という会社などと協力して普及を進めているようだよ。

デスク:こんな取り組みがあるとは。さっそく、特派員に取材してもらいましょう。

道路は多くの時間「空の空間」

温室効果ガス排出の実質ゼロをめざす「2050年カーボンニュートラル宣言」が政府から打ち出され、再生可能エネルギーへの注目がいっそう高まっています。中でも日本では太陽光エネルギーが多く導入されており、各地で太陽光発電パネルがよく見られるようになりました。

とはいえ設置場所には限りがあります。この課題に対して、道路や駐車場などの路面に直接張り付ける太陽光発電舗装システム「ワットウェイ」が開発されました。人や車両が行きかう道路や周辺の駐車場などは至るところにありますが、多くの時間は何にも使われていない「空の空間」です。この場所で発電ができれば、限られた国土を有効に活用することができます。

図1:路面に設置された太陽光発電舗装システム「ワットウェイ」。フランスにて ⁠(写真提供:コラス/協力:東亜道路工業)

図1:路面に設置された太陽光発電舗装システム「ワットウェイ」。フランスにて
⁠(写真提供:コラス/協力:東亜道路工業)

ワットウェイは、フランスのコラス社と国立太陽エネルギー研究所が共同で開発したもので、現在は世界各国で実証試験が行われています。日本では2017年から実証検証が開始され、2021年7月から東亜道路工業がコラス社と技術協力を進めており、国内での普及を目指しています。

道路の舗装技術を生かす

道路の表面は、耐久性を高めて通行しやすくするためにアスファルトなどで舗装されています。ワットウェイはその舗装の一環として路面に太陽光発電パネルを張り付けるシステムで、大規模な工事を必要としません。太陽光発電パネルの厚さはわずか6ミリメートル。1枚の設置面積は0.86平方メートルで、畳半畳ほどの大きさです。

パネルは車の通行が可能な程耐久性の高い素材でできており、表面には滑り止めの凹凸があります。舗装システムというだけあって、屋根などに設置する従来の太陽光発電パネルとはずいぶん異なり、周りの美観を損ねないようなデザインになっています。

図2:ワットウェイのパネルの寸法 ⁠(画像提供:コラス・東亜道路工業)

図2:ワットウェイのパネルの寸法
⁠(画像提供:コラス・東亜道路工業)

「本社ビルの前に3枚設置してあり、電力を夜間照明に使っています。当社を訪れても、太陽光発電パネルがあると気づく人はほとんどいないですね」と話すのは、東亜道路工業建設事業本部企画開発部部長の新田浩さんです。

図3:本社入り口にある太陽光パネル。電力は夜間照明に使われる ⁠(写真提供:東亜道路工業)

図3:本社入り口にある太陽光パネル。電力は夜間照明に使われる
⁠(写真提供:東亜道路工業)

同社は、道路建設や舗装をメインに舗装材料の開発や販売、遊歩道の舗装、陸上競技場などスポーツ施設の施工といった幅広い事業を行っています。同社の歴史は貿易業で日本にアスファルト舗装用の乳剤を国内で初めて輸入し、紹介したのを端緒としており、以来、道路の舗装と深く関わってきました。

「道路設備を事業とする企業は大手建設会社などの親会社をもつところが多いのですが、当社は独立系の企業です。親会社に頼ることなく、手探りで関連事業を切り開いてきた経緯があります。環境への関心の高まりから始めたワットウェイの事業もその一つなのです」と新田さんは話します。「自由な発想が受け入れられやすい会社なので、新しいことにチャレンジできます。その一環としてワットウェイの普及に力を入れています」と同社の征矢有梨佳さんも続けます。

フランスなど欧州では、すでにワットウェイは歩道や自転車道、駐車場などに設置され、稼働しています。路面に直接張り付けることから暴風時でも壊れにくいという特徴があります。ただし、高温多湿な日本では欧州と同じ条件で設置しても耐久性などに問題が生じるおそれはあります。そこで同社は、日本向けに設置するための舗装材や舗装技術などを開発しています。従来の塗装技術をもとに、最適な接着方法や設置条件を検討し、日本での耐久性や安全性を実証するための試験を進めています。

まずは駐車場、国内実用化の第一歩を踏み出した

東亜道路工業はコラス・ジャパン株式会社と共同で2022年6月、ワットウェイシステムの国内第一弾となる太陽光発電パネルと蓄電池をセットした小規模な電源システム「ワットウェイ・パック」を発売しました。発電した電力を蓄電し、独立した電源として利用できるようにシステム化したものです。

発電パネルで発電した電力は、路面に埋め込んである配線を通じて電気キャビネットに集められます。発電パネル1枚当たりの発電量は最大125ワット。照明や電動自転車の充電などに独立した電源として利用できます。

「すでにある舗装のまま路面に簡単に設置できることや、土地を有効活用できることから、環境に関心のある企業からの問い合わせも多くいただきました。ただし、コストがかかるので、現状では躊躇される場合も多くあります。半導体不足や円安などの影響がコスト高の追い打ちをかけますが、価格以上の価値があることを伝えていきたいですね」と新田さんは力を込めます。

駐輪場に設置して電動自転車や電動キックボードの充電に活用する、学校の校庭に設置して災害時の避難所として使われるときに活用する、あるいは環境教育に生かすなどの活用法が提案されています。他にもさまざまな使い方があるのではないかと新田さんたちは模索しています。

図4:ワットウェイ・パック利用の提案 ⁠(画像提供:コラス・東亜道路工業)

図4:ワットウェイ・パック利用の提案
⁠(画像提供:コラス・東亜道路工業)

日本での普及に向け第一歩を踏み出したワットウェイですが、現時点で設置できる場所は歩道・駐車場のみ。一般道路に設置することは法律で認められていません。同社は一般道路への設置をめざし、トラックのような大型車両が通行しても問題ないかどうかなどの実証実験を埼玉県川越市の工場で行っています。

図5:大型ダンプによる走行試験 ⁠(写真提供:東亜道路工業)

図5:大型ダンプによる走行試験
⁠(写真提供:東亜道路工業)

環境を保ちながらの太陽光普及を目指す

再生可能エネルギーを活用するために太陽光発電設備の設置がさかんになる一方で、太陽光パネルを設置するスペースを確保するために森林を伐採するケースが少なくありません。周囲の環境を乱したり、自然災害のリスクを高めたりする負の側面が指摘されています。

「森林を伐採して、太陽光パネルを取り付けるのは心が痛みます。いまある環境と共存しながらカーボンニュートラルを実現していきたいですね」と新田さん。ワットウェイを通じた環境保全への貢献が続いていきます。

佐藤 成美(さとうなるみ)

サイエンスライター、明治学院大学非常勤講師(生物学)。東京大学大学院農学生命科学研究科修了(農学博士)。食品会社の研究員、大学の研究員、教員などを経て現在に至る。科学の幅広い分野について一般向けの記事のほか、研究所の広報誌やサイトなどにも原稿を執筆している。著書に『本当に役立つ栄養学』『「おいしさ」の科学』(以上、講談社ブルーバックス)『お酒の科学』(日刊工業新聞社)など多数。

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