副生物をアップサイクル! 大豆ホエイから土壌汚染浄化促進剤 不二製油【気になる「あの企業ニュース」を追いかけろ! 第2回】

2022/11/08
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編集長:廃棄物を価値あるものにアップグレードさせることを「アップサイクル」というよね。コストをかけて廃棄するしかなかった副生物をアップサイクルできたら、環境面でも、コスト面で良いこと尽くめだな。

デスク:そんな都合の良いアップサイクルは、そう簡単にはできないでしょう。

編集長:でも、大豆タンパク製造過程で上澄み液として出る副生物の大豆ホエイから土壌汚染浄化促進剤をつくってアップサイクルしたことを伝える「不二製油、大豆加工副生物で土壌汚染浄化剤 3~4割安く」という新聞記事を見たことがある。その後どうなったかな。

デスク:アップサイクルで、従来品よりも安くですか。これは製造者と利用者がウィンウィンになりそうなアップサイクルですね。特派員に取材報告してもらいましょう。

家畜の餌になっていた大豆ホエイをアップサイクル

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図1:ソイビオMA
⁠(写真提供:不二製油)

不二製油が製造する「ソイビオMA」は、脱脂大豆から大豆プロテインを製造する際に副生する「大豆ホエイ」を濃縮した浄化促進剤です。テトラクロロエチレンなどの塩素系の揮発性有機化合物(VOC)を無害なエチレンに分解する微生物を活性化します。

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図2:ソイビオMAの揮発性有機化合物(VOC)浄化効果。VOC分解性の嫌気性微生物が活性化することでVOCが分解される。現場でのVOCの浄化時間は約5カ月で、浄化効果は約2カ月間持続した
⁠(画像提供:鴻池組)

また、油分を分解する微生物が働きやすくなるように環境を整える働きもあるため、油分の分解・無害化も促進します。

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図3:ソイビオMAの油臭低減効果。全石油系炭化水素(TPH) 数千mg/kgの灯油汚染土壌に、栄養塩に加えソイビオMAを供給したケースにおいて、処理前に油臭3だった状態が8週間で油臭1(一般的に用いられる浄化目標値)を達成した。添加剤なしの場合は16週間を要した
⁠(画像提供:鴻池組)

つまり、ソイビオMAは、微生物がもつ化学物質分解能力を利用して、土壌や地下水などの汚染浄化をするバイオレメディエーションのための促進剤といえます。

もともと、大豆ホエイは家畜の餌として利用されていました。さらに付加価値の高い製品へのアップサイクルは長年の課題でした。不二製油グループ本社PBF事業部門副部門長の芦田茂氏は、「ある学会に出していたブースでの鴻池組との出会いがソイビオMA開発のきっかけとなりました」と振り返ります。

共同研究が始まり、実験室や施工現場での実証実験を重ねて、2021年10月にソイビオMAを上市しました。昭栄薬品が販売しています。

使用する際に、ソイビオMAを中和してから現場の状況に応じて希釈し、土壌中や地下水に図4左のような原位置浄化法と呼ばれる方法で注入します。図4右のように掘削した汚染土壌に地上でソイビオMAを添加し、攪拌して分解処理を行うランドファーミング法もありますが、現在までの使用例のほとんどは、地盤へ注入する原位置浄化法で使われています。

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図4 ソイビオMAの使用方法の例
⁠(画像提供:鴻池組)

「大豆ホエイは家畜の飼料になるほど栄養豊富なので、そのままでは腐敗してしまいます。これに対してソイビオMAでは、酸性に調整しているため常温での保存が可能です。大豆ホエイは副生物なので、ソイビオMAを一定の品質にするために工夫が必要でしたが、検討の結果、安定した品質での提供が可能になりました」と芦田氏は説明します。

強みはコストと安全性

大豆ホエイはソーセージなどの加工食品やプロテイン飲料など、食品として利用する大豆プロテインを製造する工程で出る副生物です。その大豆ホエイを加工しているので、ソイビオMAの安全性はお墨付きです。また、副生物を原料にしているので、従来用いられてきたバイオ浄化剤と比べて安価です。

芦田氏は「土壌汚染浄化促進剤を新しいものに切り替えるのはなかなか難しいようです。実績のあるものを使った方が安心なのでしょう。しかし、ソイビオMAを一度お使いいただくと、他の現場でその後もご利用いただく場合が多くあります。効果を感じていただけているのだと思います」と胸を張ります。

実証実験を含めて、最初の現場適用から7年以上が経過しています。施工件数は、公共施設、工場、その他を合わせて10件以上にのぼります。

「今度は自分があのアップサイクルを」の熱意

不二製油にはアップサイクルの成功例があります。それは、大豆タンパクを製造する際に副生物として出るおからの高度利用です。当時おからは、一部が家畜の飼料に使われる以外は、ほとんどが廃棄されていましたが、不二製油はおからから水溶性の大豆多糖類を抽出することに成功しました。

こうして「ソヤファイブ-S」という製品が生まれました。コンビニエンスストアで売られる麺類やご飯粒がくっついてしまったり、ご飯が調理中に炊飯釜をはじめとする調理器具に付着したりするのを防ぐための食品添加物として、またドリンクヨーグルト等の酸性乳飲料に含まれるタンパク質の沈殿抑制や、メレンゲなどの気泡安定化剤などとして、ソヤファイブ-Sは広く利用されています。

芦田氏も「ソヤファイブ-Sに続くアップサイクルとしてソイビオMAを上市できて嬉しい」と言います。

「大豆ホエイ×微生物」で新たな用途の開拓へ

芦田氏はソイビオMAの成功に満足することなく、大豆ホエイの新たな使い道を検討しています。「ソイビオMAのように大豆ホエイが微生物の働きを促進するという機構に大きな可能性を感じています」

ウシの餌であるワラにさらに餌として大豆ホエイをふりかけると、ワラについた微生物がワラを発酵させる手助けをし、食餌性が上がるという一面がありました。ここでも大豆ホエイと微生物の組み合わせが高機能化をもたらしています。

農林水産省は「みどりの食料システム戦略」を打ち出し、2022年7月「みどりの食料システム法」を施行しました。化学農薬や化学肥料の使用量を減らすなど、環境への負荷を低減した持続可能な農林水産業を促進するための指針です。

土壌中の微生物が本来持つ自然な力を活用する「バイオスティミュラント(生物刺激剤)」に大豆ホエイが役立つのではないかと芦田氏は着目しています。

村上 華子(むらかみ はなこ)

早稲田大学大学院応用化学修了、社会人経験後、早稲田大学大学院科学技術ジャーナリスト養成プログラムを修了。LION株式会社の技術ジャーナル、NEDO実用化ドキュメント、計算基礎科学連携拠点の月刊JICFuSなどで研究紹介取材記事を執筆。工学・化学・計算科学・生物学を中心に執筆。

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