カーボンニュートラルへ! CO2からメタンを合成するメタネーションの歩み 日立造船【気になる「あの企業ニュース」を追いかけろ! 第4回】

2022/11/24
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編集長:カーボンニュートラルのためのアクションプランという話をよく耳にするね。二酸化炭素の排出量を削減をするために「メタネーション」という対策がとられているらしい。

デスク:二酸化炭素と水素からメタンを作るという技術ですね。メタンは都市ガスの主成分ですから、二酸化炭素からエネルギーを生み出せるということなのでしょうか。

編集長:そういえば、小田原市の「環境事業センター(清掃工場)」で、メタネーションの実証実験が行われたというという新聞記事を見たことがある。最近、テレビでもメタネーションの特集を見たし……。

デスク:注目されている技術なのですね。特派員を送り込んで、報告してもらいましょう。

水素と二酸化炭素からメタンを合成

メタネーションは、二酸化炭素(CO2)と水素(H2)からメタン(CH4)を合成する技術のことです。そこで起こる反応を化学反応式で表すと次のようになります。

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つまりメタネーションは、二酸化炭素(CO2)に含まれるカーボン(C)を有用なエネルギー源であるメタン(CH4)に作りかえるカーボンリサイクル技術の一つといえます。

2020年10月に当時の菅義偉政権が「2050年カーボンニュートラル」を宣言しました。2050年までに二酸化炭素をはじめとする温室効果ガスの排出を実質ゼロにすることを目指すという宣言です。これと合わせて「グリーン成長戦略」も策定しました。グリーン成長戦略は、温暖化への対策を積極的に行うことが産業構造や社会経済の変革をもたらし、成長へとつながるという考え方に基づいた戦略です。「経済と環境の好循環」をつくることをうたった産業政策といえます。

政府はグリーン成長戦略の中で、成長が期待される14の重点分野を選定しました。その一つとして「次世代熱エネルギー産業」を選び、「2050年に都市ガスをカーボンニュートラル化する」という取り組みとともに、「合成メタンの安価な供給を実現する」つまりメタネーションで合成したメタンを利活用するという取り組みを掲げているのです。

そして、2030年には既存のインフラストラクチャーに合成メタンを1%注入し、2050年には90%注入するという具体的な数値を含むロードマップを描いています。その実現のためにも、安価な合成メタンの供給を実現する高効率化されたメタネーションが求められているのです。

メタネーションの実証実験に成功

メタネーションの研究開発に取り組んでいる企業の一つが日立造船です。脱炭素化事業本部 電解・PtG(Power to Gas)ビジネスユニット 技術部 PtGグループ長の泉屋宏一氏は、20年以上にわたりメタネーションに携わってきました。

「日立造船という社名ですが、現在は造船はしていません。ごみ焼却発電、水処理、バイオマス事業などの環境事業は当社の主力事業です。メタネーションの他に、再生可能エネルギー電力を利用して水を電気分解してグリーン水素を作る技術も開発しています」

水素はメタンに比べて高価なため、メタネーションの研究を始めたころは「高いものから安いものを作って、何になるんだ」とよく言われたそうです。「いまは国からの補助金も受けて、研究を進めています。ここ2、3年の動きは大きいですね。これほど世の中が脱炭素化に進むとは、当初は予想できませんでした」

日立造船はメタネーションのプロセス開発およびスケールアップを実現していきました。

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図1:日立造船のメタネーションの取り組み。1995年に開始し、徐々にスケールアップしていった。単位のNm3/hは常温常圧での1時間当たりのメタン生成体積
⁠(画像提供:日立造船)

日立造船の強みといえるのがメタネーションに使う触媒です。常温常圧でメタネーションの反応が進む高寿命の触媒を独自に開発しています。この触媒により、それまで高温高圧が必要だった反応を常温常圧で進められるようになり、高効率にメタンを製造することに成功しています。

2022年にはエックス都市研究所と共同で、神奈川県小田原市にある清掃工場の排気ガスから二酸化炭素を分離し、水素と反応させてメタンを合成する実証実験をしました。実験は成功し、1時間当たり125Nm3の合成メタンを生成することができました。これは、2500~3000世帯分のガス使用量に匹敵します。

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図2:清掃工場でのメタネーション実証実験。二酸化炭素の資源化が実証され、現在は施設を解体中。二酸化炭素回収装置はエアウォーター社製
⁠(画像提供:日立造船)

日立造船では、0.1 Nm3/hの小型の試験装置や、12.5 Nm3/h、 125 Nm3/hの大型のメタネーション装置も製品化しています。小型の試験装置に対しては、「二酸化炭素排出量をなんとかしたい」と考える企業からの問い合わせが多いそう。

触媒の寿命は、2万時間にわたり使用しても性能が劣化しないことを確認しています。ただし、二酸化炭素の中にさまざまな不純物が含まれているため、実際の装置でテストしてみたいという客は多いそうです。

利用した客からは「触媒の性能が良い」「装置は思ったよりもコンパクトだ」といった感想が寄せられるそうです。

水素社会を手助けするというもう一つの役割

泉屋氏は、メタネーションには、二酸化炭素を資源化する役割にとどまらず、「再エネおよび水素の社会実装を手助けする役割がある」と強調します。化石燃料の代わりに二酸化炭素を排出しない水素エネルギーを活用するのも、カーボンニュートラル実現の方策の一つです。

発電量が天候に左右される再生可能エネルギーでは、余剰電力の発生が課題の一つとなっています。“電気は生もの”といわれるように、余剰電力を貯めておくには方策が必要になります。

そこで、余剰電力で水を電気分解して、水素エネルギーにするという余剰電力の活用法がとられ始めています。水素は理論的には貯蔵が可能なため有効な手立てになりそうですが、水素を貯蔵したり運搬したりするインフラの整備はこれからのため、いまはまだ社会で利用しにくい状況です。

一方で、水素を二酸化炭素と反応させてメタンにしてしまえば、都市ガスのインフラを使うことができます。社会でいますぐにでも活用できるのです。

「都市ガスのインフラが整備されるのに50年を要したそうです。いまのところは水素をメタンに変えて利用しながら、水素社会に向けた技術開発やインフラ整備をしていけば良いのではないでしょうか。水素社会とメタネーションの技術は、敵対するものではなく、助け合っていくのだと思います」と泉屋氏は話します。日立造船では、再生可能エネルギーを利用して水を電気分解して水素をつくる「グリーン水素」製造装置の開発も手がけています。

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図3:日立造船が提唱するカーボンリサイクル
⁠(画像提供:日立造船)

あの手この手でメタネーション普及へ

メタネーションによる合成メタンは、天然ガスと同程度にならないと本格的な普及が見込めません。合成メタンのコストを引き上げてしまう一番の要因は水素のコストにあります。水素社会の実現に向け、水素のコストを下げるための取り組みも活発に行われています。

経済産業省が主催するメタネーション推進官民協議会では、合成メタンの利用促進および社会実装実現に向けて議論しています。環境価値をどのように付与するか、二酸化炭素排出権にどのように反映させるかなどの議論を進めています。

「メタネーションだけが唯一の解決策だとは思いません。水素やメタンの他に合成アンモニアを作るという取り組みも進められています。日立造船のメタネーション装置では、二酸化炭素濃縮装置を付けるか、グリーン水素製造装置を付けるかなど、お客さまの要求に合わせた提供が可能です。まずはご相談していただければと思います」と泉屋氏は話します。

村上 華子(むらかみ はなこ)

早稲田大学大学院応用化学修了、社会人経験後、早稲田大学大学院科学技術ジャーナリスト養成プログラムを修了。LION株式会社の技術ジャーナル、NEDO実用化ドキュメント、計算基礎科学連携拠点の月刊JICFuSなどで研究紹介取材記事を執筆。工学・化学・計算科学・生物学を中心に執筆。

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