巨大蒸留塔を代替する「サブナノレベル」の膜技術! イーセップが挑む化学プラントの省エネ・小型化革命【スタートアップインタビュー#10】

2026/09/10

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化学・素材業界のイノベーションを追う連載「Chema Tech News」。今回は、分子レベルの精密制御技術により、化学プラントの大幅な省エネと小型化に挑むイーセップを取材しました。代表取締役の澤村健一氏に、創業の背景から核心技術「ナノセラミック分離膜」の優位性、そしてオープンイノベーションによって拓く産業の未来像について詳しくお話を伺いました。

創業の背景・ミッション:大企業では進まない事業化の壁。閉塞感を打破すべく研究者自らが起業の道へ

澤村氏は長年セラミック分離膜の研究に従事してきましたが、優れた技術でも実績がないと採用されない業界の壁に直面しました。この現状に危機感を抱き、自ら突破口を開くべく起業。ターゲットは、膨大なエネルギーを消費する既存の蒸留プロセスです。50年以上変わらない分離原理を根本から覆し、日本の化学産業の競争力を保つことが同社のミッションです。

技術・ソリューションの核心:0.1ナノ以下を制御する「サブナノテクノロジー」。異分野連携が生んだ量産化のブレイクスルー

同社の核心技術は、0.1ナノメートル以下のサブナノレベルで精密な孔径制御を実現した「ナノセラミック分離膜」です。この膜を用いれば、分子サイズの違いが極小の混合物でも、加熱することなく分子ふるいの原理で高精度に分離可能です。従来の蒸留塔をこの膜分離プロセスに代替することで、分離エネルギーを最大85%削減し、設備を約90%小型化するという圧倒的な優位性を誇ります。 一方で、精密な孔構造を保ちながら工業的な量産化を実現することは至難の業でした。同社は超高速自動製造技術を持つ日東精工との事業資本提携によりこの壁を克服。異分野の精密機械技術を融合して独自の量産機開発に成功し、他社の追随を許さない強力な参入障壁を築いています。

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図1 サブナノレベル(0.1nm以下)の精密な孔径制御を実現したナノセラミック分離膜

ビジネスモデルと成長戦略:量産・販売フェーズへ突入。オープンイノベーションで事業拡大を加速

同社は化学メーカー等の課題に応じ、分離膜やモジュールを開発・提供するソリューション事業を展開しています。概念実証(PoC)などを順調に完了し、現在は量産化・販売フェーズへと突入しました。有力VC等から累計10億円以上を調達し、量産設備の立ち上げを推進しています。 今後の事業拡大に向けた課題は、技術的優位性を「コスト削減」といった明確な経済メリットに落とし込み、属人的な営業から脱却して販売体制を仕組み化することです。そのため、自社での人材採用を進めると同時に、市場接点を持つ外部パートナーとの連携を強化し、顧客開拓と事業スケールを強力に加速させる構想です。

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図2 複数本のセラミック分離膜を組み込んだ産業用分離膜モジュール

ビジョンと展望:化学プラントの小型化と資源自立。アカデミアにも求められる「実業」の視点

中長期的には、分離膜の実機導入案件を数百社規模へと飛躍的に拡大させるビジョンを描いています。本技術が社会実装されれば、巨大集中型プラントから、現場で必要な分だけ処理するオンサイト・分散型プラントへの移行が進みます。これにより廃溶剤のオンサイト・リサイクルが可能となり、資源循環率が劇的に向上します。さらに、水素キャリアの分離や、CO2からメタノールを高効率に合成する膜反応器への応用開発も進んでおり、カーボンニュートラル実現に直結する取り組みです。 澤村氏は最後に、研究成果が経済価値を生み出し、現場に還元される循環の重要性を強調しました。研究者自身が「実業」の視点を持つことこそが、日本の基礎研究を永続させる鍵となります。

【基本情報】

1. 取材日:2026年7月30日
⁠2. 社名:イーセップ株式会社
⁠3. 事業内容:ナノセラミック分離膜技術の開発および関連機器・システムの提供
⁠4. 特徴:サブナノ(0.1nm以下)精度の孔径制御による分離膜で、化学プロセスの大幅な省エネ化を実現
⁠5. 代表者・創業者経歴:代表取締役 澤村健一氏。
⁠早稲田大学(応用化学専攻)にて分離膜技術に関する博士号(工学)取得後、大学助手を経て、大手エンジニアリング会社に入社。その後自身の専門技術であるナノ多孔性セラミック分離膜技術の社会実装を目指し、2013年にイーセップ株式会社を創業・設立。設立時から当社代表取締役として産学官連携のオープンイノベーション体制による技術開発と事業化を推進。
⁠6. 従業員数:39名
⁠7. 所在地:〒619-0238 京都府相楽郡精華町精華台七丁目5番地1 けいはんなオープンイノベーションセンター(KICK)
⁠8. 資金調達フェーズ:量産化・販売フェーズ(累計調達額10億円以上)
⁠9. 主な株主・VC: SBIインベストメント、HIRAC FUND、グローバル・ブレイン、京都iCAPなど

同社の詳細な事業内容および最新の取り組みについては、下記公式ウェブサイトをご参照ください。

https://esep.kyoto/

Chematels編集部

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