不純物を分子レベルで除去するJEPLANの革新技術――水平リサイクルが生む「資源自立」という日本の新たな選択肢【スタートアップインタビュー#1】
2026/04/13化学・素材業界のイノベーションを追う新連載「Chema Tech News(ケマテックニュース)」。記念すべき初回は、独自のPETケミカルリサイクル技術でペットボトルの「水平リサイクル」を商用化した、株式会社JEPLANを取材しました。代表取締役 執行役員社長の髙尾正樹氏に、創業の経緯から技術の核心、そしてリサイクルが当たり前になる未来像について詳しくお話を伺いました。
創業の背景・ミッション:原点は「リサイクルを持続可能なビジネスにすること」―資源循環への挑戦
同社は2007年、「あらゆるものを循環させる」というミッションを掲げ、資本金120万円からスタートしました。創業の背景には、当時繊維商社でリサイクルビジネスを模索していた現会長・岩元美智彦氏との運命的な出会いがあります。当時大学院生だった髙尾社長は、岩元氏の情熱に打たれて大学院を中退し、共に歩む決断を下しました。
事業を推進する中で直面したのは、リサイクルのたびに品質が劣化し、最終的に焼却処分せざるを得ない「カスケードリサイクル」の限界でした。髙尾社長は、この現状を打破するためには、何度繰り返しても品質を落とさない「水平リサイクル」をビジネスとして成立させることが不可欠であると確信し、独自の技術開発へと舵を切りました。
技術・ソリューションの核心:分子レベルの不純物除去が実現する「バージン品質」
同社の技術的優位性は、使用済みPET製品を分子レベルにまで分解・精製する「ケミカルリサイクル」にあります。一般的なメカニカルリサイクルは、PETボトルを高温で溶かして異物を取り除きますが、リサイクルを繰り返すと添加剤や触媒などの不純物が蓄積し、品質が低下するという課題がありました。
対して同社のケミカルリサイクルは、化学的なプロセスによって不純物を完全に除去できるため、石油由来のバージン樹脂と同等の高品質な再生PET樹脂を製造可能です。髙尾社長は、市場全体の持続性を高めるためには、「メカニカルリサイクル」と、「ケミカルリサイクル」を最適に組み合わせるベストミックスが重要であると説きます。この二つのリサイクル手法を組み合わせることで、市場内の資源を永続的に循環させることが可能になります。

ケミカルリサイクル工程のサンプル
ビジネスモデルと成長戦略:商用化フェーズからさらなるスケールアップへ
現在、同社は既に「商用運転」のフェーズに到達しています。製造された高品質な再生樹脂は、国内大手飲料メーカーに採用され、ペットボトルからペットボトルへと再生する「ボトルtoボトル」を実現しています。また、原料確保においても全国約60の自治体と連携し、独自の回収ネットワークを構築している点が、技術力と並ぶ同社の強力な事業基盤となっています。

CO2の排出量削減に貢献(https://www.jeplan.co.jp/sustainability/#bottle)
今後の成長戦略の鍵を握るのは「オープンイノベーション」です。これまでに累計約140億円の資金を調達し、北九州の実証プラント等でプロセス改善を継続していますが、髙尾社長は「一社ですべてをやろうとは思っていない」と明言します。熱効率の向上や収率の改善など、特定の単位操作に強みを持つ素材メーカーやスタートアップに対し、自社プラントをテストフィールドとして提供する構想を持っています。パートナー企業の尖った技術と同社のプロセスを融合することで、プロセス全体のコスト削減と効率化を加速させ、さらなるスケールアップを目指しています。
ビジョンと展望:海外に資源を頼らない「資源自立」への道
現在、グループ会社であるペットリファインテクノロジーが運営する商用プラントの年産能力は約2.2万トンですが、国内のPET樹脂需要は年間約120万トンに上ります。この巨大な需要に応えるため、同社はさらなる規模拡大と導入しやすいコスト構造の実現を急いでいます。

ペットリファインテクノロジー㈱(神奈川県川崎市)
この技術が社会実装された先に髙尾社長が見据えるのは、石油を海外に依存しない「資源自立」した日本の姿です。これは環境保護の枠を超え、国際情勢に左右されない経済安全保障の確立や、外貨流出を防ぐ「国富」の維持にも直結します。
最後に、髙尾社長は次世代の研究者に対し、「技術を最も理解している研究者自身が、ステークホルダーにその価値を直接語る責任を持つべきだ」とのメッセージを寄せました。研究成果を論文に留めるだけでなく、実業の現場に「言葉」を持って飛び出し、社会に役立てる。その姿勢こそが、資源循環社会を現実のものにする原動力となるはずです。
【基本情報】
1. 取材日:2026年3月5日(木)
2. 社名:株式会社JEPLAN
3. 事業内容: PET ケミカルリサイクル技術関連事業(対象:PET ボトル・ポリエステル)など
4. ウリ:独自のPETケミカルリサイクル技術を活用し、世界でも商用化事例がほとんどない商用規模のケミカルリサイクルプラントを運営。なお、同プラントは10年以上にわたる安定した操業実績を有する。
5. 代表者・創業者:代表取締役 執行役員社長 髙尾正樹氏。
1980年生まれ。2000年東京工業大学工学部(化学工学)に入学し、卒業後の2004年に東京大学大学院に進学、技術経営を専攻。2007年に当社設立に伴い大学院を中途退学し、共同創業者として専務取締役に就任。2016年より現職に就き、パートナーとの資本提携や技術開発を主導。これまでに、廃棄衣料(綿繊維)からバイオエタノールを生産するリサイクル技術の開発に取り組むとともに、2014年からはPETケミカルリサイクル技術の開発に着手。2017年に操業を開始した北九州響灘工場の運営や、2018年に当社グループ会社となったペットリファインテクノロジーの工場再稼働を主導し、PETケミカルリサイクル技術を活用した商用プラントの安定操業を実現。国内外への技術ライセンス展開にも取り組む。
経済産業省 産業構造審議会イノベーション・環境分科会資源循環経済小委員会の委員を務める。
6. 従業員数:グループ含め約110名
7. 所在地:〒210-0867 神奈川県川崎市川崎区扇町12-2
8. 資金調達フェーズ:商用運転フェーズ。累計約140億円を調達。
池田 識人(いけだ しきと)
シーエムシー出版編集部(東京)。同社出版の雑誌『月刊ファインケミカル』編集を経て、現在は主にレポートの企画・編集業務に従事。ファインケミカル、新材料・新素材、エレクトロニクス、エネルギーなどの分野において、産業界で注目の旬なテーマを書籍化している。

