ロボットによる自動化技術で、もっとスマートな物流を――2021年度ロジスティクス大賞 ロボティクス・イノベーション賞 【受賞者に聞くプロジェクトの秘訣】

2022/07/26
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労働力人口の減少が社会問題として危惧される昨今、これまでは人の手でしかできなかったような複雑な作業についてもロボットへの期待が高まっています。そんな中、物流分野において画期的なロボティクス技術が株式会社Mujinによって社会に普及しつつあります。2021年度の「ロジスティクス大賞」(概要は末尾参照)で、「ロボティクス・イノベーション賞」が贈られたロボット自動化ソリューションが生み出された背景と、物流分野にもたらす価値について、広報担当の石原優月さんに話を伺いました。

ロボットによる物流の課題への挑戦

大きな貨物から小さな小包まで、日々大量の物資が社会のあちらこちらへと送り送られています。物流は、私たちの日常生活になくてはならない社会インフラといっても過言ではないでしょう。これまでは荷造りから荷解きまでの一連の流れでは、荷物の大きさ、個数、内容物、配送先などを配慮して動く人間の働きが大きな役割を果たしていました。

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しかし、現在の物流においては労働力の不足が大きな課題になっています。加えて各家庭への小口配送の爆発的な増加も大きな問題になっています。

そこで活躍が期待されているものが、ロボットです。

物流現場において現在ロボットによる自動化が行われている作業には、例えば入荷工程の箱を積みおろす「デパレタイズ」、出荷工程の個々の商品を箱詰めする「ピースピッキング」、箱をパレットやかご車などに積み込む「パレタイズ」があります。特に、大きさも重量もさまざまな段ボール箱を傷つけず効率よく積み込まねばならないパレタイズ作業は、これまでロボットには難しいとされてきました。

このパレタイズ作業が抱える課題への貢献が評価されて、2021年度ロジスティクス大賞「ロボティクスイノベーション賞」を受賞したのが、Mujinが開発した知能ロボット「MujinRobotパレタイザー」です。

人にしかできない作業をロボットで可能にする技術

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図1:技術が必要だが体力も必要な、パレタイズ作業
⁠(画像提供:Mujin)

パレタイズは一見すると単純な積み込み作業のように見えますが、担当する人は実にさまざまな配慮をしながら作業を進めなければなりません。効率的に積み込まなければ、かご車等の台数が増え、余計な配送料がかかる原因になります。また、段ボール箱の歪みを考慮したり、荷物の破損を防ぐために重い荷物を下に配置するなど考慮が必要です。さらには同じジャンルの荷物をできるだけ近くに積み込んだり、箱に貼られたラベルは外側を向くように配置したりと、店舗における品出しの効率も考えなければなりません。

作業を進めるには経験と勘を必要とする部分が多く、「今日はこの作業をやってください」と誰にでも簡単に指示できるような作業ではありません。

「倉庫に伺うと年配の方がパレタイズを担当されていることも多く、重い荷物の積み込みは大変負荷のかかる作業です。今回の受賞でパレタイズ作業の自動化を評価いただいたのは、このような社会的課題への貢献が大きいと思っています」と、石原さんは話します。

通常、産業用ロボットを動かすためには、行わせたい作業を人がプログラミングする「ティーチング」という工程が欠かせません。全体の動作を細かな要素に分解して正確に動くようプログラミングすることで、寸分の狂いない作業を可能にしていました。

しかし、これではパレタイズのような柔軟な判断を必要とする作業の自動化は非常に困難です。Mujinの開発する「知能ロボットコントローラ」は、これを既存の産業用ロボットに取り付けることで、ロボットを知能化し、ティーチングを必要とせずに、その場で考えて場面に応じて適切な動きを行えるようにします。

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図2:知能ロボット。既存のロボットを自動で動かすために「頭脳と手と目」を開発した
⁠(画像提供:Mujin)

社会普及のヒントは現場にあり!

2011年創業のMujinは、産業用ロボットを知能化する「知能ロボットコントローラ」を作ってきた企業です。状況に応じて臨機応変に動くことのできる知能ロボットを開発することで、これまで難しかった様々な工程の自動化を実現してきました。しかし、実際の現場で活用可能なレベルの知能ロボットを実現する過程は非常に険しいと石原さんは言います。

「当初はエンジニアが倉庫に連日連夜泊まり込んで開発をすることもありました。ロボットは現場できちんと動いてこそ価値があるものです。物流の現場では、段ボールが変形していたり、予期せぬ商品が混ざっていたり、開発環境では起こりえない状況が多く発生します。リアルな現場で起こるさまざまな問題に対して、現場でとことん向き合うことで解決していきます。それは時にとても地味な仕事ですが、現場で価値を出すことを第一に考えて開発にあたっています」

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図3:パレタイズを自動化する「MujinRobotパレタイザー」
⁠(写真提供:Mujin)

仕事へのこだわりは、徹底した現場主義だけではありません。社内のエンジニアのおよそ7割は外国籍で、しかもグーグルやアマゾンなどの世界的企業で働いていた人も少なくないと言います。“いままでできなかったことをロボットの力で可能にし、人々の生活をよりよいものにする”というミッションに共感して集まっているようです。

「『ネバー・ギブアップ、ネバー・サレンダー』という、決して諦めない精神を大切にしています。稼働前の倉庫など、過酷な環境での仕事を余儀なくされることもありますが、この仕事で世界が変えられるという信念と熱意を持って取り組んでいます」

もっと自由にロボットを使える世界を目指して

物流分野の自動化は、2020年以降続いている感染症への対策という観点においても注目されています。有事の際にも安定的な物流を担保するためにも、人が多く関わる物流の現場で人との接触機会を減らすためにも、ロボット技術はますます注目が高まっています。知能ロボットはすでに海外からの引き合いも多く、業務的には大変な状態が続いているようです。

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図4:物流倉庫で普及する知能ロボット
⁠(画像提供:Mujin)

ロボットが社会のあちこちで活躍するようになってきていますが、現状はまだ誰でも簡単で自由に使いこなせるようなものとはいえません。一昔前のコンピューターも使いこなすのに専門的な知識が必要でしたが、いまは誰でも簡単に扱うことができるようになりました。まさにいまはロボットがその段階にあると石原さんは考えます。

「一つの作業をさせるごとに難しい設定が必要な状態から、コントローラーをつなぐだけで後は自動で動作しますよという状態にできれば、ロボットはもっとたくさんの人に使ってもらえるようになります。すると、ロボットの価格自体も下がっていきます。ロボットを使いたい皆さんが、当たり前にロボットを使える世界を実現したいです」

ロジスティクス大賞とは

日本ロジスティクスシステム協会は、ロジスティクス推進に向けて優れた実績をあげた企業を表彰する「ロジスティクス大賞」を設けています。1984年に創設され、創造性・成果度・経営革新度・技術革新度・社会性・努力度の評価基準に従って行われる論文審査によって決められています。

賞のサイト:https://www1.logistics.or.jp/propulsion/prize.html

本田 隆行(ほんだ たかゆき)

科学コミュニケーター 神戸大学大学院 自然科学研究科 地球惑星科学専攻修了(理学修士) 。大学時代の専攻は地球惑星科学。大学院時代に探査機「はやぶさ」理学ミッションに携わる経験を持つ。その後、地方公務員事務職(枚方市役所)・国立科学館勤務を経て、国内でも稀有なフリーランスの科学コミュニケーターとして活動中。展示プランニングや科学実演の実施・監修、大学講師やイベントファシリテーター、サイエンスライティングなど様々な仕事をこなす。著書に「宇宙・天文で働く」(ぺりかん社)

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