【化学業界の基礎知識 -化学製品編-】第10回 苛性ソーダとは?
2022/02/10
連載の目次
Q1: 苛性ソーダの最も大きな用途分野は?
Q2: 苛性ソーダと同時に生産されるものは?
Q3: 苛性ソーダの取り扱いで最も気をつけるべきことは?
苛性ソーダは一般名で、化学名は「水酸化ナトリウム(NaOH)」で示される、代表的な強アルカリ化学製品です。その強いアルカリ性の性質を利用して、さまざまな酸と反応(中和)させたり、物質を溶解させたり、他の金属元素や化合物と反応させたり、さまざまな化学品や化学薬品を合成する反応の原料や、還元剤、反応条件の調整・処理など広範囲に使われています。また、日常生活になくてはならない上下水道の処理薬品、廃棄物や廃水の処理工場等に広く使われています。社会の進歩に比例して使用範囲・量ともに増加することから、社会進歩の程度を示す指標ともいわれる重要な無機化学製品です。
主な使用用途
化学工業
苛性ソーダが最も多く使われる分野は、石油化学工業をはじめとする化学工業の分野です。無機薬品分野を含めると、全体の約50%が化学工業分野に使われています。
苛性ソーダそのものが最終製品に直接含まれている例は多くありませんが、中間原料となる各種の化学製品・化学薬品の製造や、さまざまな産業分野における多くの最終製品の製造・処理等に必須の基礎素材として使われています。又、それらの製造過程で発生する廃棄物・廃水の処理にも大量の苛性ソーダが使われています。
無機薬品製造
苛性ソーダが原料として比較的大量に使われ、製品に含まれる分野として無機工業薬品があります。ケイ酸ソーダや亜硫酸ソーダ、ボウ硝(硫酸ナトリウム)、次亜塩素酸ソーダなどの製造原料になります。
洗剤産業
油脂と反応させる石けんの製造や、合成洗剤の製造に使用されています。
製紙工業
化学工業に次いで、大量に使われる分野は紙・パルプ分野で、10%前後が使用されています。主に、パルプ製造において、木材中のリグニン溶解のための蒸解工程で硫化ナトリウムとともに、チップの蒸解と漂白に使用されています。
アルミナ
ボーキサイトを溶解させ原料となる水酸化アルミニウムを作る際に使用されます。
化学繊維産業
レーヨンやキュプラの製造時に、パルプやコットンリンターに苛性ソーダを反応させて繊維化します。
その他
全体の中で占める個々の分野の使用量は大きくはありませんが、苛性ソーダは食品、鉄鋼、アルミ、非鉄金属、電気・電子、医薬・農薬、化学繊維、染色など、産業の全体の分野で使われています。
化学的処理分野
各種の製品製造の上で必要な化学的処理において、金属溶解、精製、不純物除去、漂白、中和、軟化等のための基礎素材として使われています。さらに、上下水道の管理や食品工業、公共施設などでの廃水処理など、非常に幅広い分野で使われています。
製造方法と生産量
工業的には食塩(塩化ナトリウム)のイオン交換と電気分解とを併用するイオン交換膜法によって製造されます。その結果、塩素と苛性ソーダは同時に生産されるため、その生産バランスに応じた、苛性ソーダと塩素の両方の消費需要が必要になります。
以前は、水銀法や隔膜法により生産されてきました。しかし、水俣病の被害発生を契機に水銀法は廃止されて、現在では全量がイオン交換膜法によって製造されています。
日本での生産量は、2020年の1年間で382万トンです。

製品形態と取り扱い上の注意
苛性ソーダは、用途別には工業用、試薬用、日本薬局方があります。工業用は、主に液体苛性ソーダ(濃度50%)として出荷されており、一部、「固形苛性ソーダ」(濃度95%以上)としてフレーク状や粒状の製品もあります。
苛性ソーダは毒物及び劇物取締法で劇物に指定されています。タンパク質を分解する性質があり、人体(目、喉、皮膚)に対する危険性も高いので、取り扱う者は関連する法規等で求められる性質および取扱いの注意事項をよく理解し、遵守することで安全に保たねばなりません。
A1: 化学工業分野
A2: 塩素
A3: タンパク質分解の性質から、目、喉、皮膚等に対する危険性が高い。
猪股 勲(Isao Inomata)/ SCE・Net
東京大学工業化学修士課程修了。三菱ケミカル(株)で、石油化学関連の技術開発・事業開発、企画業務に従事。その後、日本バイオプラスチック協会に奉職。石油化学全般、バイオプラスチック、プラスチック廃棄物管理、気候変動などの環境問題に広く精通。2015年よりSCE・Net所属。ITIコンサルタント事務所チーフコンサルタント。
