【化学業界の基礎知識 -化学製品編-】第9回 塩酸とは?
2022/02/03
連載の目次
Q1: 塩酸の製造法による2つの種類は?
Q2: 合成塩酸と副生塩酸どちらが多く生産されているか?
Q3: 塩酸の毒物及び劇物取締法の指定は?
塩酸は、硫酸や硝酸と並ぶ最も一般的な強酸です。強酸類の中では比較的扱いやすいので、中和やpH調整、金属表面処理等広い産業分野、日常生活関連の上下水道・環境維持分野などに広く使用されています。
主な使用用途
アミノ酸、グルタミン酸ソーダや各種化学品・医薬品・農薬の製造、金属類の酸洗、排水処理、中和、pH調整、純水装置(イオン交換樹脂)の再生、各種のエッチング、凝集剤等の無機薬品原料など、大変幅広い工業用途に使われています。また、希塩酸を配合した業務用の酸性洗浄剤も一般に広く使われています。
濃塩酸 と濃硝酸 を体積比3:1で混合した王水は、高い酸化力をもちます。金や白金など、通常の酸には耐性の高い金属の塩類製造に使われます。
製造方法と生産量
塩酸には、大きく分けて、水素と塩素で合成する純度の高い合成塩酸と、有機化学合成反応の塩素化工程等で副生する塩化水素ガスを回収、精製した副生塩酸の2種類があります。
合成塩酸は純度が高く、通常は35%(一部38%)で生産されています。工業用、試薬用、食品添加物用、日本薬局方などの各種グレードがあり、品質はJSIA(日本ソーダ工業会規格)、JIS(日本工業規格)およびJSFA(食品添加物公定書)等で決められています。
副生塩酸は、同伴する塩酸以外の成分等が製造法によって異なるので、生産者から十分な情報を得て取り扱うことが大切です。
2020年度の日本での生産量は合計180万トン。合成塩酸75万トンに対して副生塩酸105万トンと、量的には副生塩酸の方が多くなっています。

取り扱い上の注意
塩酸は毒物及び劇物取締法で劇物に指定されており、腐食性、刺激性も強い物質なので、取扱いには関連する法規等で求められる注意事項をよく理解し、遵守することで安全に保たねばなりません。
塩酸を加熱すると大量の塩酸ガスが発生します。塩酸ガスは刺激臭があり、強い腐食性もあり、人畜に有害で大量に吸入すると中毒死する危険もあります。
塩酸自体には爆発性も引火性もありませんが、各種の金属を腐食して水素を発生させことがあります。水素と空気が混合すると爆発を起す可能性があります。
塩酸が皮膚・粘膜に付着すると炎症を起し、眼に入った場合に処置が適切でないと視力減退や失明することがあります。また、誤って飲み込むと、吐気、胃痛、口の灼熱感を覚え、脈拍が低下します。経口での濃塩酸の致死量は、成人の場合15~20gといわれています。
A1: 合成塩酸と副生塩酸
A2: 副生塩酸
A3: 劇物
猪股 勲(Isao Inomata)/ SCE・Net
東京大学工業化学修士課程修了。三菱ケミカル(株)で、石油化学関連の技術開発・事業開発、企画業務に従事。その後、日本バイオプラスチック協会に奉職。石油化学全般、バイオプラスチック、プラスチック廃棄物管理、気候変動などの環境問題に広く精通。2015年よりSCE・Net所属。ITIコンサルタント事務所チーフコンサルタント。
