【化学業界の基礎知識 -化学製品編-】第6回 トルエンとは?
2022/01/13
連載の目次
Q1: トルエンの最も大きな用途は?
Q2: トルエンの石油分野の使い方は?
Q3: ベンゼン、キシレンに比べトルエンの供給量が少ないのは?
トルエン(toluene)は、ベンゼンの水素原子の1つをメチル基で置換した構造をもつ芳香族炭化水素です。無色透明の液体で、常温で揮発性があり、引火性があります。
工業的な製造法は、ベンゼンと同じで、改質ガソリンのナフサの接触改質、エチレンプラントのスチームクラッキングからの生成物がほとんどです。2020年の日本国内生産量は129万トン、2019年は171万トン、2018年は207万トンです(石油化学工業協会の統計資料より)。
トルエンの主要な用途
溶剤
トルエンは溶剤として広く使用されています。水には極めて難溶ですが、アルコール類や油類などには極めて可溶なため、ペンキ、塗料用シンナー、多くの化学物質の溶解、ゴム、印刷用インク、接着剤、マニキュア原料、皮なめし、殺菌剤の溶解等、さまざまなものを溶解することができます。
ベンゼンに比べると毒性が低いため、溶剤として広く使われています。しかし、長期間の体内摂取により、視野狭さく、眼のふるえ、運動障害・記憶障害などの神経系障害、腎臓、肝臓や血液への障害が認められることが判明していますので、適切な取り扱いと管理が必要です。「シンナー遊び」のトルエンの作用は、危険ドラッグと大差ありません。
化学製品原料
ポリウレタンの原料であるトルエンジイソシアナートや、フェノール、火薬、爆薬として有名なトリニトロトルエン等の有機化合物の原料として使用されます。
オクタン価向上材
ガソリンのオクタン価向上剤としての効果があり、石油精製工場内で、ガソリンにオクタン価アップのために添加されて用いられています。

変成原料
量的に大きな用途が少ないのと、工業的には不均化によるキシレンとベンゼンの生成や脱アルキル化によるベンゼンの生成など工場内の原料として使用されることが多いことから、生成比率に比べて実際に製品として市場に供給される量は少なくなっています。
トルエンの取り扱い
消防法による危険物(危険物#第4類第1石油類)に指定されており、指定数量の20%以上の貯蔵には消防署への届出が必要です。人体に対しては麻酔作用があるほか、毒性が強く、日本では毒物及び劇物取締法により劇物に指定されています。管理濃度は20ppmとされています。
A1: 溶剤
A2: オクタン価向上剤
A3: 変成材料として使われる
猪股 勲(Isao Inomata)/ SCE・Net
東京大学工業化学修士課程修了。三菱ケミカル(株)で、石油化学関連の技術開発・事業開発、企画業務に従事。その後、日本バイオプラスチック協会に奉職。石油化学全般、バイオプラスチック、プラスチック廃棄物管理、気候変動などの環境問題に広く精通。2015年よりSCE・Net所属。ITIコンサルタント事務所チーフコンサルタント。
