【化学業界の基礎知識 -化学製品編-】第2回 エチレンとは?
2021/11/25
連載の目次
- 第1回:ナフサ
- 第2回:エチレン
- 第3回:プロピレン
- 第4回:ブタジエン
- 第5回:ベンゼン
- 第6回:トルエン
- 第7回:キシレン
- 第8回:酸とアルカリ
- 第9回:塩酸
- 第10回:苛性ソーダ
Q1: エチレンの最も大きな用途は?
Q2: 植物から発生するエチレンの効果は?
エチレンとは
エチレン(ethylene)は分子式C2H4で表され、オレフィン系炭化水素(アルケン)の中で最も単純な化学構造をもちます。融点は-169.1℃、沸点は-103.7 ℃、常温で可燃性の気体です。
工業的製法として、エタン・プロパン・ブタンなどの熱分解法、ナフサのスチームクラッキングがあります。日本では、ナフサをスチームクラッキングで分解し、蒸留により精製分離するのが一般的です。
エチレンの2020年日本国内生産量は604万トン、2019年は642万トン、2018年は616万トンです。生産能力は、2020年末で約620万トンあります(石油化学工業協会の統計資料より)。

エチレン原料の主要な石油化学製品
低密度ポリエチレン(LDPE)
高圧重合法で製造するものです。分岐構造が多く軟質の低密度ポリエチレン(LDPE、高圧ポリエチレンともよびます)と、分岐構造が少ないリニアポリエチレン(L-LDPE、直鎖状低密度ポリエチレン)の2種類があります。いずれも比重は0.910~0.930です。
押出成形やフィルム加工が容易で、フィルムで用いられる用途が多く、菓子類や衣類などの簡易包装やごみ袋、耐水性を生かした生鮮食品包装などに多く使われます。俗に「プチプチ」と呼ばれる気泡緩衝材、加工紙や農業用マルチフィルム、包装用シュリンクフィルムなどに使われます。80~90℃で軟化し、110~120℃で溶融する低温での熱可塑性が特徴です。
高密度ポリエチレン(HDPE)
中・低圧重合法で製造されるポリエチレン。軟化温度は120℃、融点は150℃と、比較的高温の熱可塑性が特徴です。比重は0.94〜0.97。半透明で、高強度の薄いフィルムに適しています。
コンビニなどのレジ袋、温水タンクや灯油缶、燃料タンク、コンテナ類、シャンプー・化粧品・洗剤容器、配水パイプやガス管などに使用されます。
ポリエチレンはエチレン需要の中で約50%を占める、最も大きな用途です。

塩化ビニルモノマー(VCM)
エチレンと塩素を反応させた後、熱分解して得られます。略して塩ビモノマーとも呼ばれます。塩化ビニルモノマーはポリ塩化ビニル(PVC)の原料に主に使われており、PVCは日用品や衣類、断熱材や保護剤、電線被覆、水道パイプ、農業資材など幅広い分野で利用されています。
スチレンモノマー
エチレンとベンゼンから合成されるエチルベンゼンの脱水素により製造されます。常温では芳香のある無色液体です。ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、合成ゴム等の原料となり、多くのプラスチック用途に使われます。
エチレンオキサイド
エチレンと酸素を反応させて製造する環状エーテルです。沸点は10.4℃で、無色の気体または液体です。界面活性剤やエチレングリコール、エタノールアミンなどの原料から、高い滅菌力を利用したプラスチック製医療用器具の滅菌剤等の医療分野まで幅広く使われます。
アセトアルデヒド
高濃度では刺激臭がある無色揮発性の液体物質。酢酸エチルやピリジン誘導体等の合成原料に主に使われるほか、防腐剤、防カビ剤、写真現像薬品、還元剤などさまざまな用途にも使われています。
エチレンの特殊な作用
エチレンは自然界でも野菜や果物などの植物から発生しています。植物からのエチレンガスはホルモンの一種で、成熟ホルモンや老化ホルモンと呼ばれ、果実を成熟させたり,落葉を促進したりするはたらきもあります。
果実や野菜の収穫後、保管・運搬中のエイジングによる腐敗防止のため、エチレン除去剤を使用して鮮度を保ったり、逆にエチレンを加えてバナナの完熟を進めたりすることも行われています。
A1: ポリエチレン
A2: 果実や野菜の成熟化(腐敗)の促進(成熟ホルモン)
猪股 勲(Isao Inomata)/ SCE・Net
東京大学工業化学修士課程修了。三菱ケミカル(株)で、石油化学関連の技術開発・事業開発、企画業務に従事。その後、日本バイオプラスチック協会に奉職。石油化学全般、バイオプラスチック、プラスチック廃棄物管理、気候変動などの環境問題に広く精通。2015年よりSCE・Net所属。ITIコンサルタント事務所チーフコンサルタント。
