【化学業界の基礎知識 -契約書類編-】第8回 「正しい寸法と形」を規定し、管理する ― 公差とは?
2021/06/03執筆:SCE・Net 鹿子島 達志

Point
機械工学において許容される差を「公差」といいます。加工された部品や製品について許容されるばらつきの範囲を意味します。正確には、「許容される最大寸法と最小寸法の差」をいいます。
公差にはどんな意義がある?
公差は機械加工上の用語であり、化学の世界にはなじみがありません。しかし、図面上で扱う公差には、すべての形体の寸法と形の幾何的要素を確実に規制し、加工部門や検査部門に正しい形を明確に伝えるという意義があります。品質管理上、極めて重要なものです。
「公差」にはどんなものがある?
「普通公差」とよばれる一般的な公差が一括的に使われることがよくありますが、個別では大きく分けて、寸法を規制する 「寸法公差」と、形状や平行さ・傾きなどを規制する 「幾何公差」、および、穴と軸の関係を規制する「はめあい公差」があります。
なお、分析や試験などにおける測定値のばらつきの許容限界という意味で「公差」の言葉が用いられることもありますが、これは厳密には後述するように「許容差」になります。

「普通公差」はどういうもの?
「普通公差」とは一般公差ともよばれ、図面の寸法ごとにつど記載されない公差のことで、JISで規定されています。JIS規格に記載されている表をもとに「寸法公差」や「幾何公差」を一括で指定することができ、図面の簡略化ができます。
図面に、JIS規格番号として「JIS B 0405」と書かれている場合、もしくは、何も公差表示がない場合は、「普通公差」のJIS規格を採用しているものと判断します。
「寸法公差」はどういうもの?
「寸法公差」とは、図面上の設計寸法に対する「最大許容寸法」(大きさのばらつきの範囲で許される最大寸法)と「最小許容寸法」(大きさのばらつきの範囲で許される最小寸法)との差をいいます。
たとえば、製品の基準寸法が10mmの場合、「公差+0.5」と書かれていたら、出来上がりが10.5mmだったとしても、「公差+0.5」なので許容範囲内にある、と判断することになります。
「幾何公差」はどういうもの?
「幾何公差」とは、実際の形状が幾何特性(物の形・大きさ・位置関係など)に対し、どのくらい許容できるのかというばらつきの範囲を示したものです。図面上では、寸法や寸法公差と併記して、形状や姿勢、位置などの設計意図を伝える役割があります。
公差の指示がない形体に対してはJIS規格の「JIS B 0419」で、普通幾何公差について規定しているものと見なせます。
幾何公差では、寸法測定だけでなく真円度測定機や三次元測定機での検査もあり、公差の程度によっては下図のように、「寸法公差では合格でも、幾何公差では不合格」といったこともあります。

図1 幾何公差
上段2図が基準。下段2図はともに「寸法公差規格で合格でも、幾何公差では不合格」の例(出所:KEYENCEサイト「ゼロからわかる幾何公差」より)
「許容差」は「公差」とおなじ意味ではない?
おなじ意味ではありません。「許容差」とは、基準値と許容範囲の最大値および最小値の差をいい、「公差」の定義である許容される最大寸法と最小寸法の差とは異なります。
「許容差」は「公差」が指定した許容幅に、方向指定を加えることで、より具体的に定めたものになります。基準寸法に対して大きい方を「上の許容差」、小さい方を「下の許容差」と表現します。
たとえば、基準寸法が10.0mmの加工品に対して、上の許容差が +0.2mm 、下の許容差が -0.1mm と指定があるとします。このとき、許される最小値は、10.0mm - 0.1mm = 9.9mm。また、許される最大値は、10.0mm + 0.2mm = 10.2mm となります。また、公差は、10.2mm-9.9mm = 0.3mmとなります。
許容差の決め方はどうなっている?
たとえば、化学製品に深く関わるプラスチックの寸法については、JIS規格「JIS K 7109-1986」で定められている 「プラスチックの寸法許容差の決め方」において、プラスチックの合理的な寸法許容差を定める方法が規定されています。 簡単にいえば、プラスチック製品製造時の不具合による平均損失を考慮して、寸法許容差を求めるものです。計算方法は「JIS K 7109-1986」を参照してください。
プラスチック(樹脂)製品の加工精度はどのくらい?
その特性上、湿度や温度の影響を受けやすく、加工後も、変化が生じてしまいますので精密加工は金属のようにはできず、切削加工では5mm±0.01mmまでともいわれています。
実際の許容差や公差の表はどういったもの?
JISにおける、削り加工寸法の普通(寸法)許容差の表を示します。
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表1「JIS B 0405(1991)」における削り加工寸法の普通(寸法)許容差(単位:mm)<br>(出所:日本産業規格「JIS B 0405(1991)」)
おなじくJISにおける、真直度及び平面度の普通(幾何)公差の表も示します。真直度及び平面度の普通公差をこの表から選ぶときには、真直度は該当する線の長さを、平面度は長方形の場合には長い方の辺の長さを、円形の場合には直径をそれぞれ基準とします。
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表2 「JIS B 0419(1991)」における真直度及び平面度の普通(幾何)公差(単位:mm)<br>(出所:日本産業規格「JIS B 0419(1991)」 )
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加工部品・製品の品質管理上とても重要!
公差は、化学業界の方々にはさほどなじみがないかもしれませんが、部品や製品の加工においては品質管理上とても重要なものです。業務で関連しそうな場合は、この記事を思い出すなどして、公差や許容差について整理してみてください。
鹿子島 達志(Tatsushi Kagoshima)/ SCE・Net
1949年生まれ。九州大学工学部卒。鐘淵化学工業(株)(現カネカ)他2社を経験。生産技術や調達部門にて多くの大型海外工場建設の責任者として従事。マレーシアにエンジ会社のMD(社長)として2年間駐在。化学工学会のコストエンジニアリング部会員で活動、SCE・Net会員。現在、生産技術コンサル業のイーグレテック代表。
