【化学業界の基礎知識 -契約書類編-】第1回 大切な情報の漏えいを防ぐ ー 秘密保持契約書とは?

2021/04/08

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Point

秘密保持契約書とは、自社の保有する秘密情報を相手方へ提供する必要があるときに取り交わす契約書のことです。秘密情報の取り扱いは、企業経営における重要度の高い事項であり、秘密保持契約は必要不可欠な契約といえます。

秘密保持契約は何のために結ぶの?

秘密保持契約(NDA:Non-Disclosure Agreement)は、自社(自身)の保有する秘密情報を相手方へ提供する際に、相手方がそれを他者に漏えいしたり、不正に利用したりするのを防ぐことを目的としています。当事者間のみで、目的とする事柄の遂行以外には秘密情報を使用・流用しないことを約束する契約です。

秘密保持契約を結ぶ例としては、新発売する予定の商品の広告を、外部の広告会社に発注する場合などが当たります。外部に知られたくない新商品の情報を開示しなければ広告会社が制作を進められないので、秘密情報を開示する前にこの契約を結ぶことになります。

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秘密保持契約はなぜ必要なの?

企業間取引においては、業務遂行上、重要な情報を相手方に開示せざるを得ない状況が発生し、それが漏えいした場合に、巨額の損害を受ける可能性があります。そのような事態を避けるため、相手方に秘密を守ることを約束させ、自社の利益を守ることが必要です。

典型的な例は、知的財産保護のための秘密保持契約があります。せっかくの発明も、特許法第29条にある「公然知られた発明」と判断されてしまうと特許を受けられません。特許申請作業を外部委託する場合、秘密保持契約の締結がなければ、第三者に情報が知られて、「公然知られた発明」と受け取られ、特許を取得できなくなります。

また、情報が漏えいした結果、第三者が似たような製品・サービスをつくった場合、相手先に対して損害賠償請求や差し止め請求できますが、その前提条件は秘密情報を正しく秘密として管理していたこと、そして秘密保持契約を締結していたこととなります。

秘密保持契約を結ぶときのチェックポイントは?

次のような点に留意して、契約を結びます。

1. 秘密情報の範囲を明確にする

秘密情報の範囲の明確な定義が重要となります。定義した秘密情報以外の情報で漏えいが起きても、相手方を契約違反に問うことはできません。十分に検討した範囲の設定が必要です。

一方、開示された時点ですでに公になっている情報や、情報の受領者の責任ではない理由で公になった情報などは、秘密保持契約の対象にはなりません。「除外規定」として記述します。

2. 秘密保持義務の内容を明確にする

秘密情報を受け取る相手方が、どのような義務を負う必要があるのかを明確にすることも重要です。具体的には、秘密情報を第三者に漏えいしてはならないこと、秘密情報を適切に管理すること、また管理に際して情報への不正アクセス・持ち出しを防止するために必要な対策を実施することなどが挙げられます。

3. 義務違反した場合どうするかを明記する

相手方が義務に違反した場合、損害賠償請求ができる旨や、秘密情報の使用の差し止め請求できる旨を明記しておくことが必要です。

4. 契約期間後も効果が持続することを明記する

秘密保持契約書の有効期間を定めることはもちろんですが、契約期間終了後も、契約内容の一部については効果を持続させる残存条項を明記しておくことが大切です。

5. 契約終了時の秘密情報処理の義務を明記する

秘密情報が含まれたあらゆる資料は、契約終了後に返還すること、もしくは相手方で廃棄することを義務付ける記載が必要です。契約期間終了後、相手方に秘密情報が残っていると、漏えい・不正利用のリスクも残されたままとなるので、これを防ぎます。

Message

利益を守るために事前によく確認を!

秘密保持契約は、自社(自身)の利益を守る重要な契約です。正しく理解し、十分確認して利益を守りましょう。

第2回のテーマは、「取引基本契約書」の予定です。

猪股 勲(Isao Inomata)/ SCE・Net

東京大学工業化学修士課程修了。三菱ケミカル(株)で、石油化学関連の技術開発・事業開発、企画業務に従事。その後、日本バイオプラスチック協会に奉職。石油化学全般、バイオプラスチック、プラスチック廃棄物管理、気候変動などの環境問題に広く精通。2015年よりSCE・Net所属。ITIコンサルタント事務所チーフコンサルタント。

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