【化学業界の基礎知識 -契約書類編-】第4回 製品めぐるトラブルの防止に ― 納入仕様書とは?
2021/05/06
Point
納入仕様書とは、製品の納入者が購入者に対して納入する製品が、どんな仕様で作られたものであるかを知らせる書類です。製品をめぐるトラブルの防止や軽減などに有効です。
納入仕様書はどんな書類?
製品を製造する納入側が、製品を購入する顧客側に製品の仕様について知らせる書類です。「仕様」(specification)とは、材料・製品・サービスなどにおいて明確に満たさなければならない要求項目の集合のことです 。
日常的には英語を短縮して「スペック」ということもあります。

購入仕様書という書類も見るけれど?
購入側のほうが、納入側に対して、納入される製品が、どんな仕様で作られるものであるかを要請する書類が「購入仕様書」です。
「納入仕様書」と「購入仕様書」では発行者がちがうだけで、記載内容は同一であることが必要です。
納入側は、「できる限り保証する範囲を狭くしたい」「製品の歩留りをよくし、コストも下げたい」と思いますし、購入側としては、「確実に安心・安全な製品をまちがいなく購入したい」と思いますので、両者が納得のいくよう折衝し、合意した上で、仕様書の作成を行うことが大切です。

図1 納入仕様書と購入仕様書
どんなことを記載する?
製品により多岐にわたり、変化しますが、絶対に書かなくてはいけないという内容はありません。
主な記載項目としては、次のようなもの挙げることができます。
- 製品の品質規格と検査方法・検査基準
- 製品の効能や性能の基準・検査方法
- 梱包・出荷形態
- 仕様書の有効期限など
これら以外には、保証する性能や期限、保管方法など、双方が必要と考える内容を、顧客と話し合った上で合意して、文書を作り上げていくことが重要です。
納入仕様書・購入仕様書を作成するメリットとは?
取引では製品の仕様を明確にしておく必要があるので、それだけでも納入仕様書を作成する意味は十分ありますが、次のようなメリットも挙げることができます。
1. トラブルを防止・軽減できる
取引先と「言った」「言わない」をめぐるトラブルを防止することができます。またトラブルが起きても、あらかじめ仕様書で責任範囲を明確にしておけば、早期の解決や被害の低減が可能となります。
2. 取引先との情報共有を通じて取引の質を高められる
製品の仕様を自社だけで決めることはできません。取引先に内容を説明し、承認を受け、情報を共有する必要があります。取引先との情報共有は、取引の継続・効率化や製品の改良ための貴重な機会となります。周辺情報を得られるという点でも有用です。
Message
円滑な取引のために仕様書の共有を!
製品の仕様について購入側と納入側のお互いが納得し、製品をめぐるトラブルを防止することは、円滑な取引のために重要です。仕様書はそのためにあります。
第5回のテーマは、「試験成績書・検査成績書」の予定です。
猪股 勲(Isao Inomata)/ SCE・Net
東京大学工業化学修士課程修了。三菱ケミカル(株)で、石油化学関連の技術開発・事業開発、企画業務に従事。その後、日本バイオプラスチック協会に奉職。石油化学全般、バイオプラスチック、プラスチック廃棄物管理、気候変動などの環境問題に広く精通。2015年よりSCE・Net所属。ITIコンサルタント事務所チーフコンサルタント。
