化学物質のリスクは何で決まる?【化学業界と「農薬」のこれから 第4回】 

2021/02/01

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前回の記事では、農薬の安全性は大きく4つの柱で評価されていることを紹介しました。では、農薬のリスクはどのように評価され、そこからどのように安全性を担保する基準値が導かれているのでしょうか。今回はまず、農薬を含め「化学物質」全般について、普段なにげなく使いがちな“リスク”という言葉を改めて捉えてみましょう。

 第3回はこちら:農薬の安全性ってなんだ?

すべて“化学物質”なのに?

日常生活においても私たちは多くの化学物質・化学製品に囲まれて暮らしています。しかし、なかにはそう聞くと眉間にしわを寄せてしまう人も。もしかすると、化学物質=人工物、人工物=危険物といった連想が起こるのかもしれません。

 身の回りのケミカルズ(化学製品)についてはこちらの特集記事をどうぞ:

 【ケミカルズの基礎知識】第1回 生活を支えるケミカルズ

化学物質とは元素と元素が結び付いたものですから、科学的な定義でいえば自然由来の物質も、人工的につくられた物質も、区別しません。(ときどき、天然の黒砂糖は体に良いが、白砂糖は体に悪いというような話を見聞きしますが、両者はミネラルなど砂糖以外に含まれる他の成分の違いであって、黒砂糖も不純物を除いて精製すれば、白砂糖になります。)

ちょっと脱線しました。では、天然物にしても人工物にしても、化学物質の“リスク”はどのように評価されるのでしょうか。せっかく砂糖の話をしたので、そのまま続けてみましょう。ずばり「砂糖は体に良いのか、悪いのか?」……そう、これは“程度の問題”です。

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砂糖(ショ糖)はブドウ糖(グルコース)と果糖(フルクトース)から成りますが、ブドウ糖は脳がエネルギーとして利用できる唯一の物質とされ、人体にとって重要な栄養素です。一方で、血液中のブドウ糖濃度が上がるとインスリンのはたらきで中性脂肪に変わり、脂肪細胞に蓄えられるため、過剰摂取は肥満を招き、生活習慣病にも関係します。つまり適正量が望ましいということになります(自分の適正量を知りたい方は末尾の参照先3をご覧ください)。

化学物質のリスクとは

健康上のメリット・デメリットの天秤にかかるものと言えば、塩分やお酒の話も定番ですが、直接口にするものに限らず、化学物質のリスクは「有害性」と「量」の比較によって定義されます。

量とは暴露量で、食べたり、吸いこんだり、触れたりすることで曝される量です。

一方の「有害性」はハザードとも呼ばれます。有害性(ハザード)は危害の因子そのものですが、リスクといった場合には、そこに量や頻度の問題が関わってきます。例えば、フグ毒の場合、ハザードにあたるのは(泳いでいる)フグです。

ただし、フグ自体はリスクにはあたりません。もしも素人が調理したフグ刺しを食べるとなれば、フグ毒の成分(テトロドトキシン)が十分に取り除かれず、残っている可能性が高い……。それは “リスクが高い”となりますよね。このように考えると農薬もそれ自体がリスクではなく「不適切な取り扱いによって量を誤ることがリスク」と言えるだろうと思います。

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では、化学物質のリスクをどのように評価するのかというと、動物試験などによる有害性の評価で求められた「無毒性量」と、どのくらいその物質に晒されるかを推定した「暴露量」の大小を比較する、これが基本的な考え方です。無毒性量とは「この量以下ならば、有害な影響が出ない最大量」のことです。

化学物質のリスク評価は、対象によって「ヒトの健康」と「環境中の生物」に大きく分けられます。農薬の場合もその両方の視点に基づき、前回紹介した4つの柱(消費者に対する安全性、使用者に対する安全性、農作物に対する安全性、環境に対する安全性)で評価されています。

その中でも、消費者に対する安全性である残留農薬に関する農薬の使用基準について、次回は「無毒性量」のお話からスタートします。またどうぞお付き合いください。

【参照先】

・解説「化学物質のリスク評価について-よりよく理解するために-」(製品評価技術基盤機構)

 https://www.nite.go.jp/chem/shiryo/yoriyoku.html

・ブドウ糖について(厚生労働省 eヘルスネット)

 https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-030.html

・あなたに必要なタンパク質と糖質の最適な量とは(森永製菓)

 https://www.morinaga.co.jp/protein/columns/detail/?id=3&category=muscle

堀川 晃菜(ほりかわ あきな)

科学コミュニケーター、サイエンスライター 1986年生まれ。東京工業大学大学院 生命理工学研究科修了。農薬メーカーに勤務後、日本科学未来館 科学コミュニケーターに。その後、Webメディアの編集・記者を経て、現在はフリーランス。著書に『バイオ技術者・研究者になるには』(ぺりかん社)がある。

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