ざわつく農業界・気になるワード(2) バイオスティミュラントとは?【化学業界と「農薬」のこれから 第7回】
2021/10/20.webp)
こんにちは。サイエンスライターの堀川晃菜です。前回は、最近、農薬業界を大いにざわつかせた話題として農林水産省が今年5月に策定した「みどりの食料システム戦略」を紹介しました(気になる方はぜひ第6回を……)。これに関連して“農薬のこれから"に関わるキーワードとして「総合防除(IPM)」「バイオスティミュラント」「RNA農薬」「ゲノム編集」の4つにフォーカスしてお伝えしています。今回は「バイオスティミュラント」です。
連載の目次
「バイオスティミュラント」って何?
バイオスティミュラントは、まだ一般的にはなじみの薄い言葉かもしれませんが(そして、ちょっと噛みそうになりますが)最近、注目を集めている技術分野の一つです。
2018年に肥料、農薬、土壌改良材などを取り扱う企業8社で設立された日本バイオスティミュラント協議会※1では「植物に対する非生物的ストレスを制御することにより気候や土壌のコンディションに起因する植物のダメージを軽減し、健全な植物を提供する新しい技術」としています。
頻繁に異常気象という言葉が聞かれるようになりましたが、高温・低温、乾燥・過湿、低日照など、植物も絶えず環境ストレスに晒されています。それが農作物の品質や収穫量を大きく左右することは言うまでもありません。
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農薬が雑草や病原菌、害虫による生物的なストレスを抑制するものであるのに対し、環境や土壌に起因する非生物的なストレスを緩和させ、植物をより良い生理状態に導くことで、作物の価値を高めようとするのがバイオスティミュラントです。

農業資材におけるバイオスティミュラントの位置づけ(画像提供:日本バイオスティミュラント協議会)
1) 腐植質、有機酸資材(腐植酸、フルボ酸)
2) 海藻および海藻抽出物、多糖類
3) アミノ酸およびペプチド資材
4) 微量ミネラル、ビタミン
5) 微生物資材(トリコデルマ菌、菌根菌、酵母、枯草菌、根粒菌など)
6) その他(動植物由来機能性成分、微生物代謝物、微生物活性化資材など)
農薬でも、肥料でもない……となると?
バイオスティミュラントは、世界的にはEUを中心に市場が拡大しています。日本でも就農者の高齢化や異常気象などを背景にバイオスティミュラントへの期待は今度ますます高まるでしょう。また、日本の農業技術をパッケージ化して海外へ輸出することを目指す農水省の「J-Methods Farming」※2には、「バイオスティミュラント・省水技術」というカテゴリーがあり、植物の乾燥・高温耐性を高める技術を持つ会社、微生物入り土壌改良剤等を輸入・販売する会社、節水ができる点滴灌漑用チューブの会社が参画しています。
ただ、日本では現状、農薬取締法、肥料取締法、地力増進法のいずれの範疇にも当てはまらない製品カテゴリーです。まずは安全性や有効性を確保するために、作用メカニズムの解明を進めていくことや、国内での品質・規格の標準化が求められています。
また、前回の記事で紹介した総合防除(IPM)の考え方に通じますが、バイオスティミュラントを唯一の手段として捉えるのではなく、従来の農薬、肥料、土壌・水の管理と相補的に機能させていくことが重要だと考えられています。
さて、残る2つのキーワードは「RNA農薬」と「ゲノム編集」です。次回もお楽しみに!
【参照先】
※1 日本バイオスティミュラント協議会(JBSA)
https://www.japanbsa.com/index.html
※2 農林水産省 「J-Methods Farming」
https://www.maff.go.jp/j/kokusai/kokkyo/food_value_chain/region/india/jmf/index.html
堀川 晃菜(ほりかわ あきな)
科学コミュニケーター、サイエンスライター 1986年生まれ。東京工業大学大学院 生命理工学研究科修了。農薬メーカーに勤務後、日本科学未来館 科学コミュニケーターに。その後、Webメディアの編集・記者を経て、現在はフリーランス。著書に『バイオ技術者・研究者になるには』(ぺりかん社)がある。
