【化学業界の基礎知識 -化学用語編-】第7回 揮発性有機化合物(VOC)とは?
2022/04/07
連載の目次
- 第1回:モノマー・ポリマー
- 第2回:熱可塑性樹脂
- 第3回:熱硬化性樹脂
- 第4回:界面活性剤
- 第5回:塗料
- 第6回:合成ゴム
- 第7回:揮発性有機化合物(VOC)
- 第8回:アニオン・カチオン
化学業界で仕事をする人なら知っておきたい「化学用語」をおさらいする「化学業界の基礎知識 化学用語編」。今回のテーマは「揮発性有機化合物(VOC)」です。
Q1. VOCは法的に排出規制されている?
蒸発しやすい有機溶剤
揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compounds)は、蒸発しやすい有機溶剤を意味します。有用化学物質ではなく、環境に悪影響をもたらす有害物質として捉えられています。
溶剤や燃料を使用する過程でVOCは環境中へ放出され、光化学スモッグによる健康被害を引き起こします。最近では、高揮発性有機化合物(VVOC:Very Volatile Organic Compounds)に分類されるホルムアルデヒドによるシックハウス症候群や化学物質過敏症が社会問題化しています。
2000年度の国内VOC排出量は、年間約150万トンですが、2004年の大気汚染防止法改正により、2006年からVOC排出施設への規制が行われることとなりました。VOCの排出は、業種や規模により規制対象となっています。
Q2. 家庭もVOC発生源になっている?
一般的な製品に広く含まれている
VOCは、塗料、印刷インキ、接着剤、洗浄剤、ガソリン、シンナーなどに含まれており、工業的に広く使われています。物質として代表的なものは、トルエン、キシレン、酢酸エチルなどです。
東京都での2000(平成12)年度と2015(平成27)年度の発生源別のVOC発生量を比較してまとめたものが下記の図です。全体ではこの間に約56%減となっています。

図:東京都における2000年度と2015年度の発生源別VOC発生量
(出所:東京都2018 年7 月公表「大気中微小粒子状物質検討会 中間まとめ」を参考に編集部作成)
一般家庭やオフィスにもVOC発生源があります。代表的なものに、エアゾールスプレーのガス、家庭用塗料、接着剤などがあります。
Q3. 企業にとってVOC削減とメリット追求は別もの?
対策は産業界でも暮らしの中でも
VOC排出削減のために、産業界では様々な施策が実施されています。
例えば、溶剤使用工程では、環境への放出を避けるための設備の密閉化や、溶剤の回収・再利用などが採り入れられています。溶剤使用量の削減などでの直接的なコストメリットも期待できます。
ほかにも、作業環境の改善、環境情報の透明化による企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)の保持、化学物質管理の推進、悪臭の防止などの施策を挙げることができます。いずれも経営面での環境配慮の促進が鍵となります。
また、暮らしの中でのVOC排出削減のために、例えば東京都は以下の工夫を推奨しています。
- 虫よけスプレーには霧吹き式など、噴射剤の要らないタイプを用いる
- 整髪剤にはムースタイプを使用する
- ペンキには水性タイプのものを使用する
- 殺虫剤の使用量や使用回数を減らす

Q4. 光の作用によりVOCは何と何に分解される?
光触媒によるVOC除去
VOCの除去方法として注目されている、「光触媒による分解技術」を紹介しておきます。
光触媒は、酸化チタンを主成分とする触媒で、光が当たると触媒表面に存在する水分子と酸素分子がラジカルとなり、強力な酸化作用を示します。この現象は「本多・藤嶋効果」と呼ばれるもので、VOCは無害な二酸化炭素や水に分解されます。
屋外の場合には、光源として太陽光が利用されますが、屋内でも長波長レーザー光などを用いることにより、反応装置の内部まで光を到達させられますので、分解効率を高めることができます。
さて、あなたは何問、正解できたでしょうか? 答はこちらです。
A1:はい(業種や規模による)
A2:はい
A3:いいえ
A4:二酸化炭素と水
次回のテーマは「アニオン・カチオン」です。お楽しみに!
中尾 眞(Makoto Nakao)/ SCE・Net
1948年生まれ。東京大学大学院化学工学修了。旭硝子(株)にて研究開発部、化学品営業部などに在籍し、イオン交換膜法食塩電解技術関連の開発・営業およびPEM燃料電池開発に従事。2006年より(公社)化学工学会SCE・Netの活動に参加し、現在代表幹事を務める。
