【化学業界の基礎知識 -化学用語編-】第2回 熱可塑性樹脂とは?

2022/03/03
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連載の目次

  • 第1回:モノマー・ポリマー
  • 第2回:熱可塑性樹脂
  • 第3回:熱硬化性樹脂
  • 第4回:界面活性剤
  • 第5回:塗料
  • 第6回:合成ゴム
  • 第7回:揮発性有機化合物(VOC)
  • 第8回:アニオン・カチオン

化学業界で仕事をする人なら知っておきたい「化学用語」をおさらいする「化学業界の基礎知識 化学用語編」。今回のテーマは「熱可塑性樹脂」です。

Q1. 熱可塑性樹脂を加熱するとどうなる?

可塑性は固体が軟らかくなっている状態

「可塑性」(plasticity)という言葉は、「弾性体」(elasticity)と対比される言葉で、「固体に力を加えて変形させたとき、その力を除いても元に戻らない性質」のことをいいます。固体が軟らかくなっている状態ともいえます。

加熱により可塑性が出る性質を「熱可塑性」といいます。熱可塑性樹脂は、加熱すると軟らかくなり、冷やすと硬くなります。したがって、熱可塑性樹脂は温度によって液状と固体の状態の間を行き来することができます。

Q2. 熱可塑性ポリマーが加熱によって軟らかくなる理由は?

加熱・冷却による分子の運動の変化が鍵

熱可塑性ポリマーは、長い鎖状の巨大分子の集合体です。個々のポリマーは共有結合(一次結合)でつながっており、ポリマー分子間はファンデルワールス結合や水素結合(二次結合)でつながっています。

加熱すると分子の運動が活発になり、絡み合いや結晶化が弱まることで溶融します。熱可塑性ポリマーを加熱すると、分子同士の間隔が広がりますので、分子相互間の結合力が弱くなります。そのため、温度上昇に伴って強度や弾性率が低下し、やがて可塑性を示すようになります。

加熱による分子の運動によって同時に体積膨張を示しますが、逆に、冷却すると分子の運動は次第に不活発になり、固化し、体積減少を示します。

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Q3. 汎用プラスチックより機能に優れるプラスチックの総称は?

特定の機能を強化したエンプラ、スーパーエンプラ

熱可塑性樹脂は、「汎用プラスチック」と「エンジニアリングプラスチック」に大別されます。

汎用プラスチックは比較的安価で加工しやすいので、工業用部品や日用品などでよく目にします。例えば、ポリエチレン(PE:PolyEthylene)、ポリ塩化ビニル(PVC:PolyVinyl Chloride)、ポリプロピレン(PP:PolyPropylene)、ポリスチレン(PS:PolyStyrene)、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS:Acrylonitrile Butadiene Styrene)、アクリロニトリル・スチレン(AS:Acrylonitrile Styrene)、アクリル(PMMA:PolyMethyl MethAcrylate)、ポリブチレンテレフタレート(PBT:PolyButylene Terephthalate)、ポリエチレンテレフタラート(PET:PolyEthylene Terephthalate)などがあります。

この中でも、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)は特に生産量が多い四大汎用樹脂と呼ばれています。

一方、エンジニアプラスチック(エンプラ)は、耐熱性など特定の機能を強化しているプラスチック樹脂のことを指し、工業用途に多く使用されています。

エンジニアリングプラスチックよりもさらに性能の優れたプラスチックを「スーパーエンジニアリングプラスチック」(スーパーエンプラ)といいます。エンプラよりも特に耐熱性と機械的強度に優れています。

Q4. 一般的に非結晶性プラスチックが結晶性プラスチックより優れる点は?

結晶性と非結晶性がある

熱可塑性樹脂は、その分子構造に「結晶構造があるかどうか」で性質が大きく異なります。

結晶構造があるものを「結晶性プラスチック」、そうでないものを「非結晶性プラスチック」と呼びます。

結晶性プラスチックは、分子が規則正しい結晶構造をとりながら硬化するプラスチック樹脂です。一般的に耐薬品性がよく、硬くて丈夫で、比較的耐熱性が高いことが特徴となります。ポリアセタール(POM:PolyOxyMethylene)やポリエチレン(PE)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK:PolyEtherEtherKetone)、テフロンなどが当てはまります。

一方、非結晶性プラスチックは、結晶化状態になりにくい、あるいはならないプラスチック樹脂を指します。特徴としては、透明性があり、耐衝撃性に優れています。ポリ塩化ビニル(PVC)やアクリル(PMMA)、ABS、ポリカーボネート(PC:PolyCarbonate)などが当てはまります。

さて、あなたは何問、正解できたでしょうか? 答はこちらです。

A1:軟らかくなる
⁠A2:ファンデルワールス結合や水素結合(二次結合)が切れるから
⁠A3:エンジニアリングプラスチック(エンプラ)
⁠A4:透明性、耐衝撃性

次回のテーマは「熱硬化性樹脂」です。お楽しみに!

中尾 眞(Makoto Nakao)/ SCE・Net

1948年生まれ。東京大学大学院化学工学修了。旭硝子(株)にて研究開発部、化学品営業部などに在籍し、イオン交換膜法食塩電解技術関連の開発・営業およびPEM燃料電池開発に従事。2006年より(公社)化学工学会SCE・Netの活動に参加し、現在代表幹事を務める。