【化学業界の基礎知識 -化学用語編-】第6回 合成ゴムとは?

2022/03/31
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連載の目次

化学業界で仕事をする人なら知っておきたい「化学用語」をおさらいする「化学業界の基礎知識 化学用語編」。今回のテーマは「合成ゴム」です。

Q1. 「ゴム」はどの国から来た言葉?

ゴムは高分子の「異端児」

ゴムは高分子の一種ですが、変わった特性を持つ「異端児」といえます。

最大の特性は「大きく伸びて、簡単に縮む」ということです。専門的な表現を使うと、「弾性変形限界が大きい」と捉えることができます。一般の高分子の特性を示すものとして、力を加えると力の方向に変形する性質である弾性変形があります。ゴムの弾性変形の程度はとても大きく、変形のしやすさを示すヤング率という値では、ポリエチレンなどの普通の高分子の1000倍以上にもなります。

ゴムの語源はオランダ語の“gom”です。一方、英語では“gum”ではなく“rubber”が一般的です。これは「消しゴム」(rubber)に由来します。

Q2. 硫黄を用いた天然ゴム製法を見つけたのは米国の何という企業?

加硫法の発明で工業的利用が広がる

天然ゴム(NR:Natural Rubber)は、ゴムノキの樹皮を傷つけたとき分泌されるラテックスという液から作られます。ラテックスには、ポリイソプレンとよばれる高分子が含まれており、これが生ゴムの原料の主成分となります。

天然ゴムは当初、おもちゃとして少量使われていましたが、1839年に米国のグッドイヤー社が、硫黄を用いた架橋法を見出したことで、工業的な利用が広まりました。硫黄による架橋は「加硫」とも呼ばれます。ポリイソプレンの二重結合のところに、硫黄原子を介して架橋構造をつくり、これにより弾性を発現させるのです。

天然ゴムは、全世界で年間約1400万トン生産されています。主要生産国はタイとインドネシアです。用途としては、大型自動車のタイヤが多く、また工業用のベルトなどにも幅広く使用されています。

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Q3. 合成ゴムが天然ゴムに比べて一般的に優れている性質は?

多様な原料、多様な構造

合成ゴムは、戦前のドイツで初めて実用的なものが「ブナゴム」という商品名で作られましたが、大きく発展したのは戦後のことです。自動車産業の発展と石油合成化学の進歩が追い風になりました。近年の合成ゴムの生産量は年間約1500万トンで、天然ゴムの生産量に匹敵します。

合成ゴムは、天然ゴムの二つの欠点、つまり熱や紫外線により酸化してしまう問題と、長期間使用すると経年劣化により伸びたままとなってしまう問題を克服しました。耐油性、耐熱性、耐オゾン性などの物性に優れていることも合成ゴムの特長です。

合成ゴムは化学構造の違いから、ジエン系と非ジエン系に大きく分かれます。

ジエン系は、ブタジエンやイソプレンの構造を持っており、二重結合が多く存在します。そのため、加硫でゴム同士を結合させることができます。一方、非ジエン系では、エチレンプロピレンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴムなどはジエン系化合物を使用していません。そのため、高分子鎖に二重結合がなく、老化しにくい特性を持っておりますが、硫黄に代わる加硫剤が必要で、パーオキサイド系の加硫剤などを用います。

合成ゴムの原料は多様で、化学構造によりさまざまな性質を示します。これにより天然ゴムの弱点である耐油性、耐熱性、耐オゾン性などの物性が改良されているのです。

代表的な合成ゴムを以下に解説します。

1)スチレン・ブタジエンゴム(SBR:Styrene-Butadiene Rubber)
⁠スチレンと 1,3-ブタジエンとの共重合体です。耐熱性、耐摩耗性、耐老化性、機械強度などに優れています。耐寒性や引き裂き強度では他のゴムより劣っていますが、品質が安定し、良好な加工性を示していますので、生産量が最も多く、自動車用タイヤ材として幅広く使用されています。

2)クロロプレンゴム(CR:Chloroprene Rubber)
⁠2-クロロ-1,3-ブタジエンの重合体です。ブタジエンを塩素化した後に脱塩酸して製造されます。耐候性、耐熱性、耐油性、耐薬品性に優れており、加工も容易です。用途としては、伝動ベルトや自動車部品、クッション材、接着剤などに使用されています。

3)アクリロニトリル・ブタジエンゴム(NBR:Nitrile Butadiene Rubber)
⁠アクリロニトリルとブタジエンの乳化重合によって製造されます。加硫ゴム製品はとくに耐油性に優れており、アクリロニトリル含有量が多いほど耐油性が高くなります。

最後に、他の合成ゴムと合わせて、表にまとめました。

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表1:代表的な合成ゴム

さて、あなたは何問、正解できたでしょうか? 答はこちらです。

A1:オランダ
⁠A2:グッドイヤー
⁠A3:耐劣化性、耐油性、耐熱性、耐オゾン性など

次回のテーマは「揮発性有機化合物(VOC)」です。お楽しみに!

中尾 眞(Makoto Nakao)/ SCE・Net

1948年生まれ。東京大学大学院化学工学修了。旭硝子(株)にて研究開発部、化学品営業部などに在籍し、イオン交換膜法食塩電解技術関連の開発・営業およびPEM燃料電池開発に従事。2006年より(公社)化学工学会SCE・Netの活動に参加し、現在代表幹事を務める。