【化学業界の基礎知識 -化学用語編-】第3回 熱硬化性樹脂とは?
2022/03/10
連載の目次
- 第1回:モノマー・ポリマー
- 第2回:熱可塑性樹脂
- 第3回:熱硬化性樹脂
- 第4回:界面活性剤
- 第5回:塗料
- 第6回:合成ゴム
- 第7回:揮発性有機化合物(VOC)
- 第8回:アニオン・カチオン
化学業界で仕事をする人なら知っておきたい「化学用語」をおさらいする「化学業界の基礎知識 化学用語編」。今回のテーマは「熱硬化性樹脂」です。
Q1. 熱硬化性樹脂は成型後再び加熱しても元に戻らない?
加熱後は結合が解けない
前回の熱可塑性樹脂に対比される樹脂が「熱硬化性樹脂」です。
熱硬化性樹脂は、加熱過程でモノマーが重合反応を起こして硬化します。重合反応によって形成される結合が強固なため、再び加熱しても結合が解けることはありません。高分子鎖同士が網目状につながっているために、加熱しても高分子鎖が自由に運動することができないのです。
Q2. 熱硬化性樹脂はどんな構造をしている?
分子間に「橋」が架かる
熱硬化性樹脂は、材料の段階では流動性を示して成形できますが、加熱すると硬化します。熱硬化性樹脂の硬化後の分子構造は「架橋構造」と呼ばれます。分子間に橋が架かったような構造のためこう呼ばれ、また「網状ポリマー」ともいいます。
架橋構造になることで分子量の大きいポリマーとなるとともに、分子の熱運動が制約され、再び加熱しても可塑性を示さなくなります。そのため溶融しないし、溶剤にも溶けません。また、機械的強度と耐熱性に優れてもいます。
熱硬化性樹脂は熱可塑性樹脂と比べると、成型に時間を要するので生産性が低く、また、圧縮強度や靭性においては劣ります。一方で、絶縁性、耐電圧、耐熱性に優れている他に、溶剤に対する耐性もあるので、電気部品に適しています。また、焼き付け塗料、炭素繊維強化プラスチック、接着剤、3Dプリンティング材料などにも使用されます。
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Q3. フェノール樹脂の硬化には酸性とアルカリ性どちらの触媒を使う?
伝統的な熱硬化性樹脂「フェノール樹脂」の開発と製法
代表的な熱硬化樹脂であるフェノール樹脂は、フェノール類とホルムアルデヒドを原料としており、世界で初めて工業化された人工合成のプラスチックです。商品名は「ベークライト」で、ベルギー生まれで米国で活躍した化学者レオ・ベークランドが1907年に発明したことに由来します。日本では1914(大正3)年から試作されました。
フェノール樹脂は、合成時の触媒が「酸性であるかアルカリ性であるか」により反応が異なります。
酸性の触媒下でフェノール類とホルムアルデヒドを縮合重合させると、ノボラックと呼ばれる熱可塑性樹脂が得られます。ノボラック樹脂そのものは加熱しても硬化しないため、硬化させて使用する場合にはヘキサメチレンテトラミンなどの硬化剤を用いる必要があります。
一方、アルカリ触媒下で合成を行うとレゾールと呼ばれる樹脂が得られます。レゾール樹脂は自己反応性の官能基を有するため、加熱することによりそのまま硬化させることができます。
Q4. 熱硬化性樹脂の主な特徴は耐熱性である。イエスかノーか?
絶縁体材料や断熱材など多様な用途
熱硬化樹脂そのものを製品として成型することはまれで、通常は空間を埋めるためのフィラーや、繊維を接着・固定するバインダーなどとして用いられます。また、耐熱性が要求される鍋の取手などの調理用品、自動車部品や、基板などに用いる絶縁体などとしてさまざまな製品に利用されています。住宅用途では、ポリスチレン系の住宅用断熱材に代わる材料として、発泡フェノールフォームが商品化されています。
レゾール樹脂は耐熱性を生かして接着剤や塗料などの主成分として用いられていますが、電子レンジには使えません。樹脂がマイクロ波を吸収し、発熱してしまうためです。
フェノール樹脂を木質材料に含浸させ真空高温で焼成することで、多孔性炭素材料のウッドセラミックスを製造することができます。これまで廃棄されていた木質性の原料が環境に優しい素材になるとして利用されています。
さて、あなたは何問、正解できたでしょうか? 答はこちらです。
A1:戻らない
A2:架橋構造(網状ポリマー)
A3:アルカリ性
A4:イエス
次回のテーマは「界面活性剤」です。お楽しみに!
中尾 眞(Makoto Nakao)/ SCE・Net
1948年生まれ。東京大学大学院化学工学修了。旭硝子(株)にて研究開発部、化学品営業部などに在籍し、イオン交換膜法食塩電解技術関連の開発・営業およびPEM燃料電池開発に従事。2006年より(公社)化学工学会SCE・Netの活動に参加し、現在代表幹事を務める。
