【化学業界の基礎知識 -化学用語編-】第4回 界面活性剤とは?
2022/03/17
連載の目次
- 第1回:モノマー・ポリマー
- 第2回:熱可塑性樹脂
- 第3回:熱硬化性樹脂
- 第4回:界面活性剤
- 第5回:塗料
- 第6回:合成ゴム
- 第7回:揮発性有機化合物(VOC)
- 第8回:アニオン・カチオン
化学業界で仕事をする人なら知っておきたい「化学用語」をおさらいする「化学業界の基礎知識 化学用語編」。今回のテーマは「界面活性剤」です。
Q1. 水と油が混ざり合うのはどんな作用のおかげ?
牛乳でも水と油が混ざり合っている
水に油を混ぜようとしても、分離してしまいます。ここで「界面活性剤」と呼ばれる物質を加えると、そのはたらきで水と油が均一に混ざり合うようになります。この界面活性剤の働きを「乳化作用」といいます。例えば、牛乳では、含まれるタンパク質が界面活性剤の働きをして、水と脂肪が混ざり合った状態が保たれています。
界面活性剤(Surfactant)とは、分子内に水に馴染みやすい部分である親水基と、油に馴染みやすい部分である親油基を持つ物質の総称です。界面活性剤は石鹸をはじめとする洗剤の主成分として知られています。
Q2. 界面活性剤の分類は主に何によって決まる?
アニオン系やカチオン系など4つに分類
界面活性剤の分子は親水基と親油基を持っていますが、親水基の分子構造により4種類に分類されます。
親水基が解離しているとき負電荷を持つものはアニオン系(陰イオン系)と呼ばれ、正電荷を持つものはカチオン系(陽イオン系)と呼ばれます。また、負電荷と正電荷の両方を持つものは両性イオン系と呼ばれます。さらに、親水基が解離せずに、水素結合によって親水性を発揮するものがあり、これをノニオン系(非イオン系)と呼びます。
アニオン系としては、石鹸として知られる高級脂肪酸塩や、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS:Linear Alkylbenzene Sulfonate)などが挙げられます。また、カチオン系では、脂肪族4級アンモニウム塩や、塩化ベンザルコニウム(BZC:BenZalkonium Chloride)などが挙げられます。両性イオン系ではカルボキシベタイン、またノニオン系ではポリオキシエチレンアルキルエーテル(AE:poly(oxyethylene)Alkyl Ether)などが代表的です。

Q3. 界面活性剤の代表「洗剤」にはどんな作用がある?
汚れを引き離し、水中に散らばせる
洗濯用洗剤として代表的な界面活性剤が、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(LAS)です。ベンゼンスルホン酸ナトリウムの部分が親水性で、直鎖アルキル基の部分が親油性ですが、衣服に付着した汚れ成分を親油性の部分が包み込んで、親水性に移行させることで汚れを取り除いています。
洗剤には、湿潤作用、浸透作用、乳化・分散作用、再付着防止作用があります。
湿潤作用は、乾いた洗濯物に界面活性剤の含まれた洗剤と水を加えることで、汚れの表面にある界面を濡らす作用をいいます。
浸透作用は、界面活性剤が汚れと洗濯物との間に浸み込んでいく作用です。
乳化・分散作用は、汚れの間に浸み込んだ界面活性剤がそれぞれの周囲に吸着し、お互いを引き離した結果、水中に取り出されるときの作用を指します。乳化は前述のように水と油が均一に混ざり合うことであり、この場合は汚れ成分が親油基に包み込まれます。また分散は汚れの粒子が水の中に安定的に散らばることを意味します。洗濯機を使うと洗濯物がよく動くことなどによって、汚れが早く布地から離れます。
また、再付着防止の作用も洗剤には加味されています。
Q4. カチオン系界面活性剤は細菌の何を壊すことができる?
洗剤以外にも多様な用途
界面活性剤には洗剤以外にも多様な用途があります。
農薬としては、ポリエーテル変性シリコーンなどを用いると、葉に撥水性を持たせることができ、虫害を防げます。また、塗料にポリオキシエチレンアルキルエーテル(AE)を配合すると、表面に撥水性の顔料が分散された状態で塗膜を形成することができます。
化粧品では、皮膚に水分と油分を補う機能を持つ乳液をつくるため、非イオン活性剤を加えて乳化を促進させています。泡消火剤にはドデシル硫酸ナトリウムなどのアニオン系活性剤が起泡剤として使われています。
また、カチオン系界面活性剤は殺菌・抗菌機能を有しています。細菌の細胞膜は一種の界面活性剤の働きを持っていることで人体を攻撃しますが、塩化ベンザルコニウム(BZC)は微生物の細胞膜を壊す効果があり、細菌を死滅させられるのです。
さて、あなたは何問、正解できたでしょうか? 答はこちらです。
A1:乳化作用
A2:親水基の分子構造
A3:湿潤、浸透、乳化・分散、再付着防止
A4:細胞膜
次回のテーマは「塗料」です。お楽しみに!
中尾 眞(Makoto Nakao)/ SCE・Net
1948年生まれ。東京大学大学院化学工学修了。旭硝子(株)にて研究開発部、化学品営業部などに在籍し、イオン交換膜法食塩電解技術関連の開発・営業およびPEM燃料電池開発に従事。2006年より(公社)化学工学会SCE・Netの活動に参加し、現在代表幹事を務める。
