【化学業界の基礎知識 -化学用語編-】第5回 塗料とは?
2022/03/24
連載の目次
- 第1回:モノマー・ポリマー
- 第2回:熱可塑性樹脂
- 第3回:熱硬化性樹脂
- 第4回:界面活性剤
- 第5回:塗料
- 第6回:合成ゴム
- 第7回:揮発性有機化合物(VOC)
- 第8回:アニオン・カチオン
化学業界で仕事をする人なら知っておきたい「化学用語」をおさらいする「化学業界の基礎知識 化学用語編」。今回のテーマは「塗料」です。
Q1. 塗料を塗る目的は?
脇役として活躍
「塗料」は、金属をさびなどから守るとともに、建造物を美しくします。塗料の機能は「保護と美観」といえます。
被塗物、つまり塗られた物がさびや腐食、紫外線、風化などによって劣化することを塗料は防止します。また、被塗物の表面に色彩や光沢感といった塗料の視覚的効果を付与することで、見た目を美しくします。
塗料は主役というより、脇役といえます。被塗物である自動車や家電製品、船、橋梁、家、ビルディングなどの主役といえる構造物にを引き立てるからです。車体や構造物などを劣化環境から保護するとともに、見た目の美しさを付与することをもって初めて価値を発現します。
Q2. 塗料に含まれる物は?
色のもと「顔料」にも異なる役割
塗料のうち、高分子化学品や溶剤の他に、顔料を含んで着色されて仕上がるものをペイントと呼び、顔料を含まないで透明に仕上がるものをワニス、またはクリアーと呼びます。
顔料は塗膜中に粒子径にして数100nm~数10μmといった微小な粒子の状態で存在します。顔料は、その機能から、着色顔料、光輝顔料、体質顔料、防錆顔料などに分類されます。
着色顔料は、塗膜に色彩や意匠性を付与します。光輝顔料は、光を反射したり干渉したりすることにより外観上の異方性を付与します。体質顔料は、比重や粘度の調製材です。防錆顔料は、金属製被塗物におけるさびの発生を抑制します。
高分子化学品としては、第3回でも取り上げた熱硬化性樹脂が用いられます。塗装後に硬化反応を起こして、塗装面に強く密着し、緻密な薄膜を形成します。
溶剤としては、有機溶剤が多く用いられていましたが、環境対応や塗装作業者の安全面への観点から、有機溶剤の代わりに水を使用する水性塗料(水系塗料)や、溶剤を含まない無溶剤形塗料、粉体塗料などのいわゆる環境対応塗料が近年、急速に伸びています。

Q3. 耐候性の他、耐薬品性、耐溶剤性、耐熱性、撥水性に優れている塗料は?
溶剤系、水系、溶剤系に大別される塗料の種類
溶剤によって合成樹脂塗料は3つに大別されます。つまり、有機溶剤を使う溶剤系、水を使う水系、溶剤を使わない無溶剤系です。
このうち溶剤系は、用いる溶剤により、アルキド樹脂系、アクリル樹脂系、エポキシ樹脂系、ポリウレタン系に分類されます。
アルキド樹脂系は、ポリエステル系の高分子であるアルキド樹脂を基本とする塗料です。これに、アマニ油やその他の熱硬化性高分子を混合し、多彩な塗料となっています。車両、産業機械、建築物、橋梁、プラントなどの塗装に使われます。
アクリル樹脂系は、熱硬化性ポリアクリル酸エステルを使った塗料であり、自動車上塗りや、コンクリート、電気冷蔵庫、電気洗濯機の塗装などに使われます。
エポキシ樹脂系塗料は、エポキシ樹脂を基本としますが、さらに混合する他の高分子の種類により、エポキシ/フェノール樹脂、エポキシ/アルキド樹脂、エポキシ/コールタール塗料などさまざまに分類されます。缶詰や飲料用缶の内外面塗装、自動車の下塗り、船舶、橋梁、タンク、パイプの塗装などに使われます。
ポリウレタン系塗料は、ポリウレタンを基本の高分子とする塗料です。ポリウレタンは原料の配分のしかたによって多彩な性能を引き出せるので、弾性、耐候性、耐薬品性に優れた塗装ができます。構造物や建築物などの塗装に用いられています。
さらに、これら溶剤系や水系の塗料にフッ素樹脂を付与して高機能性を持たせたフッ素樹脂塗料が知られています。フッ素樹脂は分子内にC-F結合と呼ばれる強固な炭素(C)とフッ素(F)の結合がありますので、耐候性の他、耐薬品性、耐溶剤性、耐熱性、撥水性などに優れています。特に耐候性が着目され、大型建造物への適用が広まっています。大型建造物では、塗料の塗替え工事をすると大掛かりとなるため多額の費用が必要になります。これに対し、フッ素樹脂塗料のような耐候性の高い塗料を使えば塗替え周期は長くなり、建造物のライフサイクルコストを削減することができます。
Q4. 塗膜の性能は主に樹脂の何に左右される?
複数種のモノマーを組み合わて樹脂に
塗料用合成樹脂に、単一のモノマーだけを使うことはまれです。何種類ものモノマーを組み合わせて、膜の硬さや柔軟性、基材への密着性、硬化性などを調整し、用途に応じて性能を発現させています。
硬化剤もしくは架橋剤と呼ばれる化学物質を樹脂と混合し、塗装の後に樹脂分子同士を架橋させて、塗膜を強靭にするタイプの塗料も多く存在しています。塗膜の性能は、硬化剤の選択や、樹脂の混合方法で大きく左右されます。樹脂の混合のしかたが重要となるわけです。
さて、あなたは何問、正解できたでしょうか? 答はこちらです。
A1:被塗物の保護と美観
A2:顔料、高分子化学品、溶剤
A3:フッ素樹脂塗料
A4:混合のしかた
次回のテーマは「合成ゴム」です。お楽しみに!
中尾 眞(Makoto Nakao)/ SCE・Net
1948年生まれ。東京大学大学院化学工学修了。旭硝子(株)にて研究開発部、化学品営業部などに在籍し、イオン交換膜法食塩電解技術関連の開発・営業およびPEM燃料電池開発に従事。2006年より(公社)化学工学会SCE・Netの活動に参加し、現在代表幹事を務める。
