【化学業界の基礎知識 -化学用語編-】連載がスタートします!
2022/02/17
連載の目次
- 第1回:モノマー・ポリマー
- 第2回:熱可塑性樹脂
- 第3回:熱硬化性樹脂
- 第4回:界面活性剤
- 第5回:塗料
- 第6回:合成ゴム
- 第7回:揮発性有機化合物(VOC)
- 第8回:アニオン・カチオン
Chematelsの連載「化学業界の基礎知識」は、化学業界の入口に立っている方や、興味を抱いている方、業務スキルをさらに高めたい方に役立つ知識・情報をお届けする企画です。このたび、化学業界はもちろん、化学業界以外の人たちでも知っておきたい「化学用語」をおさらいする「化学用語編」がスタートします。次回以降はテーマ毎に「問題」を設け、答えていただきます。さて、あなたは、何問正解できるでしょうか?
用語にはガイドの役割もある
私たちは生活のあらゆる面で、化学製品を用いています。また、ニュースや新聞などを通じて、さまざまな化学用語に触れています。この「化学業界の基礎知識化学用語編」では、そうした化学用語を取り上げます。
化学業界に携わる人が化学品の知識を必要とするのはいうまでもありませんが、化学以外の産業に従事する人でも、製品に関する化学的な用語の意味や関連知識は必要です。
化学用語の多くは、高校時代に習った化学の教科書の知識がベースとなっています。用語は業界における大雑把な「分野」を示しており、いわば「業界を知るためのガイド」のようなものともいえます。従って、用語を正しく理解していると、話題となる事柄に早く到達するだけでなく、本質を正しく理解することができます。一方、用語を正しく理解していないと、ポイントを外してしまうことになります。
化学用語の源流に『舎密開宗』あり
用語は時代とともに変化していきます。「化学」という学問は明治時代から始まりますが、それ以前の江戸時代にも蘭学者の間で知られていました。
日本で最も古い体系的な化学書は1837〜47年に刊行された『舎密開宗(せいみかいそう)』という本です。宇田川榕菴により著されました。タイトルにある「舎密」は、オランダ語で「化学」を意味する“Chemie”の音訳で、「開宗」は「根源への道を開く」という意味です。今日の言葉では『化学入門』に当たります。原書は『AnEpitomeofChemistry』という英書であり、そのドイツ語訳書をオランダ語翻訳したとされていますので、多くの西洋化学の単語が使われており、それまでに使われなかった多くの用語を生み出しました。例えば、酸素、水素、窒素、炭素、といった元素名や、酸化、還元、溶解、飽和、結晶、分析、といった用語が含まれ、今日でも用いられています。

専門用語は必要か
化学業界で仕事をする上では、用語をしっかり理解しておくことが重要です。専門用語は専門家に任せておけばよいという考えもありますが、実際のところ業界で専門用語を使うような仕事をするのは、必ずしも専門家ばかりではありません。理系の方でも、元々は専門でない分野から化学業界に入られた方も多くいますし、文系の方も高校の教科書で学んだ化学知識をもとに仕事をすることは多くあります。どのような方も、用語のポイントをつかんでおけば、専門知識がなくても、商品を売買したり管理したりできます。将来の事業予測もできるようになります。
対比的な用語にご注意を
この「化学業界の基礎知識化学用語編」で取り上げる用語は以下の内容に大別されます。
- 高分子樹脂に関するもの
「モノマー・ポリマー」「熱可塑性樹脂」「熱硬化性樹脂」 - 機能性高分子に関するもの
「界面活性剤」「塗料」「ゴム」「揮発性有機化合物(VOC)」「アニオン・カチオン」
特に対比的な用語について取り上げていきます。対比的な用語は、間違えると逆の意味で使ってしまうことになりますので、相違点をしっかり理解しておくことが大事です。
少しだけ、第1回以降の内容を先取りしてみましょう。
「モノマー(Monomer)」と「ポリマー(Polymer)」の違いは高分子の性質を理解する上での基本的な知識です。単分子のモノマーを重合することで、高分子のポリマーが得られます。エチレンを例にとると、モノマーはエチレン分子で、これを重合したポリマーはポリエチレンになります。
また、「熱可塑性樹脂」と「熱硬化性樹脂」の違いは、加熱操作で樹脂の性質が変わることにあります。ポリエチレンのような熱可塑性樹脂は加熱により溶融状態となりますが、フェノール樹脂のような熱硬化性樹脂は加熱により硬化します。これらの性質を利用して樹脂を加工成型し、熱可塑性樹脂は包装フィルムなどに使い、熱硬化性樹脂は接着剤などに用います。
「界面活性剤」は、1つの分子の中に、水に溶けやすい部分である親水基と、油に溶けやすい部分である親油基を持っています。洗濯用の洗剤はアルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムといわれるもので、親水性と親油性の両方の性質を持っています。衣服に付着した汚れ成分を親油性の部分が包み込んで、水相に移行させ、汚れを取り除くことができます。
水中に溶解した分子はイオンとして存在しますが、イオンには負に帯電した「アニオン」と、正に帯電した「カチオン」があります。塩分を含む水をイオン交換樹脂で処理する場合、アニオンである塩素イオン(Cl−)と、カチオンであるナトリウムイオン(Na+)をアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂と接触させることで、除去することができます。
次回以降、これらについて「問題」を出しながら詳しく解説していきます。第1回は「モノマー・ポリマー」です。
中尾 眞(Makoto Nakao)/ SCE・Net
1948年生まれ。東京大学大学院化学工学修了。旭硝子(株)にて研究開発部、化学品営業部などに在籍し、イオン交換膜法食塩電解技術関連の開発・営業およびPEM燃料電池開発に従事。2006年より(公社)化学工学会SCE・Netの活動に参加し、現在代表幹事を務める。
