【化学業界の基礎知識 -製品安全編-】第9回 地球と体の健康を守るための届け出―環境汚染物質排出移動登録(PRTR)とは?

2021/08/26

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Point

環境汚染物質排出移動登録(PRTR:Pollutant Release and Transfer Register)は、特定の有害化学物質がどこから、どれだけ環境に排出されているかを知るための仕組みといえます。化学物質の排出情報を国が1年ごとにまとめて公表する制度で、事業者の排出量報告、国の集計公表、国民の管理状況評価の3つが基礎になっています。「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(PRTR法、化管法とも)に基づいています。

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どんな狙いからPRTR制度はつくられた?

化学物質の排出の中味を把握することで、環境や人体への有害リスクを低減しようとする狙いです。

化学物質は製品として使用・廃棄されていく過程で、大気、土壌、海洋などの環境中に排出され、大気や食物を通じて私たちの体に取り込まれます。これらは環境や人体への有害リスクとなります。化学物質によるこれらのリスクを低減させるためには、化学物質の排出を削減する必要があります。しかし、従来の化学物質管理規制は、特定の有害化学物質の数量を規制するだけのものでした。全体の化学物質の流れを適切にコントロールできないことが課題でした。

一方、PRTRの制度では、事業者は1年間にどのような物質をどれだけ環境中へ排出したか、あるいは廃棄物としてどれだけ移動したかを国に届け出ます。国はそれを集計し、毎年公表します。また、家庭や農地、自動車などから排出される化学物質の量も国が推計し、事業者からの 届出とあわせて公表することになっています。

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図1 PRTR制度の仕組み(出所:経済産業省)

こうしたデータをもとに、全国的に排出量の多い物質は何か、また業種別や地域別にどのような特徴があるかなどを把握することができるわけです。これにより、削減すべき化学物質の優先順位を判断することが容易になります。

PRTR 法の対象となる化学物質は?

「第一種指定化学物質」と「第二種指定化学物質」に分けられています。

第一種指定化学物質には462物質が指定されており、国に届け出ることが義務付けられています。また、これらのうち、発がん性などの理由で特に注意を要する石綿やダイオキシン類などの15種類の物質は「特定第一種指定化学物質」と指定されています。

人や生態系への有害性があり、環境中に広く存在する物質が、第一種指定化学物質に分類されています。具体的には、人の健康や生態系に悪影響を及ぼすおそれがあるもの、物質自体は悪影響を及ぼすおそれがなくても、環境中に排出された後で有害な化学物質を生成するもの、オゾン層を破壊するおそれがあるものが該当します。

これらの化学物質を他の事業者へ出荷する場合は、有害性に関する情報や取り扱い方法などを記載した安全データシート(SDS:Safety Data Sheet)を提供することが事業者に義務付けられています。

第二種指定化学物質には100物質が指定されています。第一種と同じ有害性の条件に当てはまる物質で、製造量、使用量などが増加した場合には環境中に広く継続的に存在することが見込まれる物質です。排出量などを国に届け出る必要はありませんが、SDSの提供は定められています。

Message

仕組みと取り組みが製品安全をもたらす!

化学物質は私たちの生活を豊かなものにする一方で、環境や人体への有害リスクのもとにもなります。PRTRのような仕組みと、それを遵守する取り組みが、製品安全をもたらしているといえます。

「化学業界の基礎知識」の「製品安全編」は今回で終了です。次回より「輸出入業務編」がスタートします。ご期待ください!

【参考資料】

経済産業省「PRTR制度」

https://www.meti.go.jp/policy/chemical_management/law/prtr/index.html

中尾 眞(Makoto Nakao)/ SCE・Net

1948年生まれ。東京大学大学院化学工学修了。旭硝子(株)にて研究開発部、化学品営業部などに在籍し、イオン交換膜法食塩電解技術関連の開発・営業およびPEM燃料電池開発に従事。2006年より(公社)化学工学会SCE・Netの活動に参加し、現在代表幹事を務める。

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