【化学業界の基礎知識 -製品安全編-】第3回 2億5000万以上の物質を固有識別―CAS番号とは?
2021/07/08
Point
CAS番号は、アメリカ化学会 (ACS:American Chemical Society) が発行する雑誌『ケミカル・アブストラクツ』(Chemical Abstracts)で使用される化合物番号で、化学物質を特定するために最大10桁からなる番号が使われています。データベースは、論文や特許などの科学文献に掲載された膨大な数の化学物質が収録され、化学物質情報データベースとして広く活用されています。
CAS番号はどのように成立した? どのくらいの番号がある?
1907年に創刊された米国化学会の雑誌Chemical Abstracts(CA、ケミアブ)の刊行に端を発しています。CAには全世界で発行される数千種類の定期刊行物、各国特許庁の公報、学会要旨、新刊図書、学位論文などの抄録が掲載されています。世界の化学関連文献を検証、要約、索引付けすることで、世界中の科学者が恩恵を受けられるようにすることを目的としています。
登録されているCAS番号の数は2021年4月時点で、化合物と遺伝子配列を合わせて2億5000万以上となっています。

番号の構成は?
「1つの化学物質に対して1つの番号を付与し、重複割り当てをしない」という番号付与ルールに基づいています。番号はハイフンにより3つの部分に分けられます。左は7桁以下の数値、中央は2桁の数値、右は1桁の数値です。
例えば、水素は「1333-74-0」、酸素は「7782-44-7」、水は「7732-18-5」で表わされます。番号は基本的に登録順で、左の数値、中央の数値を用いた通し番号が付けられています。構造や物性などと関連付けることはないので、番号に化学的な意味は持たせていません。
どのように活用されている?
CAS番号は物質のオンライン検索や確認に便利であり、研究論文、特許明細書、技術公報、貿易用カタログなどにも掲載され、広く利用されています。化学物質IDのデファクトスタンダードにもなっており、化合物の各種申請に際してCAS番号の提示が求められることが通例です。
利用する上での注意点は?
CAS番号は商業ベースの登録番号ですので、CAS番号を学術目的外で利用する際は商用とされ、CAS代理店の認可および費用が発生します。また、学術利用であっても毎年書類申請による認可を受ける必要があります。
このような事情から、公的な化学物質の構造データベースではCAS番号を除外しています。一方で、化学物質の構造情報を伴わない小規模なデータベースではCAS番号の利用が主流となっています。
Message
固有の識別番号で間違いなく物質を同定!
一つの物質に対し、一般名、商品名、慣用名などが並存することもあるので、固有識別のできるCAS番号は物質を確実に同定するための手段ともいえます。
【参考文献】
1)化学情報協会HP「よくあるご質問」
https://www.jaici.or.jp/welcome/faq.html
中尾 眞(Makoto Nakao)/ SCE・Net
1948年生まれ。東京大学大学院化学工学修了。旭硝子(株)にて研究開発部、化学品営業部などに在籍し、イオン交換膜法食塩電解技術関連の開発・営業およびPEM燃料電池開発に従事。2006年より(公社)化学工学会SCE・Netの活動に参加し、現在代表幹事を務める。
