【化学業界の基礎知識 -製品安全編-】第6回 水もCO2も実は「医薬品」―日本薬局方とは?
2021/07/29
Point
日本薬局方(にほんやっきょくほう)は、厚生労働大臣により公示される、医薬品の品質・純度・強度の基準を定めた文書です。薬機法に基づいており、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会での意見がベースになっています。各医薬品の有効性を問う試験法や判定方法についても掲載されています。
日本薬局方の歴史は?
初版は1886(明治19)年6月に公布されました。ドイツ薬局方、それにオランダ薬局方を参考にしています。当時、海外から不良品や粗悪品を含むさまざまな医薬品が大量に輸入され、品質を統一する基準が必要になったことが誕生の背景にあります。
その後、改訂が重ねられ、現在のものは2021年6月に改訂された「第十八改正日本薬局方」です。収載されている医薬品は「局方品(きょくほうひん)」と呼ばれ、2033品あります。
「方」の由来は?
「薬局方」という独特の名称は、「薬典」という言葉を「方」と記載したことに由来します。
なぜ、「薬典」ではなく「方」なのか、また「法」とせず「方」の字を用いたのでしょう。これについては、江戸時代の蘭方医である中川淳庵が、オランダ語で「薬典」に当たる「アポテーキ」という言葉を、中国宋代の古医書『和剤局方』に倣って、「和蘭局方」と訳したことに由来しているといわれています。

局方品にはどんなものがある?
複雑な化学構造を持つ医薬品のほかに、酸素、窒素、二酸化炭素、水、水酸化ナトリウム、牛脂、ヤシ油などの一般化学品も含まれています。水についてはさらに、「常水」「精製水」「精製水(容器入り)」「滅菌精製水(容器入り)」「注射用水」「注射用水(容器入り)」と細かく分類されています。
このように薬事法の治療目的で使われる化学品はすべて医薬品と規定されています。日本薬局方で定められた性状や品質の医薬品を使う必要があります。
日本薬局方の役割とは?
医薬品の品質を適正に確保することです。そのために必要な規格・基準及び標準的試験法などを示しています。
日本薬局方は透明性のある作成過程を通じて、国民に医薬品の品質情報を開示するとともに、医薬品の品質規範書として、国際社会における先進性および国際的整合性の確保に貢献しています。
Message
身近な存在に!
病気の治療や予防に使われる医薬品では、とくに品質を保つことが重要です。日本薬局方はそのための文書といえます。医薬分野に携わる人は、こまめに参照するなどして、身近に感じておくとよいでしょう。
第7回のテーマは、「医薬品の製造管理及び品質管理の基準」(GMP)の予定です。
【参考文献】
1)厚生労働省「『日本薬局方』ホームページ」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000066530.html
中尾 眞(Makoto Nakao)/ SCE・Net
1948年生まれ。東京大学大学院化学工学修了。旭硝子(株)にて研究開発部、化学品営業部などに在籍し、イオン交換膜法食塩電解技術関連の開発・営業およびPEM燃料電池開発に従事。2006年より(公社)化学工学会SCE・Netの活動に参加し、現在代表幹事を務める。
