材料・化学品にもう一つの「緑化」を ― グリーンマテリアル・グリーンケミカルズ【押さえておきたい!バイオプラ用語 第8回】

2025/12/16

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Chematelsの連載「押さえておきたい!バイオプラ用語」は第8回。最終回に取り上げるのは「グリーンマテリアル」「グリーンケミカルズ」です。近年「グリーン」に、「環境保全の」や「自然保護の」といった意味が加えられ、そこに「材料・素材」を意味する「マテリアル」や、「化学品」を意味する「ケミカルズ」が付いて、バイオプラスチックも関係する用語となっているのです。これらは比較的新しい概念の言葉ですが、政府・企業・大学などによる、地球温暖化・気候変動の抑制や、循環型社会構築推進の分野で目に触れる機会は増えていると思います。

目次

従来製品よりCO2排出量などが大幅削減―グリーンマテリアル

「グリーンマテリアル」は、直訳的には「環境保全の材料・素材」といった意味になりますが、経済産業省は2022年4月に公表した資料「新・素材産業ビジョン(中間整理)」の中で、「従来の製品より二酸化炭素(CO2)排出量などが実質的に大幅に削減されたもの」と位置づけています。そして、この中で、バイオプラスチック製造技術の開発・実証や、バイオものづくり技術によるプラスチックの生産を、新素材・新需要の創出の好例に挙げています。

経済産業省は同年2月、「グリーン・トランスフォーメーション(GX:Green transformation)リーグ基本構想」を公表しました。これは、カーボンニュートラル実現に向けて貢献しながら、産業競争力を高めるための市場設計などを進めることにより、グリーンマテリアル市場の創出を目指そうとする構想です。2025年12月現在、714者が参画しており、グリーンマテリアル製品の積極的・優先的購入により市場グリーン化を牽引しようとしています。

化学品のライフサイクルで人体・環境への負荷を低減―グリーンケミカル

「グリーンケミカル(グリーンケミストリー)」は、グリーンマテリアルの一つと捉えられますが、とりわけ、化学品のライフサイクル全体において、人体および環境への負荷低減を目指すコンセプトと、そのための技術の総称とされます。1998年に米国ポール・アナスタスが提唱した「グリーンケミストリーの12原則」が基本概念として意識されています(図1)。

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図1:グリーンケミストリーの12箇条
⁠(出所:Paul T. Anastas、John C. Warner 著 日本化学会、化学技術戦略推進機構 訳編 渡辺正、北島昌夫 訳『グリーンケミストリー』を参考にChematels編集部作成)

化学・建築・服飾…グリーンケミカル・マテリアル推進の対象は幅広い

実際の企業が推進する、グリーンケミカルやグリーンマテリアルに向けた取り組みの事例を挙げてみます。

ENEOSホールディングスは、2050年のカーボンニュートラル社会の実現を目指していると公表しています。その中で、「グリーンケミカル」を「原油から作られていたプラスチック製品を原油ではない非化石原料をもちいて作ること」と説明し、その具体的なソリューションとして、「➀ 植物や使用済み食用油などのバイオマス原料を用いた『バイオケミカル』」と、「② 廃プラスチックを油化して資源に戻す『ケミカルリサイクル』」の推進に取り組んでいるとしています。

グリーンマテリアルは幅広い分野に及ぶため、事例は他にも豊富にあります。

建築分野では、「グリーンビルディング」などともよばれる環境性能を最大限配慮して設計した建築物において、揮発性有機化合物(VOC:Volatile Organic Compound)を含まない塗料や、遮音性と耐火性を発揮する柱間などの充填材料に適したわら俵、また合成樹脂ながら冷暖房エネルギーを大幅に減らせるポリウレタン断熱材などの活用が推進されています。

服飾分野では、動物由来原料を使用しない「ヴィーガンレザー」とよばれるキノコ由来やサボテン由来の人工レザーが利用されています(図2)。

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図2:ヴィーガンレザーの例

このようにグリーンマテリアル推進の活動は広範囲ですが、これらは、第7回の記事で取り上げた「サーキュラーエコノミー」の実現に向けた世界的動向の一環として、今後も注目していく必要があると思います。

今回のシリーズでは、「バイオプラスチック」という素性は良好ながら、いまだに多くの改善も求められている素材をめぐる「用語」について解説してきました。今後の進展に注目のバイオプラスチック関連の認証制度や、バイオプラスチックの普及に貢献しうる仕組み、また世界的な取り組みなどの数々です。全8回の解説が、これからの皆さんの、この分野での状況把握や方向性の見極めに少しでも役立てばと思っています。

「押さえておきたい!バイオプラ用語」を最後までお読みいただき、ありがとうございました。


猪股 勲(Isao Inomata)/ SCE・Net

東京大学工業化学修士課程修了。三菱ケミカル(株)で、石油化学関連の技術開発・事業開発、企画業務に従事。その後、日本バイオプラスチック協会に奉職。石油化学全般、バイオプラスチック、プラスチック廃棄物管理、気候変動などの環境問題に広く精通。2015年よりSCE・Net所属。ITIコンサルタント事務所チーフコンサルタント。

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