日本企業も続々と取得! 原材料の持続可能性を証明 ― ISCC認証【押さえておきたい!バイオプラ用語 第5回】
2025/11/05Chematelsの連載「押さえておきたい!バイオプラ用語」は第5回。今回は、「国際持続可能性カーボン認証」(ISCC:International Sustainability & Carbon Certification)について解説します。持続可能な原材料を使用して製品を製造する事業者を認証するもので、認証取得する日本の企業も増えています。
目次
本連載で扱う用語
- 第1回 バイオプラスチック
- 第2回 認証制度
- 第3回 生分解性プラスチック認証
- 第4回 バイオマス由来プラスチック認証
- 第5回 ISCC認証
- 第6回 マスバランス方式
- 第7回 サーキュラーエコノミー
- 第8回 グリーンマテリアル、グリーンケミカルズ
循環経済・バイオ経済に貢献するあらゆる種類の原材料が対象
国際持続可能性カーボン認証(ISCC:International Sustainability & Carbon Certification)は、「持続可能な原材料」であることを証明する国際的な認証制度です。
バイオプラスチック関連のISCC認証として、「ISCC PLUS認証」があります。これは、欧州の再生可能エネルギー指令2(REDⅡ:Renewable Energy Directive Ⅱ)によって規制されていない化学工業や包装などを含む多様な産業用途において、あらゆる種類の原材料を対象に、サーキュラーエコノミーやバイオエコノミーに貢献するものであることを認証する制度です。ライフサイクルベースでの温室効果ガス削減を目的とした製品や原材料の認証を取得することで、環境配慮のコンセプトを市場に広くアピールできるとして、プラスチック関連製品などで取得が進んでいます。
対象となる原材料には、次の4種類が含まれます。
① バイオ原料:あらゆる種類の農業・林業由来の原料
② サーキュラー原料:廃棄物および残留物由来の原料
③ バイオ-サーキュラー原料:生物由来の廃棄物や残留物、廃棄物の生分解性由来部分
④ リニューアブル原料:バイオマス以外の再生可能エネルギー源を用いたプロセス由来の原料
なお、ISCC PLUSとは別の認証の枠組みとして、欧州域内のバイオ燃料市場を対象とした「ISCC EU」があります。欧州の再生可能エネルギー指令2(REDⅡ)に基づいて運用されています。両制度の比較を図1に掲げます。

図1:ISCC PLUSとISCC EUの比較。「アドオン認証」とは追加取得できる認証のこと
原材料の持続可能性を証明でき、競争優位性やピーアールの利点も
実績と信頼性の高い国際認証基準であることから、ISCC PLUSの認証取得は企業に多くのメリットをもたらすものとして注目されています。
まず、原材料の持続可能性を証明できるというメリットがあります。リサイクルプラスチックやバイオプラスチック、バイオマテリアルなどの持続可能な原料の使用が適切に管理されていることを、客観的かつ信頼性の高い方法で示すことができます。
また、環境配慮型の製品や材料を求める企業との取引において認証未取得企業よりも競争優位性を得られる点もメリットです。近年、再生可能エネルギーやリサイクル素材の使用が取引や採用の条件となるケースが増えている中で、認証取得はこれに対応し、競争優位性をもたらすものとなります。
さらに、ステークホルダーや取引先に対して企業の環境経営をピーアールできるというメリットも期待できます。消費者、投資家、株主などに対して、企業が持続可能性を重視し、環境負荷の低減に真剣に取り組んでいることを明確に示すことができます。
認証証機関との契約、登録、審査合格を経て認証取得
ISCC PLUS認証を取得するには、まずは認証機関を選び、契約を締結します。認証機関は複数あり、機関によっては日本人審査員や日本語によって審査を受けられます。
次に、ISCCのウェブサイトにてシステムユーザー登録を申請し、自社の登録番号を取得します。その後、認証機関に審査申請を行います。
そして、内部審査と認証機関による実地審査に合格すると、ISCC認証書が発行されます。
なお、認証取得を継続するには1年毎に審査を受け、ISCCの要求基準を満たしつづける必要があります。また、ISCC認証品としてサプライチェーンをつないでいくには、原則としてサプライチェーン上で売買する事業者、もしくは加工する拠点のすべてが認証を取得する必要があります。
130カ国以上で利用、日本ではプラ関連製品などで取得進む
組織としてのISCCは2006年に創設されました。ISCC PLUS認証は2012年から運用開始され、バイオエコノミーや循環型経済に貢献する多様な材料・製品の認証制度として広く注目され、すでに世界130カ国以上で利用されています。これまでのISCCとISCC PLUSをめぐる経緯を図2に掲げます。

図2:ISCCとISCC PLUSの沿革
日本国内では、ISCC EU認証よりも後発のISCC PLUS認証が多く取得されています。スタート当初は、認証に必要なデータ取得が広範囲にわたり、かつサプライチェーン全体が関係することから、認証取得が進みませんでした。近年は、取得済み原材料や認証取得実績の増加によって取得プロセスが明確になってきたため、日本での認証取得も増加しています。現状では、プラスチック関連製品などで多く取得が進んでいます。
ISCC PLUS認証では、認証取得対象の持続可能材料・素材の範囲が広いことから、原料調達から生産、消費までのサプライチェーン全体で確実に持続可能性を証明できるトレーサビリティーが求められます。そのために使われる手法が、次回の第6回で解説する「マスバランス方式」になります。次回からは、認証制度自体ではなく、その理解に必要な背景となる用語の解説をしていきたいと思います。
猪股 勲(Isao Inomata)/ SCE・Net
東京大学工業化学修士課程修了。三菱ケミカル(株)で、石油化学関連の技術開発・事業開発、企画業務に従事。その後、日本バイオプラスチック協会に奉職。石油化学全般、バイオプラスチック、プラスチック廃棄物管理、気候変動などの環境問題に広く精通。2015年よりSCE・Net所属。ITIコンサルタント事務所チーフコンサルタント。
