リサイクルなどの考えを拡大、経済を「循環型」に ― サーキュラーエコノミー【押さえておきたい!バイオプラ用語 第7回】
2025/12/03Chematelsの連載「押さえておきたい!バイオプラ用語」は第7回。今回は、1992年にリオデジャネイロで開催された国連環境開発会議(地球サミット)で広く認識されるようになった「サーキュラーエコノミー」について解説します。サーキュラーエコノミーは、従来のリニアエコノミーに対して、資源を効率的に循環させ、持続可能な社会を目指す中で成長も目指す経済システムです。世界的に注目され、多くの取り組みが進められています。
目次
本連載で扱う用語
- 第1回 バイオプラスチック
- 第2回 認証制度
- 第3回 生分解性プラスチック認証
- 第4回 バイオマス由来プラスチック認証
- 第5回 ISCC認証
- 第6回 マスバランス方式
- 第7回 サーキュラーエコノミー
- 第8回 グリーンマテリアル、グリーンケミカルズ
経済を「直線」でなく「循環」で捉える
資源を大切に使うための考え方として「リデュース」「リユース」「リサイクル」からなる「3R(Reduce・Reuse・Recycle)」が広く知られてきました。サーキュラーエコノミーは、この考えを拡大したもので、製品や原材料を廃棄せずに資源として再生し、持続可能な形で資源を最大限活用しようとする経済システムを指します。「循環型経済」とも呼ばれています。従来の原材料の入手から製品の廃棄までの流れが直線的で「線型経済」ともよばれるリニアエコノミーに対する概念として捉えられています(図1)。
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図1:リニアエコノミーとサーキュラーエコノミー
(出所:環境省「令和3年版 環境・循環型社会・生物多様性白書」の図版を参考にChematels編集部作成)
サーキュラーエコノミーの考え方は、欧州を中心に提唱され、世界各国がそれに沿った取り組みを進めようとしています。日本でも2020年、サーキュラーエコノミー実現を目指す経済戦略として「循環経済ビジョン2020」が策定されました。「環境活動としての3R」から「経済活動としての循環経済(サーキュラーエコノミー)」への転換が戦略の大きな特徴となっています。
経済活動であることを前提に資源を循環させていく
サーキュラーエコノミーの大きなポイントは「経済活動である」ということです。自動車産業を例に取れば、従来の資源循環の流れに加え、カーシェアリングや再製造・再販売、また廃棄されていた資源のリサイクル原料化などのさまざまな取り組みを、経済活動のなかで行い、資源投入量の縮減や廃棄物の削減を目指すものです。
サーキュラーエコノミーを推進しているエレン・マッカーサー財団は、サーキュラーエコノミーの3原則として以下を掲げています(図2)。
- 廃棄物と汚染を生み出さないこと(Eliminate waste and pollution)
- 製品や素材を(高い価値の状態のまま)流通・循環させつづけること(Circulate products and materials(at their highest value))
- 自然を再生させること(Regenerate nature)
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図2:サーキュラーエコノミーの3原則
(出所:エレン・マッカーサー財団「What is a circular economy?」を参考にChematels編集部作成)
経済活動のなかで資源を循環させるため、製品・サービスを設計から全段階を通してデザインし、自然再生を目指し、製品寿命つまり製品の価値を長期化させるためのメンテナンスや修理を施し、製品使用後もごみにならないよう、3Rや再資源化を実行することなどがポイントになります。
生物学的サイクルと技術的サイクルの二つで循環を構築
上記の「3原則」に基づき、サーキュラーエコノミーでは、再生可能資源・生物資源での「生物学サイクル」と、一般プラスチックや金属など、枯渇性資源・再生不可能資源の「技術的サイクル」とに分類して循環状態を構築していきます(図3)。例えば、木材でできた家具などの生物資源と、金属などの技術資源とが混ざった場合は、使用後それぞれのサイクルで適切処理するため、あらかじめ分離しやすいよう設計します。

図3:生物学的サイクルと技術的サイクル
(出所:エレンマッカーサー財団「The butterfly diagram: visualising the circular economy」の図をもとにChematels編集部作成)
バイオプラスチック関連では生物学的サイクルでのサーキュラーエコノミーへの寄与が中心になります。加えて、再生可能資源およびその廃棄物系資源を従来の石油化学製品の原料やエネルギーの代わりに活用することに注目が集まっています。石油メーカーは、既存の石油化学事業を継続させる一方で、サーキュラーエコノミーに寄与する取り組みをしており、数多くの事例が報告されています。
日本政府は2023年に「戦略」策定、産学官の連携を主導
日本政府も経済産業省を中心に2023年3月、「成長志向型の資源自律経済戦略」を策定しました。サーキュラーエコノミーの推進と、成長志向の資源循環社会確立のため、市場化の推進、それに国際競争力の獲得が重要であるとしています。具体的な取り組みとして、産官学パートナーシップの創設、投資支援、「廃棄物」を「資源」に転換するための制度整備などを掲げています。この一環で、産官学パートナーシップとして立ち上げた「サーキュラーパートナーズ」(CPs:Circular Partners)には、2025年11月の時点で、企業・業界団体、自治体、大学・研究機関・関係機関・関係団体からなる776の会員がさまざまな課題の検討をしています。
サーキュラーエコノミーの対象とする資源の範囲は広く、扱われるプラスチックが全てバイオプラスチックというわけではありません。とはいえ、資源循環による持続可能な経済体制構築の方向として、サーキュラーエコノミーは今後もおおいに注目されていくと思われます。バイオプラスチックが寄与できるということはいうまでもありません。
次回はこのシリーズ最終回となります。「グリーンマテリアル、グリーンケミカルズ」という用語についての説明と、シリーズのまとめをお話ししたいと思います。
猪股 勲(Isao Inomata)/ SCE・Net
東京大学工業化学修士課程修了。三菱ケミカル(株)で、石油化学関連の技術開発・事業開発、企画業務に従事。その後、日本バイオプラスチック協会に奉職。石油化学全般、バイオプラスチック、プラスチック廃棄物管理、気候変動などの環境問題に広く精通。2015年よりSCE・Net所属。ITIコンサルタント事務所チーフコンサルタント。
