法律から経済・社会・生活を変えていく【どうするプラスチック廃棄物 第8回】

2023/05/11
法律から経済・社会・生活を変えていく

各回のテーマ

Chematelsの連載「どうするプラスチック廃棄物」の最終回をお届けします。前回までに説明した海洋プラスチックごみ問題を発端とした世界的な動向に対応して、日本国内でもプラスチック廃棄物管理に関する新しい施策が実行されています。今回はその施策について解説します。

「容器包装リサイクル法」レジ袋国内流通量半減の効果も

「G20大阪サミット」の翌年2020年7月1日から、「容器包装リサイクル法」の省令改正により、レジ袋の有料化が開始されました。従来、無償で消費者に提供されていたプラスチック製の買物袋、いわゆる「レジ袋」を有償で提供することで、消費者にプラスチックごみの排出削減を促進する取り組みです。

ただし、リユース・リデュース・リサイクルと再生可能資源への代替を指す「3R+Renewable」の基本原則から例外となる措置として、繰り返し使用可能な厚さ50μm以上の買い物袋、生分解性プラスチック100%の買い物袋、バイオマス原料比率が25%以上の買い物袋が有料化の対象から除外されました。

レジ袋有料化は、市場から実施延期を求める声も出ましたが、予定通り実施されました。エコバックの普及拡大などにより、環境省の発表によるとレジ袋の国内流通量は、2019年の約20万トンから2021年には約10万トンにほぼ半減しました。

「プラスチック資源循環促進法」削減に向け12品目を特定

続いて2022年の4月1日より「プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律」(プラスチック資源循環促進法)が施行されました。この法律は、プラスチック製品の製造・販売事業者が、使用済み製品を自主回収・リサイクルしやすくするしくみを構築することを促進する狙いのものです国が定めた「特定プラスチック12品目」を提供する対象事業者に、今後の製品の使用合理化が求められています。

特定プラスチック使用製品の12品目は、フォーク、スプーン、ナイフ、マドラー、ストロー、ヘアブラシ、くし、カミソリ、シャワー用キャップ、歯ブラシ、ハンガー、衣類用カバーです。これらを主に取り扱う対象事業者は、百貨店・スーパー・コンビニなどの小売業、ネット通販などの電子商取引業、ホテル・旅館などの宿泊業、レストラン・居酒屋などの飲食店、フードデリバリーなどの配達飲食サービス業、クリーニング店などの洗濯業です。法律の施行により、使い捨てプラスチック製品から紙や木質などの再生可能資源への切り替えも進んでいます。

特定プラスチック使用製品と提供事業者の業種

表1:特定プラスチック使用製品と提供事業者の業種
⁠(出所:環境省「『プラスチックに係る資源循環の促進等に関する法律』の普及啓発ページ」を参考に編集部作成)

「環境と経済」への見方をマイナスからプラスへ

紹介した容器包装リサイクル法とプラスチック資源循環促進法の二つの法律が及ぼす影響は、プラスチック廃棄物量全体から見ると、比率の大きいものではありません。しかしながら、必要性を十分に考えてプラスチック製品を使用すべきだということを、広く消費者に認識してもらうための政策として意義深いものがあると考えます。

プラスチック廃棄物管理の推進は、喫緊の対策を必要とする重要な取り組み課題です。一方で、完全な解決はなかなか困難な問題です。この連載「どうするプラスチック廃棄物」で説明してきたように、多くの技術開発や取り組みがなされ、一部で効果が上がっていますが、この問題に対して地道な、リユース・リデュース・リサイクルと再生可能資源への代替を指す「3R+Renewable」の活動を全世界レベルでの対策として推進することが必要です。その意味でも、この連載で説明した世界的な流れや動きには、十分な注目を続ける必要があると思っています。

最後に、第5回「消費型経済から循環型経済へ」の循環型経済(サーキュラーエコノミー)の話題で述べた欧州連合(EU:European Union)の環境配慮・資源循環に対する姿勢についてもう一度、触れておきます。EUは、環境と経済の関係を従来のコスト高や費用負担増といったマイナスの評価面で見るのでなく、今後の低炭素経済における競争力強化・ビジネス機会・雇用創出といったプラスの評価面で見ることがますます重要であると主張しています。再度この重要な主張を紹介して、この連載を終わりたいと思います。

連載「どうするプラスチック廃棄物」を全8回にわたりご愛読いただき、ありがとうございました。

猪股 勲(Isao Inomata)/ SCE・Net

東京大学工業化学修士課程修了。三菱ケミカル(株)で、石油化学関連の技術開発・事業開発、企画業務に従事。その後、日本バイオプラスチック協会に奉職。石油化学全般、バイオプラスチック、プラスチック廃棄物管理、気候変動などの環境問題に広く精通。2015年よりSCE・Net所属。ITIコンサルタント事務所チーフコンサルタント。